第七部 二章 ー指摘される間違いー

 自分の中身をほんの少しだけ切り出して、手を作る。それを異なる世界と繋がる門へとそっと通し、繋がった先で会えたモノを通した手で引き摺りだす。

 「あ……!」

 通行料として支払った魔力の量によって釣れる対象も変わってくる。相手が高位の存在、例えば鉱物ではなく生物になればちょっとやそっとの魔力量ではこちらの召喚には応じない。

 「おー」

 フジタカが声を洩らす横で私は現れた軟体を見下ろして確かな手応えを感じた。

 広場の脇で私はチコとレブ、フジタカと一緒に昨日レブが言っていた事を早速試していた。自分の中にある魔力の栓を開け閉めして行う召喚術の基礎、スライムの召喚。

 遂に私は召喚士の基本中の基本を初めて成した。浄戒召喚士には既になっていたと言うのに。

 「や、やったぁ!」

 「ザナ……静かに」

 チコが口の前に人差し指を当てるので慌てて口を押える。広場の横にある管理小屋を見るが、中からの反応はない。

 あの中ではニクス様とカルディナさんが村の子ども達を相手に契約の儀式を行っている。召喚術が異世界に手を突っ込む行為なら、契約者の契約はヒトを相手に魔力の手を挿し込む行為に見えた。そう考えるとオリソンティ・エラの人々と契約者は意外に近い存在なのかな。

 「ねぇレブ!見て見て!ほら、ぷるんってしてる!しかも私の思う通りに動いてくれる!」

 「……あぁ、見事だ」

 声と召喚陣の作動に反応したのか、レブが小屋からこちらを向いた。口では一応の祝辞をくれるけど、顔にはそんなスライム見飽きているだろうと書いてあった。

 「私、召喚できたよ!レブの言ってくれた通りに!」

 「うむ……。して、声が大きい」

 「あ……」

 今言われたばかりだった。だけどレブが指摘してくれなかったら、きっと気付くのはトロノに戻る時まで先送りされていたと思う。

 見方を変えればベルナルドから意図せず与えられた力かもしれない。だけどもうこれは私だけの力だ。雷を出せるのだってレブの力あってこそ。考えて落ち込むよりももっと使える様にしないと。

 「上手いもんだな、俺の召喚陣なのに」

 チコが地面に敷いた召喚陣を描いたローブを拾って手で砂を払う。スライムを出せる召喚陣を描いた事は自分でもあるけど今回はチコが用意していたものを借りた。

 人の召喚陣と自分の陣では手癖が異なる為、勝手も違ってくる。インクにも魔力を注ぎ込んだり、血液を一滴垂らして描く者もいるくらいだから自分で用意した方が良い結果は出やすい。召喚士選定試験はそういった要因をも突破して召喚できる才があるか見る試験だった。もっとも、カルディナさんが人の模範になる様な癖の無い、綺麗な召喚陣を描けるから試験監督をしていたのもある。

 「ずっと練習はしていたからな」

 レブの言う通り、私は彼を召喚してトロノに移ってすぐに召喚術の勉強はしていた。頭の中で思い描いていた事がずっとできていなかったのは、考え方が違っていたのではない。そこに至れるだけの力を身に付けられていなかったから……。

 ううん、それも違うのかな。持っていた力の大半をレブに渡していたから、か。レブと専属契約を結ぶ前からできていなかったという事は、その時点でもかなり繋がりが深かったって事で良いのかな。

 だけどそれももう終わり。出先で試せる範囲は限られているけど、自分の魔力がレブを維持しながらどの程度融通を利かせられるのか調べてみよう。

 「ありがとうチコ、召喚陣を貸してくれて」

 「貸すだけだし、いいって」

 チコも寒いのかローブを羽織って小屋の方を見る。

 「契約……時間掛かりそうだね」

 小屋の方を見ると行列がしばらく続いている。ざっと数えてもロカの倍に届くかどうかぐらい。手伝おうにも列の整理くらいしかできなかった。契約の儀式を代わるなんて私達にはできないし。

 「………」

 フジタカの視線の先には獅子獣人の男性がいる。気さくに村人達と話しては笑っているライさんはしっかり列の整理もこなしていた。おかげで私達はこうして端で召喚の練習もしていられた。

 「ああして見ると、前と変わらないんだけどな」

 「この時しか、前に戻れないとも言えるのだろうな」

 ライさんを見たフジタカの感想にレブが続く。この時とは、契約の儀式をしている時だ。

 ココの契約か……。私達は一度も見る機会はなかったけど、きっとライさんはウーゴさんと一緒に隣で見守っていたんだ。

 「……あれが素なんだよね、ライさんの」

 「今はどうだろうな……。無理して作り笑いしてるかもしれねーし」

 チコもライさんとは距離を置いていた。フジタカと繋がっていないのを知っているからか、下手に話さないみたい。

 「ファーリャでは選定試験ってやるのか?」

 「迷ってはいたみたいだけどやるみたいだよ。カルディナさんが言ってたし」

 昨夜、寝る前に聞いてみたらブラス所長は迷っていたそうだ。だけどロカに続いてファーリャでも選定試験を行わないわけにはいかないと判断された。

 契約者が才能を見出した召喚士のタマゴをフエンテ側に引き込まれる前に、こちらで押さえておくという考え方からだ。フエンテがそんな真似をしているかは定かではないが、幸いオリソンティ・エラの人々は契約者を信じている。突然現れた召喚士よりは契約者が言う事の方を優先してくれるだろう。

 ニクス様が数か月トロノに留まっていたのもライさんの根回しだと思う、とカルディナさんは言っていた。私達の試験を待つ為、そしてフエンテがどこから現れるか分からないから。それらしい理由を並べて不安を煽るなら、方法は幾つも転がっていたし。

 「じゃあもっと時間掛かるんだな」

 チコはうんざりした様に天を仰いで口を開ける。選定試験は行うけど私達の旅はすぐにトロノへは向かない。合格者が出ても、その人達は自力で馬車でも徒歩でも用いてトロノ支所かアスール支所に向かってもらう事になる。

 私達がセルヴァからトロノへニクス様やカルディナさんと一緒に行けたのは、あとは帰るだけだったかららしい。となれば、私達も最後には誰か新しい召喚士見習いの人と一緒にトロノへ向かう事になるのかも。

 「……じゃ、そろそろ代わって来ようかな。列の整理」

 フジタカが腰を曲げて体の柔軟をしながら前へ出る。登山道の一件以降でライさんと一番話をしているのは多分フジタカだ。口喧嘩をしたから余計に意識しているらしい。

 「あ、じゃあ私達も行こうよ。ライさん、またご飯食べる時間無かったみたいだし」

 「ならば、それはどうする」

 レブが指を差した先ではスライムがプルプルと揺れていた。私は自分の出した物を見下ろして唸る。

 核に注いだ魔力の分だけスライムはそこに在り続ける。放置すればそのうち核が機能を停止し、水溜りを作って自壊する筈だ。

 だけど私にはその持続時間を注入した魔力の分量から推察できない。

 「えっと……とりあえず、この場でぐるぐる動かしておけば勝手に止まるかな?」

 召喚陣を破いて強制送還するのも手だけど、チコの召喚陣は使い回す用に縫われた物だ、勝手には破けない。だったら自然に消滅してもらうまで留まってもらおうと思ったけど……どうするのが効率的かな。チコに聞いてみよう。一番は跳ねさせた方が良いとか?

 「もう用事は済んだのだな」

 「今回は試しに出しただけだしね」

 レブが前へ一歩進む。

 「ならば」

 「あっ」

 ピシッ、とレブが尻尾を一振りするだけで先端がスライムの核を鞭打つ様に破壊した。しかも、共有を切っていなかったから私も断線した感覚に胸を押さえる。大した痛みでは無かったのは、そもそも魔力をほとんど籠めていなかったからかな。

 「む、共有を切っていなければ魔力を吸われるぞ。あの程度の核なら勝手に吸い出しはしまいが」

 「そ、そうだね……」

 呼び出してからも覚える事は多いな。スライムやゴーレムの核は元の世界には幾らでもある存在だ。言ってしまえば雑草を一本引き抜くぐらいの気持ちで皆使っている。

 「あー……初めて出したスライムが……」

 だけど私が初めて呼び出したスライムはあっさりと弾け飛んだ。レブは尻尾を地面に擦り付けて粘液を拭いている。

 「貴様の初めてはこの私だ。軟弱なぶよぶよに譲るつもりはない」

 「そういう事じゃなくて!もう、ぶっ壊す事ないじゃん!」

 「だから声が大きい」

 私はとりあえず口を押さえてチコ達に続いてライさんとウーゴさんから整理の順番を引き継ぐ。レブはその場に居るだけで威圧感を放っていたから小屋の中でトーロと交代させた。フジタカと一緒になれてトーロは楽しそうだった。……中にカルディナさんもいるとは言え、ニクス様とレブが揃って立っているなんて子どもが泣きそう。

 予想は的中し、赤ちゃんはともかく、小さい女の子の泣き声が聞こえてきた時は中に入ろうか悩んだ。泣かせたのは十中八九レブだろうからと。ニクス様なら怖がられても泣き出しはしない……と、思うし。こういうのをフジタカが言う見た目で損する、ってやつなんじゃないかな。

 「フジタカって子どもとか得意そうだよね」

 「うーん、人間相手にはどうかなぁ」

 子どもを相手にさせるならレブよりずっと適役だと思ってフジタカに話を振ったけど反応は芳しくない。一緒になって遊ぶ、良いお兄ちゃんって感じなんだけど意外にそうでもないのかな。

 「ほら、俺達って笑ってるのか怒ってるのか、見分けがつきにくいんだよ」

 「ふーん……?」

 俺達、と言ってフジタカが自分とトーロを指差す。獣人の事を言っているみたいだけど私はこんなものかな、としか思っていなかった。フジタカに限って言えばかなり喜怒哀楽の表現は多様だ。笑い、機嫌が良いと尻尾も振り、怒れば唸りながら鼻に皺を寄せて牙を見せる。

 ニクス様やレブを見慣れ過ぎたかな……。今ならあの二人の表情だってなんとなく読めるし。

 「ニコッと笑ったつもりが怒ってるって言うんだぞ、ほら」

 「それはわざとじゃん」

 作ったフジタカの表情は露骨に牙を見せて顔中をくしゃくしゃにしている。彼の人となりを知っていれば何をふざけているんだ、で済むけど初めて見た人からすれば怒っている様にも見えた。

 「子どもって知らないじゃん、人間だからとか大人だからとかじゃなくって」

 「そういうのは、触れる事でしか分からない」

 「ひっ……!どこ触ってんだよ!」

 あぁ、広場の方を見ててトーロが近付いてきたのにも気付かなかった。今のフジタカは……うん、毛が逆立ってるしびっくりしたのかな。

 「トーロも怖がられる人種でしょ」

 「決め付けるな……と言いたいが、事実だな」

 どう見てもその体躯を誇示する格好で子どもの心は掴めない。予想通りにトーロは渋い顔をして肯定した。

 「誰だって、どの顔をしている時に何を考えているか読み取る力を経験して覚えるんだ。早い内から俺達みたいなのに慣れておけば、随分暮らしやすくなるぞ」

 「こっちの当たり前と人間の当たり前って違うんだよな」

 トーロの意見にフジタカも同意して頷いている。そうしている間にも一組の親子が小屋から出てきた。

 母親の方から滲み出る穏やかな雰囲気から察するに、どうやら抱える赤ちゃんは才能があったみたいだ。子は魔力線を契約者に開通してもらい、あとは召喚士を夢見て親に鍛錬させられる。押し付けられるのが幸せとは限らないけど、どうかその力を無駄にはしないでほしい。

 今は親の表情を見ただけで結果が読めてしまった。しかし、それが別の人種だったらどうだろうか。きっと同じ挙動で犬の獣人が私達の前を通り過ぎたら気付けない。

 私とレブの差ってなんだろう。一見すれば、同じ部分を探す方が難しい様にも思えるけど、そんな事を感じさせないぐらいに私達はもうずっと一緒にいた。

 「でも俺言われた事あるなー。人間の表情は分かるのに、美しいか美しくないか判別できないって。ちょっと話が脱線しちゃうけどさ」

 「カルディナにも言われたな……」

 ……獣人には獣人で苦労している点はあるんだ。人間だけじゃないみたい。

 「……その点、あの人はいいよなー」

 フジタカの目線が前へ向けられる。私やチコ、そしてトーロもその目線を追って振り返る。

 「すっごーい!おっきい体!」

 「もさもさだぁ!」

 「こらこら、引っ張られると痛いぞ」

 昼食を終えたらしいライさんがウーゴさんと一緒に村の子ども達を連れて戻ってくる。その姿はなんというか……完璧だった。

 牙は出ていたが、誰から見ても明らかな優しい笑顔。屈強な肉体を包む毛皮に装備品は威圧感を与えたが、それを声色と態度と天気が上書きしている。

 見る者へ父性、という言葉を連想させる様なライさんの振る舞いはその場の空気も変えてしまう。ルナおばさんはライさんを怖がっていたけど、あの時とは雰囲気自体が違っていた。

 「はっは……あ」

 「お疲れ様です。早かった、ですね」

 「あぁ……」

 笑っていたライさんが、私達と目が合った途端にその笑顔を曇らせてしまった。こっちも笑顔で話し掛けたつもりだったけど、少しずつライさんから表情が消えていく。

 「あれ?おじさん、もう遊んでくれないの?」

 「お兄さん、だ。お仕事がまだ途中だからな」

 「つまんなーい」

 兄妹なのか、小さな男の子と女の子がライさんの周りをぐるぐると回り出す。それを見て、ほんの少しライさんは先程までとは違う笑みを浮かべた。

 「すまない。だから向こうで遊んでいよう。その方が友達もいて楽しいぞ?」

 ライさんの指差した先では別の子達が数人で縄跳びをしていた。親らしき大人の姿もある。

 「あ!エルみっけ!」

 少し背の高い、お兄ちゃんの方はライさんの誘導で友達を見付けたのか、先に行ってしまった。妹らしき女の子も、とことこと追って歩き出す。

 「……ばいばいっ」

 「あぁ、ばいばい」

 しかし、女の子の方は一度立ち止まり、振り返るとライさんに手を振った。ライさんも振り返してやると、今度こそ女の子も子ども達に合流して遊び始める。

 「……さぁ、後は俺とウーゴが引き受ける」

 こちらに向き直ったライさんから表情が消えていた。ウーゴさんも軽く頭を下げるだけ。

 「でも、さっき休憩に入ったばかりじゃないですか」

 フジタカやトーロと子どもの扱いについて話していたのなんて、ほんの数分だ。食事をして戻ったにしても早い。もしかして食事も喉を通らないとか……。

 「いいんだ」

 ライさんは首を横に振ってその優雅な鬣を揺らした。

 「契約者の為に働く。今の俺にはそれぐらいしか能が無いのだからな」

 「そんな言い方……っ!」

 自分を卑下する様な発言にフジタカが前に出る。しかし、契約者の儀式を待つ親子達がこちらを気にし出したのでフジタカの方が自制してくれた。

 「……止めてくださいよ、そんな風に自分を型に当てはめるなんて」

 「俺は事実だと思っている。快く思わないなら、すまないがね」

 言ってライさんは私達に背を向けて列の整理に戻った。その背中を見て、思った事がある。

 ライさんは私達を利用する事に対して、引け目は感じないと言った。レブも邪魔さえしなければ、とだけ返事をしている。

 だけど実際のライさんときたらどうだ。……引け目も負い目も感じて私達を避けている。堂々としている様で、どこか皆を遠ざけていた。私達に笑顔を見せてくれる事は減ったけど、決して冷たく接する様になったわけでもない。

 小屋にいる二人の方がそういう振る舞いは得意そうだから見抜けたんだ。それも、トーロの言っていた経験のおかげなのかな。


 結局ライさんの方が儀式に精通しているからと親御さんへカンポ地方の近況などと言った世間話は一人舞台になってしまった。傍に召喚士がいるからと安心らしく、獣人のインヴィタド相手でも結構積極的に話をしてくれていた。特に若い奥さんにライさんは人気だったと思う。ウーゴさんは逆に、父親の語りを聞いて相槌を打って聞き役に徹していた。

 私とチコ、フジタカはどちらかと言うと歩き回る子どもを列に戻してあげる役回りだった。小さいのにすばしっこくてチコもフジタカも振り回されっぱなしだった。

 セルヴァの時とは逆に、契約の儀式から先に行っていたが当然村の一大行事は選定試験の方だった。契約者に力を与えられて、日々鍛錬を重ねてきた召喚士志望者がファーリャでは五人、名乗りを上げて試験に挑戦した。

 そこではニクス様がカルディナさん直筆召喚陣を手渡して試験が始まる。その光景を私が見守る側だったのはなんだか感慨深い。

 しかし試験はまさかの合格者が一人も現れなかった。最初こそ沸き立っていた村の男衆も流れに変化が起きないのを察すると段々と応援の声が野次に変わってくる。それを止めてほしいと頼むのが受験者の親と、私達だった。

 「合格者がいないなんて事もあるんだ……」

 「盆地で商売をして利益を上げてきた人間の子で、この世界の声を聞ける者は少ないという事だろう」

 失意に肩を落として帰る選定試験の受験者の後姿を見送りながらフジタカが呟く。レブも見ている先は同じでも容赦はなかった。

 「それは子どものせいじゃなくね?」

 「あぁ。子に責任は無い。だが、子をどんなモノと成すか方向付けるのは周囲の環境だ」

 カルディナさんとトーロがニクス様と次の目的地について話している中、レブ達はまだ帰っていく村人達を眺めていた。

 「田舎者の方が強い、って事?」

 「頭の悪い表現だがこの世界においては正しいかもな」

 レブは私に頷くけど、私は素直に首を縦に振りたくない。察してかレブは腕を組んで私の方へ体を向ける。

 「召喚士にならずともこの村で生きていく術はあると村の子らは知っている」

 「だから召喚士を夢見ない?」

 認めたくないけど、カンポでもそんな話を聞いたっけ。なりたい気持ち、必要に迫られる気持ちの差が地方毎に異なっている。召喚士はなりたい者にしかなれないから、ファーリャで召喚陣は新しい可能性に反応しなかった、か。

 セルヴァでは選定試験の受験者も多かった。受ける人数の分だけ合格者も増えたし、契約の儀式でも来てもらえる度に魔力線を開いてもらえる子も出てきていた。それが当たり前ではないと知ったのは随分後になってから。

 「強いインヴィタドを出せる召喚士!……を、雇える金があるなら自分で呼ぶ必要は無いもんな」

 この村が裕福で栄えているというわけではないけど、フジタカはレブに言われて納得したみたい。昔の私なら全否定してただろうな。そんなの間違っている、この世界の人はもっと召喚士を目指すべきだ!なんて言って。

 「もっと自然に触れ合うべき……って事かな」

 私達だってセルヴァに居ただけで日頃から土や樹木に感謝して生きていたわけではない。そこにあるモノとして受け入れ、ただ隣にいたから寄り添って生きていただけ。それがレブの言っていた、人を方向付けるという話に繋がるのかな。

 「聞いてて思ったんだけどさ、ザナはトロノ出身の召喚士って知ってるか?」

 「え……?」

 チコが何かを数える様に指を折って鼻を鳴らしていたが私を見て首を傾げる。そこで私も振り返ってみた。

 「……知らないかな」

 言われて思えば、トロノやアラクランで生まれ育った召喚士って話は聞かない……かも。カルディナさんは西ボルンタの地方、って言っていたしウーゴさんはカンポだと聞いた。

 「生まれ故郷の話か……。すぐにしそうなもんだけど」

 「この境壊世界では意味が無い。どこもかしこも別世界に繋がっているからな」

 知った風に言うけどレブだってそっちから来たんだからね。でもフジタカがどこから来たと話されても、分からないもんなぁ。

 「この世界で安定を得ようとすれば、力を捨てなければならない。オリソンティ・エラにとって力は揺らぎを生むモノでしかないからだ」

 「揺らがせるのが私達で……」

 「その揺らぎから出てくるのが俺達、か……」

 フジタカと顔を見合わせた。本来出会う事も、話す事も無かった私達が同じ場所に居る。

 「力を求めるから世界は揺らぐの?」

 「黙れば鎮まる類ではないな。放置すればつけあがるだけだ」

 凶暴なビアヘロに対抗する力はいつになっても必要になる。だから召喚士は今日まで必要とされてきたんだ。そしてきっと力はこれからも私達には欠かせない。

 「獣人と竜人がいる……。やっぱ契約者の護衛は違うよな」

 そこで声が聞こえる。宿屋へ戻るのだろうか、旅装束を着た中年の男性二人がこちらを見ていた。レブの背筋が少し伸びたのを私は見逃していない。

 「やっぱ契約の儀式となれば違うだろ」

 「だぁよな!途中で見かけた爺さんの竜も凄かったし……」

 「あの爺さんな。もしかして契約者だったのか?」

 私達の前を通り過ぎようとした二人の会話内容に全員が目を見張る。二つの単語が並んで一番この場で動じたのはレブだった。

 「そこの二人」

 「は?」

 「あ?」

 真っ先に動いたのはライさんだった。儀式の後片付けをしてくれていた筈が、私達の真後ろから急に跳び出して二人を呼び止める。

 「詳しく聞かせてもらえないか。その老召喚士の話を」

 「私にもだ」

 遅れてレブがずん、と前へ踏み出る。ライさんとレブがおじさん二人を取り囲むその姿は明らかに追い剥ぎか何かだ。

 「オヤジ狩り……まさか生で見る日が来るとはな」

 「フジタカの世界でもあるの……」

 「いいから助けてくれよォ!」

 固唾を呑んで見守ろうとしてしまったけど奥の一人が悲鳴を上げた。そこでこちらに付け入る隙も出てくる。

 「二人とも、そこまでだよ。怖がらせちゃダメでしょ」

 「あぁ、助かった……」

 顔の怖い二人が愛想も見せずに近寄ってきたらそうなるよね。ほっと胸を撫で下ろすのも分かる。

 「でも、少しお話を聞かせてくれませんか……?」

 「へ……」

 私は後ろにフジタカ、トーロとニクス様まで連れておじさん二人を捕まえた。


 話を聞くとこうだ。西ボルンタの港町、アスールからこのファーリャへ向かう途中、街道から少し離れたところで爆発が起きた。近寄らないでおじさん達が様子を見ていると、その爆発後の煙が立ち上る方向から白髪の老人と竜のインヴィタドが現れた。

 彼らはビアヘロらしき化け物と交戦中で、こちらには気付かずにそのビアヘロを倒すとファーリャの方へ向かって飛んで行った……という話だった。

 「も、もう行っていいかな?」

 「俺達も疲れてるんだよ、ケーヤクシャ様!」

 すっかり怯えた様子でこちらを見るのでニクス様もレブとライさんに目配せをする。

 「……近くにいるのか」

 おじさん達が見た召喚士は私達も知っている相手だと思う。話す程に顔が険しくなるライさんにすっかり二人は及び腰になっていた。

 「そ、それだけ分かれば十分ですよね、ライさん?」

 「あぁ……そうだな」

 どうして追い掛けて殺しておかなかった、なんて理不尽な事を言うわけではない。ライさんは一度深呼吸すると頭を下げた。

 「貴重なお時間を頂戴して、申し訳ない」

 謝るライさんを見て二人はあとずさった。

 「こっちも召喚士なんだから一緒だと思ってたんでね。これからも頑張ってくだせぇ」

 「じゃ、俺達はこれで」

 半ば逃げる様にして二人は行ってしまった。ライさんもその背中を黙って見送る。

 「こっちの方に向かってた……だっけ」

 「うむ」

 レブが頷いて空を見上げる。

 相手はビアヘロではなく召喚士だ。だったらこの村の結界も突破して、人の波に紛れる事も容易い。だからこそ余計にタチが悪い。

 「……フジタカ」

 「なんだよ」

 「フジタカは……具合、悪くないの?」

 今更聞く事でも無かった。だけどフジタカがビアヘロだと言うのなら、人の集落に用意されている結界が作用して……。

 「どうしたんだよ急に。腹は減ったかな?」

 ……うん、確認するまでもない。お腹を擦るフジタカは健康そのものだった。

 「ううん、なんでも。私もお腹空いてきちゃった」

 どうやらフジタカには結界が作用していないらしい。召喚陣を通さずにこの世界にやって来たビアヘロが結界に近付けば体調を崩す。具体的には生き物ならば頭痛や目眩、吐き気を催すと言った具合だ。鉱物は酸化が早くなる。フジタカに効かないのはやっぱり、フエンテに細工されて召喚されたからって事かな。

 「空腹を満たすよりも、先に済ませる事がある」

 声を低くしてライさんが歩き出した。最初にその背中を追い掛けたのはウーゴさん。

 「どこに行こうと言うんだ、ライ!」

 「決まっている。この村に向かっていたのなら、俺達が契約の儀式をしている間に到着していただろう」

 「わざわざ姿を現すわけないじゃないか!」

 ウーゴさんの言う通り。明らかに敵対しているライさんやレブを前にしてどうして顔を出せようか。この村に来たと知れば炙り出すなんて言いかねない相手を前に軽率過ぎる。

 「こちらの動きは筒抜けなのにな……!」

 ライさんは落ち着きなく同じ場所を右往左往して唸っている。じっとしていられないんだ、あの召喚士……ロルダンがいるかもしれないから。

 契約者と行動する私達は常に目立つ。だからこそ相手の目をトロノから遠ざけられる。加えて大きくなったレブの効果もファーリャに着いて存分に感じ取れた。

 最初はトロノに私達がいない、と主張できればそれで良かった。だけど私達の方からフエンテに用事があるとしたら別だ。こちらがフエンテを遠ざける存在になってしまっては目的が果たせない。

 フジタカのお父さんがフエンテと行動しているし、ライさんの考え方だって分からないではない。だけどまさか中立であり続けると思っていたレブにも因縁を作っていたなんて。向こうが私とレブに目を付けた理由も本当はアルパの時点であったのかも。

 「そう焦らずとも、良いのでは?」

 私達の中へ放り込まれたその声に、全員が動きを止めた。

 「探し人なら、ここにおりますゆえに」

 ライさんが剣を抜くとゆっくりとした挙動で目の前に現れた老人、ロルダンは広場に足を踏み入れて両手を上げた。

 「お前ぇ……!」

 「無抵抗の人間を手に掛ける程、畜生に身を堕としてはいない様で。少し安心しました」

 唸っていたライさんが大きな声で咆哮を上げる。それこそ、この村中に響き渡ったのではないかと思うくらいに。

 「ライ……!」

 「……っこのぉぉぉ!」

 ウーゴさんが前に立つ事でライさんは踏み止まり、剣をそのまま地面に振り下ろして深々と切っ先を埋める。それだけでも周りの人は続々と集まって来た。

 「レブ、動ける?」

 「当たり前だ」

 ただ話し掛けてきた老人に村の中心で突然斬り伏せるなんて光景、起こさせない。私からの質問にレブはライさんを止めるか、ロルダンを倒すか、どちらに解釈したかは分からない。

 だけどこちらからの指示があるまでは動かさない。それは目配せで伝わっている。

 「困った御仁だ。内緒話を興じようと言うのに、人を集めてしまった」

 ベルトランやベルナルドと同じだ、どうしてこの人達は自分の立場を上からにしてでないと話をできないんだ。だから鼻持ちならない気にさせられる。

 「お前達は自分の存在を秘匿したがる。ならばこの状況、好ましくあるまい」

 「その通り。儂の様な老いぼれは、注目を浴びるには歳を重ね過ぎた」

 その話題は止めた方が良い。

 「ならば目撃者全員の目と口でも潰すか」

 「それもまた一つ、有効なのでしょう」

 ロルダンが小脇に下げていた巾着を持ち上げる。私達が見える高さまで上げると、今度は軽く浮かす様に放って、中身を揺らす。何か小さく、乾いた物が袋の中に詰まっている音が聞こえた。

 「そちらのお二人はこの中身をどう思われるでしょうね」

 私とチコを見て老人は皺だらけの顔を更にくしゃくしゃにして笑顔を見せる。双子よりも愛想を感じさせたが、この場面でその穏やかな笑みは逆にでき過ぎていた。中身の予想は簡単だ、試験で使われたスパルトイを生み出す竜の牙だろう。

 「貴方はそれを出しませんよ」

 人がまだ集まる中、私は声を張る。細めていた目を開けてロルダンは私を見詰めた。

 「どうして、言い切れるのですかな?」

 「貴方がその中身を放る前に、今のレブなら腕を切り落とせます」

 人々は遠巻きに眺めているだけ。ならば会話は聞かれていないと思う。ロルダンは動きを止めたがすぐに笑い出した。

 「ほっほっほ……。いやいや、肝の据わったお嬢さんだ。でも、一つ間違っている」

 ひとしきり笑い終わったロルダンは袋を開けた。周りから見れば何をしているかも分からないだろうが、私達は一気に身構える。

 「腕を切り落とされても、思い留まるとは限らない」

 「止まりなさ……っ!……い?」

 取り出した球体を、ロルダンはそのまま口に放った。口をすぼめてから、右側の頬を微かに膨らませて見せる。

 「ただの飴玉です。美味しいのですよ、これが」

 袋を閉めて老人は暢気に口の中で飴玉を転がしている。その姿に戦意を失ったのはフジタカだけではない。レブですらも張っていた肩を落として腕を組んでしまった。

 「いや、間違いは二つでしょうか。もう一つの間違い、それは私が取り出した袋の中身をスパルトイだと思った事です」

 「…………」

 私とチコは完全にそう思い込んでいた。あの老人は、私達が召喚士の試験を受けたから名指ししたのではない。

 子どもだと、思われていた。飴玉が好きな子どもの一人だと見くびられているんだ。

 「そんな物欲しそうな目で見られても、儂も楽しみが甘味を嗜むぐらいしかないのです。ご容赦ください」

 「用件を言え。お前の雑談に興じてやる程、俺の気は長くない」

 ライさんが剣の柄をギリギリと鳴らして握っている。その姿にロルダンは鼻を長く鳴らす。

 「下手に出て、お話を伺おうと思っていたですが……。どうやらお気に召さなかったか」

 私達の中でなら、レブが一番に話をしたいだろうに飴を舐める老人をただ睨んでいるだけ。

 「事を荒立てる気はありません。ですが、場所を変えましょう。人に聞かれたくないのはお互いさまですから」

 「………」

 ロルダンからの呼び掛けに応じる者はいなかった。だけど、反抗する者もまた、一人もいなかった為私達は村はずれまで誘導されてしまう。

 「結界の範囲を過ぎたな」

 「え?まだ家もあるのに……」

 レブが小声で呟いたのが聞こえて近くを見渡した。点々としているが家は建っている。この近辺までしか結界が作動していないなら、ビアヘロだって……。

 「どこまで行けば気が済む」

 堪えかねたのか、ライさんが背を向け隙だらけの老人に向かって声を掛けた。

 「この辺りなら、聞いている者はいますまい。良いでしょう」

 一人で納得すると道の脇から突き出た岩にロルダンは腰を下ろす。

 「自分だけ座って失礼。足腰が弱いもので」

 一見すればただの老人だ。その気になれば私の魔法でも……ううん、腕力でも追い返せるかもしれない。それぐらい、目の前にいるロルダンは無防備だった。演技でやっているとしたら今の私はきっと騙されている。

 「言っておくが、勧誘に来たのなら無駄だ」

 「お父上、ロボが聞いたら嘆くでしょうね」

 フジタカが話の前提を伝えるとロルダンは再び飴玉を取り出して口の中に入れた。カラコロと飴が歯とぶつかる音が静かな夜道にしばらく響く。

 「今日、儂がここまで足を運んだのはそれも一つ。しかし、もう一つはちょっとした報告になります。ベルナルドの、ね」

 ロルダンの目がレブを向く。レブも黙ってその視線をしっかりと受け止めていた。

 「あの様子ではしばらく立ち直れないでしょう。癒しの妖精の力でも意識を取り戻すのがやっと。目を覚ましても吐くばかりで会話もままならない」

 「そう仕向けたのは私だからな」

 ふ、とレブが笑うとロルダンも似た笑みを浮かべた。

 「まさかの反撃ではありましたが、持て余していたベルナルドに良いお灸を据えてくださった事には感謝したいぐらいです。どう見てもアレの自業自得だ。力が増すと知っていながら迂闊にあんな真似は普通できない」

 味方なのにあまり心配をしている様子は見えない。感想も加わっているが淡々として、本当に見たままを伝える報告だった。

 「儂は殺したくはない。だが、次にベルナルドは皆様を……いいえ、お嬢さん、貴方を殺しにくる」

 ロルダンは私を見たが、その目線を遮るようにレブが左の翼を広げた。

 「自力では私を殺せぬからか」

 「彼女を殺す方が人間にとっては容易い。召喚士を殺すのは、インヴィタドを殺すも同義ですからな」

 翼を退かそうにもびくともしない。それどころか翼だけで後ろに下げられて二人がどんな顔で話しているかすらも見えなくされてしまった。

 「ならばお前を殺す方が私には容易いとも取れるな」

 「そんな事はなさいませんよ。かの別世界で武王と名を馳せた貴方が、カドモスと会わずに決着をつけるなど。今までの貴方を成した誇りが許すまい」

 翼がゆっくりと畳まれていく。ロルダンは微笑みを浮かべてレブの顔を窺っていた。

 「あの男を呼び出せ。私にとってあの餓鬼は障害にもならない」

 「今の貴方様では、私がけしかけたカドモスに勝てますまい?」

 私を狙おうとも、ベルナルドは相手にならないとレブは断じた。しかしロルダンの一言は、私にとっても耳を疑う一言だった。

 レブが……勝てない相手。今までは心のどこかでレブならどうにかしてくれると思っていた部分があった。私の体に負荷が掛かっても、レブを本気の状態にできれば無敵だと。

 それが揺らぐ。今まで考えた事も無かった一言に私はレブの腕に手を添えた。

 「………」

 ロルダンに対して返事をしない。否定、してくれない。

 「レブ……?」

 「それが事実と仮定して、奴が……」

 彼の口から出た言葉に私は手を離してしまった。それには反応したのか、一度区切って私の方を見る。

 「……奴が、お前の言う事を聞くとは思わないが」

 しかしそのまま、レブはロルダンに目線を戻してしまう。ロルダンも私を見たが、レブが足を踏み鳴らすと二人で腹を探る様に見合った。

 「ええ。それもまた、事実。儂と彼は利害が一致しているからこの境界が壊れた世界で共闘しているだけに過ぎませぬ」

 困っている、と言いたげに眉根に皺を寄せて指で揉み解すとロルダンは飴を噛み砕いた。

 「貴方様がこの世界へ現れたと知ってから、彼は昂っている。儂らでさえ抑え切れなくなればきっと相まみえる」

 「抑え付ける必要がどこにある」

 ロルダンは笑った。

 「言ったばかりです。儂らは貴方様を迎え入れたい。そして……今の貴方様では勝てない」

 断言するロルダンに私は詰め寄ろうとしたが、今度はレブが腕を伸ばして止める。

 「人手不足はどこも同じだな」

 「こちらも三人減らされ、一人を使い物にならなくされました故に」

 ふむ、と唸りレブは私を止める腕を退かした。

 「ですが、今も気持ちは変わっておりません。だからこそ、こうして無防備な姿でこちらの情報を皆様の前へと晒している。不要な者達へも含めてね」

 ライさんは片時も剣の柄から手を離していなかった。フジタカも、トーロも敵意を向けている中でここまで堂々としているのは素直に称賛できる。……彼もまた、力を持っていると自負しているから言えるのだろう。

 「ロボの息子からは断られてしまいました。しかし、貴方様は……」

 「断る」

 「………」

 レブの一声でロルダンの表情が固まった。数秒、行き場を失くした言葉を溶かす様に口をパクパクと動かした後、前のめりに曲げていた腰が伸びる。

 「理由を、お聞かせ願えますか」

 「我が友、コレオ・コントラトを殺した者の所属する組織に与する理由は無い。まして、誇り高きもう一人の友をもかどわかした」

 ココの名前を出した事で、ライさんが握っていた剣から力を抜けていくのが見えた。レブの背を見る目は揺れている。

 「誤解だ。カドモスは儂らを理解した上で協力してくれているのだから」

 「………」

 レブの顔色が変わる。

 「それに、契約者の殺害も同じだ。儂らフエンテはベルトラン達の暴挙は是としていない」

 「ふざけるなぁぁぁぁ!」

 レブの横を風が抜ける。怒号と共にライさんが剣を振り上げ、ロルダンに飛び掛かる。

 一拍早くロルダンが岩から跳び退く。剣は勢いを乗せて岩を叩き割ってしまった。

 「ふーっ!ふーっ……!」

 肩で息をして尚もライさんは眼前のロルダンを見据える。

 「だったらココはどうして死ななくてはならなかった!殺した側がどの口で物を言う!」

 「言葉選びを失敗しましたか。途中までは良かったのですが」

 どこを見ていたら途中まで、なんて言えるのだろう。しかもこれまでずっと喋っていたのは自分だろうに、やけに他人事として捉えている。

 「生かして帰……!」

 ライさんが岩を蹴倒して剣を引き抜く。その瞬間、辺りが青白い光に包まれた。レブの仕業ではない。

 「召喚陣……でも!」

 光り方は召喚陣でインヴィタドを呼び出す時と同じだった。しかし反応が強過ぎる。眩しさだけでなく、吹き出した風は嗅いだ事のない匂いを乗せていた。光が止んでも風は吹き続けている。目の前に現れたそれは間違いなく、私達へ敵意を向けていた。

 「なによ、あれ……!」

 カルディナさんが数歩、後ろに下がる。その肩をニクス様が支えた。その姿を見れば護衛対象に支えられたとしても無理はない。

 ロルダンは既にライさんの一撃を躱して着地した場所から移動していた。その行き先が問題だったが、事態はそれだけでは済まされない。

 「フシュル………」

 目の前で舌を出し入れして目を光らせている相手。全身を青い鱗に覆われ、右手には鋼鉄の盾を。そして左手には剣を持ったトカゲの戦士然とした姿をした人型が三体。武装する知恵を持ちながらも会話する理性を持ち合わせていない彼らを、私達はマスラガルトと呼んでいた。

 「これでしたら、お気に召しますかな」

 ロルダンの声が夜闇に響く。顔を空へと上げれば、そこから彼が私達を見下ろしている。

 彼を支えるのは腕の無い飛竜、ワイバーンだった。初めて見たが強靭に発達した足の鉤爪は剣よりも鋭い。胴から生えた大きな翼で羽ばたき、私達へ空中から砂埃の舞う風を送り続けている。しかももう一体もぐるぐる旋回しながら飛んでいた。

 「一人で、これを……」

 マスラガルト三体とワイバーン二体。辺りに待ち伏せさせていれば、レブが何か言うと思うし私も気付かなかった。となればあの召喚陣の発動光だ。これだけのインヴィタドを瞬時に用意したのだ、あの老人が。

 「生温いな」

 「ではもっと追加しましょう」

 レブの返事にロルダンはワイバーンの背に立ったままで巾着を取り出し、バラバラと何かを地面に撒く。今度こそ、それは飴玉ではない。地面へ勝手に埋まり、地中から這い出てきた五体の戦士は見覚えがある。

 「スパルトイ!やっぱ持ってたな……」

 チコも剣を抜く。今度はもう、動いてはいけないなんて誰も言わない。しかしまだ、マスラガルトもスパルトイも私達へ向かっては来ない。

 「最終勧告です。儂らフエンテへ下れ。そうすればそこの契約者と召喚士達は見逃そう」

 それを言う為にまだ動かなかったんだ。だったら、次は私の番。そうだよね、レブ。

 「得体の知れない貴方達の仲間になんてなりません!契約者の前に立ちはだかるなら、私は貴方達をレブと一緒に倒します!」

 契約者が半端者の召喚士を増やして、この世界に本当に認められた召喚士の判別がつきにくい。契約者に頼らず召喚術を使うのが正しい様にベルトランは言っていた。ロルダンも、カドモスという竜も、フジタカのお父さんもそこまで極端な考えは持っていないのかもしれない。

 だけど今日この人と話して分かった。この人は自分以外に責任を持たない。組織も仲間も関係無いんだ。最低限言い渡された命令を聞いても、自分の損得勘定しか見ていない。

 私を見下ろすロルダンからは感情らしき物が顔に浮かんでいない。ただ冷淡にワイバーンの背中の上に立っているだけ。

 「私の召喚士が言ってみせたのだ、こちらも力を示す必要があるな」

 レブが前に進み出て首を鳴らす。

 「……飛んで!」

 私の宣言で全ての火蓋を切る事になった。マスラガルト、スパルトイも共に私達へ殺到する。

 「フジタカ!ニクス様とカルディナを安全圏まで!」

 「分かった!」

 レブが翼を広げて飛び上がったと同時にトーロが叫ぶ。フジタカは真っ直ぐに自分へ向かってきたスパルトイを一体、ニエブライリスで押さえていたが足を切って動きを止めた。陽が暮れてから使えないナイフを取り出す様子は無い。

 「頭を潰すのが、定石だったな」

 レブはすぐにロルダンを乗せたワイバーンの高さまで急上昇していた。両手を絡ませて作った拳を飛竜の頭蓋へ叩き付ける。

 「ギエェェェ!」

 ライさんの剣がマスラガルトの持つ武器とぶつかり合っている金属音が響く中でも、レブがワイバーンの骨を砕く音が聞こえた。首から力の抜けたワイバーンは落下していく。

 「ふんっ!」

 体勢を崩したにも関わらず、ロルダンは乗っていたワイバーンの背から跳んでもう一頭に乗り移った。レブもすぐにその姿を追う。

 「ごきげんよう」

 レブの拳が今度はロルダン本人に伸びる。しかしその拳を無視して彼は……私を見てそんな事を言った。

 「………ちっ!」

 直後にロルダンの姿が消える。上空で分からなかったがレブの拳は空振りし、ワイバーンも身を低くして躱す。その背にはもう、老人なんていなかった。

 「また消えた!」

 「近くにいるのか、あの親父……!」

 フジタカも辺りを警戒している。周りに他に人影なんて無い。かと言って、これ以上ロルダンに力を詰め込めるとは考えにくい。

 だとすれば、突然消える能力を持つ何者か。フジタカのお父さん……ロボが近くで様子を見ていたとしか思えない。物を消せる力があるなら、気配も同じ様に消せても不思議はない。

 「探してる暇なんてねーからな!」

 「分かってる……よぉっ!」

 チコもサラマンデルを呼んで見せたが歯が立たない。痛みも恐れもを感じずに、向かってきたスパルトイの伸びた腕に貫かれてしまう。フジタカはチコのサラマンデルを囮にスパルトイ一体の頭を横振りの一撃でなんとか切り落とした。

 「レブは……」

 上空を見上げてレブの姿を探す。すると黒い影が二つ、夜空を滑り激突し合っていた。

 レブはまだワイバーンと戦っていた。空を翔るだけあって飛竜の目はレブの拳を捉えている様で攻撃がすんでのところで当たっていない。

 「ブワァッ!」

 「あぁっ!」

 聞こえたのはレブの声ではないが押さえ切れなかった。それが聞こえた直後に空が明るくなる。ワイバーンの吐き出した炎がレブを直撃していたのが見えたからだ。

 まだワイバーンは止まらない。炎が止んで尚も空中に留まるレブをその発達した足で蹴落とした。落下するレブの姿にサッと血の気が引いていく。

 「ふんっ!」

 しかしレブは翼を大きく広げて体勢を立て直す。それはワイバーンにも予想できていなかったのか、レブの姿を見て大きくその長い首を引き戻した。

 「流石に空では早いが……!」

 急上昇したレブから逃れようとワイバーンへ背を向ける。速度を上げるには振り返ってはいられまい。ただし、それは選択肢の中ではあまり得策ではない。

 「せぇぇぇいっ!」

 「グウェェェ!」

 飛び上がり、振り下ろされたレブの踵が今度はワイバーンの背を叩く。息を詰まらせたのか飛竜はぐったりと力が抜けたまま落ちてくる。

 ワイバーンは長時間飛ぶに適した体の造りだとは思うが、戦いに向いているかは別だ。無論、先程の炎も魔法ではなく自身の体力から生まれる物だから戦闘力は人間や鳥の非では無い。

 ただし武力も兼ね備えた竜人を正面から相手にしたらどうか。最初は不利だと思ってしまったが、レブはワイバーンの判断よりも迅速に動いて追い付いてしまう。そこが決め手だった。

 「グ、エ……!」

 頭から地面に叩き付けられて尚もワイバーンは生きていた。しかし回復はできていない様で、身動きが思う様に取れていないらしい。

 その飛竜の頭を着地したレブが掴む。

 「はぁっ!」

 「う……!」

 レブの手から光の矢が走り、ワイバーンの頭を貫いた。光は地平線近くまで伸びて私は胸を押さえる。レブの魔法がワイバーンをなんとか仕留めてくれた。

 「おい!」

 「え?」

 私はレブばかり見ていた。そう、自分のすぐ近くまでマスラガルトが近付いていた事にも気付かずに。声の方を向いた時には、もうトカゲの戦士は私に向かって跳んでいた。

 その跳躍力は人間の数倍。一つ跳べば二階建ての家屋の屋根には上れるだろう。だから気付かなかったなんて、ただの言い訳。

 「くぅ……!」

 「トーロ!」

 腕で自分を庇っても、勢いの乗った剣なら腕ごと両断する。理性的に考えても、本能が反射的に身を強張らせた。

 しかし私に剣が届く前に間に割って入ったトーロが手斧で守ってくれる。両手を交差させて二本の手斧で相手の剣を挟んでいた。

 「戦えんのなら下がっていろ!」

 マスラガルトは竜ではない。だが、その輝かしい鱗の下はしなやかな筋肉が詰まっている。会話するだけの知能が無い分、力任せに戦わせれば並の獣人では押し負ける。

 それでもトーロは並の獣人ではない。だからこそ力を拮抗させて歯を食い縛っている。

 「ううん、ごめん!」

 足を竦めている場合ではない。トーロの脇をすり抜けてマスラガルトの方へ跳び込む。

 「トーロ、放して!あと離れて!」

 「くっ……!」

 片手対両手でも苦戦していたトーロが相手の剣先を自分から逃して離れる。トーロまで巻き込めないから、自分でやるしかない。

 「貫い、てぇ!」

 どうせやるなら効果的な場所を。そんな贅沢を言っていられる状況じゃないけれど、だったらせめて全力で!

 「フシュェエァァァァァァ!」

 マスラガルトの左手首を掴んで私は魔法を発動させた。咄嗟に、だけど魔力を注ぎこめるだけ詰め込んで。全身を光らせたマスラガルトが悲鳴と共にぶすぶすと焦げ臭い煙を立ち上らせる。剣はすでに左手から落ちていた。

 「お願い!」

 「おぉぉぉぉぉぉらぁぁぁっ!」

 こちらの合図でトーロの斧の刃が付け根からマスラガルトの喉笛に食い込み、ブチブチと音を立てて切り裂いた。鉄臭い血が噴き出して地面を濡らしていく。

 「ゲェェェェェ!」

 「フシュゥゥゥゥ!」

 「シェアッ!」

 やっと一体減らせた。同種の赤い命の水を嗅いで興奮したのか、残りのマスラガルト二体は声を上げて剣を振り回す。その相手をしていたのはライさん一人だった。

 「退けぇ!」

 二体を同時に弾き飛ばしてライさんは一体へ狙いを定めた。

 「ブゥゥゥ!」

 剣と盾を駆使する相手ではあるが、剣さばきで言えばライさんとは雲泥の差がある。ただ振り回すだけの怪物と剣を修め高めた相手の一撃は一目で決着を迎えた。

 「ギャアアア!」

 盾で守れば良いものを、左肩を切られてマスラガルトはあっさりと後退する。もう一歩踏み込んだライさんが横薙ぎに剣を払い、顔を切れば倒れて動かなくなる。あとの一体もライさんを狙っていた。

 「残りは受け持とう」

 「レブ!」

 空から私の隣へ着地したレブはすぐに私を睨む。

 「召喚士が前に飛び出るな」

 「う……」

 カルディナさんのゴーレムを訓練で倒した時と同じ真似をした事に対して言っているんだ。でもレブは溜め息を吐くとそのまま跳び、スパルトイを蹴り抜いた。

 「この程度で止まるか!」

 着地したと同時に拳を突き出して手近に居たスパルトイの胴を貫く。それを見て私も思い出した。

 「ライさん!マスラガルトは心臓が右側にあります!それを破壊できたら!」

 「弱点を守る盾、か……!」

 ライさんは頷いてマスラガルトと剣戟を交わす。相手は片手でそれぞれ剣と盾を持っているため一太刀の重さはライさんの方に分があった。ギリギリと剣が押され始めて、先程と同じ様にマスラガルトがやられると思ってしまう。

 「フシェェェェ!」

 「がっ……!」

 それで終わってくれれば良かったのだがマスラガルトの攻撃は意図していない方向、真正面からやって来た。まさか直接ライさんの首を狙って噛み付いてくるとは予想していない。人間だったらまず取らない行動だからだ。

 「こ、のぉぉぉぉぉ!」

 剣を地面に刺してライさんはトカゲの牙を引き剥がす。レブもトーロもその邪魔をさせずにスパルトイの相手をしてくれていた。

 「おぉぉぉぉ!」

 ライさんの力をもってしても苦戦している様で、また私が雷撃を使おうかと前に出た途端に動きがあった。徐々にマスラガルトの顔がライさんから離れていく。その際に食い千切られたのか鬣がパラパラと散っていた。

 「ふんっ!」

 「キシュ!」

 そのまま首を押さえて呼吸を止めさせながらライさんはマスラガルトを仰向けに倒し、防がれぬように右手を踏み付ける。

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 「ギィィィィィ…………!」

 すぐ横に立てていた剣を抜いて、ライさんは一度ぶん、と宙へ振り回し逆手に持ち替える。切っ先が下を向いたところでズン、とそのままマスラガルトを地面に縫い付ける様に串刺しにした。マスラガルトを貫いたのは見事に体の中心からやや右寄りの心臓部だった。

 「残りは!?」

 ライさんが吠える。しかしフジタカが首を横に振ると辺りはすっかり静まり返っていた。スパルトイはレブとトーロが倒してくれたらしい。

 「………くっ!」

 ズルリと肉が滑り落ちる音を鳴らしてライさんはマスラガルトから剣を抜いた。一度痙攣した様に見えたが、ライさんが剣を引く動作に合わせて動いただけみたい。

 「ロルダンは……!」

 「首根を掴むつもりが消えてしまった」

 レブは手を握っては開いてを繰り返してその手応えを思い出していた。霞の様に消えてしまったあの手法はまだ私達にも見えてこない。

 「何か感じないのかよ、お前は。似た力には毛が抜けるとか」

 「無茶言うんじゃねぇよ……」

 唯一の手掛かりになりそうなフジタカでさえ、チコからの質問にあの調子だ。ロルダンを前にしても動じなかったフジタカだけど、一番堪えているのは彼だと思う。

 「……また振り出しか!」

 ライさんがレブとフジタカを見て乱暴に剣を鞘に収めると悔しそうに唸った。戦闘を始める切っ掛けを自分で作ったからかそれ以上は何も言わない。できれば今夜の内にロルダンとだけでも、決着をつけたかったんだろうな。

 「皆!大丈夫!?」

 静かになった頃合いを見てかカルディナさんとニクス様が引き返してきてくれる。全員を見回しても怪我らしい傷を負った者はいない。皆の無事だけ確認すると、私はレブの前に立った。

 「レブ、さっきの……」

 「貴様のおかげで飛竜如きを相手に遅れは取らない」

 「そうじゃなくて。怪我!」

 無遠慮にぺたぺたとレブの腕を触ってみる。ワイバーンの吐いた炎で全身を焼かれただろうに、レブは平然と私の前に立っていた。下の服が若干焦げ、ススが触れた私の手を黒く染める。

 「位の低い竜の炎に焼かれるなど、面汚しも良いところだ」

 飛んでいる間に何度か激突していた場面もあったけどレブは屈んで服の汚れを睨むだけ。どこも怪我はしていないみたい。

 「良かった……」

 私が首飾りを押さえるとレブは顔を上げてこちらの表情を覗き込む。

 「私はそんな顔をさせる程に頼りないか」

 「………」

 そんなつもりでいたんじゃない。レブは自分が頼ってちゃいけないと思う位に頼もしい。

 だけどこの気持ちを思い出してしまった。

 「レブが……レブがいなくなっちゃうって、思った」

 こちらを励まそうと顔へ伸びかけた大きな紫の手が止まる。

 「ペルーダやタムズの時とは違う。レブは変わってくれた。それをあの人……ロルダンは……」

 周りも私の調子がおかしいと気付いてくれる。だけどこれは私とレブの問題だ。頬へ伸びかけたレブの手は私の頭頂へそっと乗った。

 「貴様は竜と言う存在をよく知っている。この場にいる他の連中よりもな」

 「お前、そういう言い方すんなよ」

 フジタカがニエブライリスをしまいながらゆっくりと私達の会話に入ってくる。

 「竜はなんだって怖い、それがこの世界の人間だろ」

 「しかし……」

 レブは割って入るフジタカへ何か言いたげにしながら私を見る。やがて溜め息を吐いたのはフジタカの方だった。

 「あのじーさんが呼んだ竜より自分の方が断然強い。だから……」

 「心配無用だ」

 言葉を訳してくれようとしたフジタカの最後をレブが引き取る。その言葉に私は目を丸くした。

 「あ、いや……。私は……」

 「ちゃんと言えんじゃん」

 フジタカがぐにゃりと口を曲げて笑うと肘でレブの脇腹をつついた。

 「……当たり前だ」

 肘を退けながらレブは苦笑すると咳払いをした。

 「貴様はティラも知っているではないか。あの飛竜もトカゲ男も、ティラに比べれば格段に劣る存在なのだぞ」

 「……うん」

 言いたい事は分かった。ティラドルさんにも勝てる自分が、ワイバーンに負ける筈がない。

 「だけど、カドモス……には」

 「………」

 私が名前を出すとレブは黙ってしまう。フジタカも私達を見ているが何も言わない。

 「お前達、話している場合ではないぞ」

 そこにトーロがずかずかと近寄ってきた。どうして、と首を傾げて私達はファーリャの方から幾つも動く灯りが近付いている事に気が付いた。

 「人目は無かったが、村の近くで騒ぎ過ぎた」

 トーロが舌打ちをしてマスラガルトの死体やスパルトイの残骸を見渡す。そうか、ワイバーンの火やレブと私の雷は暗闇にこそ目立つ。誰かが村の中で見えて気付いたんだ。

 「村の中でも俺達、目立ったもんな」

 嫌味のつもりで言ったんじゃないだろうけどフジタカをライさんが睨む。誰も責めるつもりでは言っていない。

 「フジタカのナイフでこの血生臭いのを消すのも無理だしなぁ」

 「説明は私の方でします」

 チコが肩を落とし、カルディナさんが眼鏡の位置を直す。そうしている間に灯り達はどんどんこちらに近付いてきていた。



 話の筋書きとしては、宿に戻る筈の契約者が戻らずに広場を最後にして姿を消した。それからしばらく経つと村の外で爆発や雷鳴が閃く。そしてファーリャの男達を集めて様子を見に来た、ってところかな……。

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