悲劇

大切な約束を、忘れないで。


絶対に忘れないで。


ずっとここで待ってるから。


だからお願い…


『忘れないで』


夢の中で聞いた話。


夢の中の僕の話。


待ってる人がいるんだって、僕が言う。


僕にそんな人いないよってボクは言う。


お願いだよ、会いたいんだと、僕が言う。


ボクは会わせたくないと、言う。


夢の僕は、涙が溢れて溢れて止まらない。


誰かのことを必死で求めて泣いてる。


その度にボクにお願いするんだ。


目を覚ますとボクは目が開かなくなるほど泣いてるんだ。


溢れて溢れて止まらないんだ。


鼻水まで出て来て息ができなくなるくらいに。


とてつもなく悲しいんだ。


『忘れないで』


『ずっとここで待ってるから』


僕、誰に会いに行きたいの?


大切な人だ。最愛の人だ。


その人はどこで待ってるの?


花園だ。


そこでいつも二人遊んでいたんだ。


青い花、赤い花、黄色い花


青い蝶、赤い蝶、黄色い蝶


きっと、待ってくれている。


だからお願いだ!


『会わせてくれ、会いたいんだ』


そんな場所知らないよ。


膝を抱えて耳を塞いで目を閉じても


僕の声は聞こえてくる。


会わせてくれって言ってくる。


会ってしまったら。


それが怖いんだ。


ボクは僕に喰い破られてしまう。


腹の中を食い破って彼女に愛を囁いてしまってはダメなんだ。


苦しい。怖い。嫌だ。


ボクは生きたい。


「死になくないんだよ君みたいに」


目の前のお墓には愛しい最愛の人が眠っている。


ボクが心から愛して愛して、壊した人が。


僕は呼ばれている。


君が愛した僕を呼んでいる。


「死んでまでボクを愛してくれないんだね」


ボクは君が好きだよ。


だからボクは僕を殺して砕いて、それを喰った。


君の愛した人なんだ。


なのにどうして、ボクじゃイケナイノ?


アンナニアイシテアゲタノニ。


赤黒い嫉妬の涙がボクの目から流れる。


アイシテイルヨ


ボクの手を振りほどいた君


ダカラキミモボクヲ


空高く落ちていった君


『アイシテヨ』

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