3 女は怖い生き物です

★★★

ホームルーム後。一斉に男子陣が俺の机を取り囲む。「女子こっちくんじゃねぇ!ゴラァ!」雰囲気を出している。あははーなんか照れるなぁー。って照れるかぁぁぁぁぁぁ!俺は男だぞ!?

「ねーヘルちゃん」

きやすく呼ぶなクソ。って俊将かよ!俺だよ俺!爆颶蓮雄だよ!

そんなのが俊将に伝わるはずもなく。

「何かなー?」

俺はかわいこちゃんのフリをした。いや、フリをするしかない。

ぎこちない笑顔を浮かべている。

「処女?」

「え?」

お前は最初からなんつー質問をしてんだぁぁぁぁぁぁ!まだ他にもあるだろ!どこから来たのー?とかさ!まだ胸何カップ?のほうがマシだわ!お前ぜってぇ嫌われるわ。もう俺嫌いだもん。

というかなんて返せばいいんだよ。こいつ処女なのか?いや、女王という限り処女ではないな。俺はそう勝手に決めた。それに処女って言っとけば襲ってこんだろ。男は美人の処女を奪いたいもんなんだよ。な?だよな?男子陣そうだな?な!そうだな!うん!な!

「……しょ、しょつぎょうしていまちゅ!」

し、しまったぁぁぁぁぁぁぁ!噛んだぁぁぁぁぁ!

【……】

え?何この沈黙。ちょ恥ずい。誰か助けて。お願い。

【か、かわぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!】

えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

ていうかなげーよ!長い!長すぎる!喋りまくってた周りの女子まで静かになったどころか、学校全体が静かになりやがったぞ!?

……男子に『可愛い』と言われると気持ち悪いことがわかりました。ありがとうございます。もうこれからは言わないようにします。

ところで男子諸君。このクラスにはあの美女ランキング1位の西母魔李

にしもまりん

がいることは覚えていますか?魔李ちゃんあー見えて嫉妬深いから気をつけて。殺されるよ?俺が。

「え、ちょ可愛くないですよ?あの西母魔李ちゃんの方が可愛いよ!ね!」

「……」

男子沈黙。

え!どうしよう!完璧に俺魔李ちゃんの可愛さ超しちゃったよ!ていうか俺のせいじゃないし!ヘルが可愛いからダメなんだし!

「可愛い、よね?」

違う方向から怒り狂った声が聞こえてきた。あれ?これはもしかして?え?

男子陣が魏区魏区ギクギクしながら後ろを振り返る。ちょ待て、男子陣の横に変な漢字とルビが見えた気がするんですけど?

振り返ったそこには、怒りオーラに包まれている西母魔李がゆっくりトン、トンと歩いてきていた。魔李ちゃん!?

「可愛い、よね?」

おいこれ魔李ちゃんかよォォォ!?あのドジっ子魔李ちゃんはァァァァ!?まだ出てきて間もねーぞォォォ!?いきなり本性だしますかァァァァ!?

【はい!魔李ちゃんの方が可愛いですっ!】

見事に男子陣の声が揃う。どんだけ~!?俺最近イッコウにはまってんですけどぉぉぉぉ!?

「はぁい!よぉくできましたぁ!」

あー怖。こわこわ。やば怖し!

「ところで、ヘルさんでしたっけぇ?ヘロさんでしたっけぇ?ゲロさんでしたっけぇ?……今日の放課後、屋上で会いましょう?」

「は、はいっ!」

俺は可愛い声で返事をした。自分で可愛いとかいうとかぶりっ子かよ!あ、俺男だからナルシストか。あれ?どっちだ?わら。


★★★

誰か助けて。俺もうすぐ死ぬ。屋上で魔李ちゃん軍団と向き合いながら心の中で呟いた。

今日1日ハードな生活だった。間違えて男子トイレに入りそうになるし、たまに男口調で話してしまうし、愛しの魔李ちゃんにはすごい笑顔で見られるし。

1日が短いと初めて思った日だった。ってまだ終わりじゃないけどね。

ちなみに、俺の後ろにはヘルがいる。さっき「ざまぁ!」って言われたのでこれが終わったらぶっ殺す。まぁその前に魔李ちゃんに殺されそうだけど。俺は愛しの魔李ちゃんに殺されるならそれでいい!それが1番の幸せだ!

「なんで蓮雄君までいるの?」

魔李ちゃん軍団10人ぐらいに対し、俺らはたった2人だ。ちなみに、扉の隙間から覗く男子や、隣のビルから望遠鏡を使って覗く男子がいる。どんだけ見たいんだよ。ストーカーかよ。

「あ?俺か?俺は傍観者だ。面白そうだったからな」

「え……あ、そう……」

俺風に言っているようだが、俺はそんなこと言いません。魔李ちゃん動揺してんじゃん。動揺……か?

俺はな!そんなことは絶対に言わねぇ!こんなん見るより早く家に帰ってアニメ見たほうがいいわ!

「魔李ちゃん?なんでお――私を呼んだのかな?」

いや、わかりきってるんだけども。

「あなたに、ヘルさんに挑戦状を出す為よ!」

「挑戦状!?」

「そう!来年のランキングでどちらが美人界代表を取れるか、勝負よ!」

「あ、私の負けなんで。ランキング入るきないんで、魔李ちゃんの勝ちで」

「ちょっと待って!え?何?に、逃げるとでも言うの?」

「いや、逃げるも何も」

来年ってどんだけあとなんだよ!とは言えず。

「私、可愛いんで」

つい調子に乗って魔李ちゃんに喧嘩を売ってしまった。気づいた時にはもう遅し。魔李ちゃんの怒り大爆発。

――あれ?魔李ちゃんってこんなキャラ設定だったけ?

と思ったら最後、後ろからかなりの衝撃が来て俺の意識は遠ざかった。


目を覚ますと、そこは俺の部屋だった。隣を見るとヘルがいる。

家族には、俺が一緒に住んでいるという設定にしてある。それしかないからな。

というか、天井に穴が空いているように見えるのは俺だけでしょうか?あれれーおかしいなー視力は両目共Aなはずなのになー、ってこの体ヘルのか。

「貴様、まじで死にたいのか?」

急に言われた。天井を見ていたら、刃物を突き刺してくる。あのー?ヘル?これ君の体だよ?

「え?何がですか?」

「貴様、私の体を……可愛いと……言ったな!」

えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?何この人?照れてんの?ヘルが照れてるでガーンス!

いや別に可愛くないからね。あの場を逃れる為についた嘘だから。嘘だから。う・そ、だから。

「だから1発蹴飛ばしたらこの家に落っこちたのだ……」

どんなキック力ぅぅぅぅぅぅ!?おいケリ★スイーツかよ!あのゲーム見たいに人を蹴りまくるとか。笑わせるぜ。

「まぁそんなことはどうでもいい」

どうでもよくねーよ!おま、お前天井ぶっ壊れてんじゃねーか!天井だけでなくてめぇの頭もな!

「いや待て。ちょっと聞きたい。なぜそんなキック力があるんだ?」

「あ?言っただろう?私は異世界の女王だって。異世界という時点で貴様らとは次元が違うのだ」

「……そういえば、ニルバナ王国だっけ?俺ニルバナ王国について知りたいな」

いやだってさ、俺さ異世界とかちょー興味あるから。アニメみたいな出来事が起こってるからこれは聞いとかないと。これラノベの鉄則だから。鉄則?え?

「そういえば、話してなかったな。……ニルバナ王国。異世界No.03。ニルバナ王国は極普通の異世界だ。異世界と言っても、次元が違うだけでほぼこの世界と暮らしは変わらない。変わっているのは、顔と仕事。顔はまぁ魚。ほとんどの人々が魚の顔をしている。そして、仕事。私達ニルバナ王国の仕事は、他の異世界を救うこと。それが異世界No.3ニルバナ王国に与えられた仕事だ。わかったか?」

「頭の中で整理させて」

「3分間だけ待ってやる」

「おいそれム★カの名言だよな!?てか声完璧ム★カだったよな!?」

整理しよう。

異世界No.3ニルバナ王国、で合ってるよな?で、生活は俺らとそこまで変わらず平和に暮らしていると。で、違うのは顔と仕事。ほうほう。顔はまぁ魚。それで、仕事は他の異世界を救うこと。

らしいです。今、ヘルに強制的に理解させられている。いや助かるけれども。

「質問」

「却下。貴様の質問なんて答えるかバカ」

「異世界No.って何?」

「却下って言っただろ!……異世界というのは何も1つだけしかないというわけではない。異世界というのは何個も何個もあるのだ。その中で3番目に作られたのが異世界No.3ニルバナ王国。まぁつまり、異世界No.というのは作られた番号というものだ」

「ほうほう。参考になります」

みんなメモを取ろう。

「質問」

「却下!もういいだろ!」

「仕事はわかりましたが、女王の仕事は?」

「チクショウ……えーとな、異世界を救うことだけど?だから仕事って言ってるだろ」

「え?じゃあなんで俺はこんなところにいるの?異世界救わなくていいの?」

「あぁ。仕事というのは依頼が来ない限り動かない。まだ依頼が来てないから仕事はしなくていい」

「え?ていうことは依頼がきたら俺は異世界救わんといかんの?」

「あぁそうだ。よろしく頼む」

「いやいやいやいや!」

待てよおい!そんなのできるわけねーだろ!何がよろしく頼むだ!ふざけんなよ!

……なんかフラグみたいな気がするのだが。

「俺何にもできねーよ!ていうかその前に!俺を元の体に戻せよ!」

「だから言ってんじゃん。あの銃じゃないと戻れないって。どんな魔法だろうが戻すことはできないんだよ」

「じゃあ俺は知らん!そんなに異世界救ってほしければ、

まず俺を救えよ!」

「はいはい。そういう自分は被害者でーす!みたいなのはいいから。わかったから」

「……ヘルの魔法で理解するようになってるけど、さすがにひどくね?」

「っで、他の異世界に行く方法だが――」

「いや、俺の話を聞けェ!」

「そこの本あるだろ?」

ヘルがクローゼットの横を指さすので見てみる。そこには大量に積まれた本があった。

「それを開けば異世界に行けるから。この時期魔王とか動かないから依頼なんてこないと思うけど?」


ピロン。


ここで何かメールの着信音みたいなものが聞こえた。え?俺のというかヘルの携帯じゃね?

ポケットから携帯を取り出す。ってスマホかよォォォォォォ!?異世界にもスマホあるんかい!

メールボックスを開き、メールの内容を見る。

王子と書かれた人からだ。


仕事の依頼。異世界No.9を救って欲しい。


と書かれていた。

フラグきたよぉぉぉぉぉぉ!?

いや短っ!これだけかよ。と思い下の方にスライドする。すると最後らへんにまた何か書かれていた。


帰ったらアンナコトやコンナコトをいっぱいオッパイしようね♡

王子より


キモ。キモキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモ!

マジ引くわ!アンナコトやコンナコトってなんだよ!擬態語使うな!あれ?漢字合ってる?わら。

ていうか仕事の依頼きたぁぁ!?

「……来たね」

「……う、うん」

とても気まずい雰囲気になった。

「っで?俺はどうすればいいの?本当は先に俺を救って欲しいんだけど」

「とりあえず、その異世界No.9ニコラス王国の調査だ」

覚悟を決めた(魔法で覚悟を無理矢理決めさせられた)俺にポンと肩に手を置いたヘルはニコニコとしていた。

何が楽しいんだろう。なんか仕組まれているようにしか思えないんだけど。ていうか学校どうすんの?え?

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