ダンス娘(だんすこ)

星丸

第一話 輝け!! 1

〜プロローグ〜


景気と縁起の悪い文言が紙面を飾る。


[DD社(ドリームデバイス社)経営破綻]

[事実上倒産、傘下関連企業も芋づる式に次々と余波]


DD社社長は自宅にて頭を抱えていた。

「あぁ…私はもう駄目だ………

すべてが明るみに出る前になんとかしなければ……」

DD社社長の自宅は数名の借金取りやら、そのスジの人やらに囲まれていた。

ピンポン ピンポンとけたたましくチャイムが鳴り響く。

部屋の前にまで未払いの給料を取り立てに数名押し掛けていた。


机の引き出しを開け地下室の鍵を手に取り、隠し部屋のスイッチを押して地下室へ向かった。

「あぁ…頭が壊れそうだ……」

ープロローグ終了ー

数日後


〜日常の昼下がりの駅前〜

都心から程近い[下笹目駅しもささめえき]は今日も人々が大勢行き交う。

ターミナル駅ではないがそこそこ人通りも多いので、ストリートで活動しているミュージシャンやダンサー達の絶好の発表の場所なのである。

いくつかのストリートミュージシャン達の人だかりの中にひときわ異彩を放つ人だかりがある。

露出の多めな、きわどいエッチな格好をした女の子二人(18歳ぐらい)がダンスを披露している。 彼女達は拾ったであろうラジカセで曲を流し、それにあわせて色っぽく舞うのだ。


彼女達の名前は、[舞(まい)]と[雀(すずめ)]という。ちなみに姉妹ではない。

雀「ね〜舞ちゃん〜♪今日はこのぐらいでいいんじゃないかなぁ!結構お金入ってるよ♪」

舞「うん♪だね♪お腹空いたし、早く帰ろう!」

二人が帰る支度をしていると、そこへ一人の警察官がやって来た。明らかに怒っている。

警察官「君たち!」

その姿をみるやいなや、雀が言う

雀「また来た‼いじめっ子!」舞「早く行こぅ!」雀「うん」

二人はお金の入った鉄のバケツと壊れかけのラジカセをもってそそくさとその場を逃げ出した。

警察官「コラッ待ちなさいーーっ!!街中まちなかでそんな格好をしちゃいかんといつも言ってるだろーーっ!!」「丸出しなんだよいろいろとーーーっ!!」

そう言って二人を追いかけようとする警察官を、すっかり二人のファンになった人々が道を阻む。

「まあまあ、いいじゃないですか」「うんうん、いいじゃないですか」

可愛い踊り子のファン達は皆顔を赤らめている。

警察官「公然猥褻罪だろーっ!!」

「まあまあ、いいじゃないですか」「うんうん、いいじゃないですか」

今日も二人を逃がしてしまう。



〜翌日〜

新聞の紙面

[DD社元社長 板東鉄治氏逮捕]

[板東鉄治宅、家宅捜索へ]

午前7時半、DD社社長の自宅に数名の捜査官が来ていた。

その捜査官達の中に下笹目警察署の伊達正志警部と部下の最上ダツロウ刑事の姿があった。

伊達警部(以下、伊達)「いや〜、すごい豪邸だな…いろいろとやらかしてそうだ」

伊達がいろいろ家捜ししていると、他の部屋にいた最上が駆け込んできた。

最上「警部、向こうの部屋になにやら隠し部屋のようなものがあります」

伊達「何っ?何処だ?」

豪邸内の一番奥の部屋に、あきらかに怪しい移動式の本棚がある。それを横にずらすと、シャッターの降りた入り口がでてきた。

鍵が4つもあり、厳重にロックされている。

伊達「おいおいマジかよ…」

最上「そういえばさっきの部屋の机の引き出しに鍵の束がありましたよ」


鍵をすべて外し、シャッターを開けると地下への階段がある。底が見えないほど下へと続いている。想像を越えて地下への道は不気味だった。

伊達「やっぱ調べないと駄目よね…」

最上「…………はい。行きましょう」

だいたい地下15から20メートルぐらい降りたところで扉(鍵有り)がある。扉は厳重に施錠されている。


鍵を開け、中に入った。

伊達「………な、なんだこの部屋は…」

地下室は地上の建物の敷地分ある。学校の教室ほどの部屋が6つにお風呂にトイレ、冷蔵庫やテレビにVHSのビデオデッキ、数枚のCD-R、やたらと古いラジカセ等があった。

50センチ四方の小型のエレベーター(重量5キログラムまで積載可能)までついていた。部屋の明かりは太陽光だった。

伊達は自分の携帯電話を見た。圏外となっている。この地下室は電波を通さない構造のようだ。


伊達「地下の空間だけで生活していけそうだぞ……」


しばらく地下室を捜索していると、誰かがこの地下室で最近も生活していたらしい痕跡が随所にみられた。

ある部屋の片隅に段ボールに入った女性物の洋服があった。どうやらよく見渡すと、量的に一人分ではない衣類がそこかしこにある。どれもすべて女性用だった。伊達がその衣類を手に取りみていると、子供服もある事に気づいた。だいぶ色あせた古い子供服だった。


伊達(おかしい…たしか板東氏には女性のお子さんはいなかったハズ)

ふと、奥を見ると非常口と書かれた扉がある。この扉も厳重に施錠されていた。鍵をあけ進むと登りの階段がある。階段の先の扉からうっすらと外の光が入ってきている。

伊達「直接、外へ繋がってるみたいだな…」

地下室の非常口は板東宅の裏にある空き地に繋がっていた。この空き地も板東氏の私有地である。

伊達が地下に戻り、捜索を続けていると

隣の部屋にいた部下の最上が声をあげた。


「警部!!!大変です!!!こっちに来て下さい!!!!」


あまりの声に、ただ事ではないと悟り、すぐさま最上のもとへ駆けつけた。最上以下数名の捜査官が集まっていた。

最上「警部、これを見てください…とんでもないものが出てきました……」

最上が愕然としながら、伊達にあるものを渡す。

それは、近所の小学校の名札だった。女児二名のもの。

伊達「………ふむ。近所の小学校のやつだな……二人共小学一年生か、白鳥 舞に大空 雀ね……この名札もずいぶん古いな…」

最上「警部、その二人の名前に聞き覚えありませんか?」

伊達「……ん?」

最上「12年前の…」捜査官「あの事件もちょうどこの辺りだった」

そう聞いた途端、伊達が青ざめた。

伊達「おい‼急いで署に戻るぞ!!

よもやの大事件だ!!!!!」


翌日。

下笹目警察署にて、伊達は板東鉄治容疑者の取り調べをしていた。

伊達の手元の新聞には、こう記されている。

[12年前の未解決行方不明事件新展開]

[DD社元社長の自宅の地下室から、行方不明女児の私物数点発見、が依然二人の姿はなく足取りは掴めていない]

伊達(さぁて、問題はこの二人が今現在何処で何をしているかだな)

(板東氏本人に確認しようにも、イカれちまっててどうしようもない)

伊達と机を挟んで正面に座っている板東鉄治氏は、気がふれていた。だらしなく口を半開きにしてヨダレを垂らしている。時折うめき声をあげている。

伊達(押収したものも、手がかりになるのか…このテレビ、アンテナが無い…あの地下室からは外の情報を知るすべが無い。この各国の踊り子がたくさん出てくるビデオはなんなんだ?)


午前11時の時計の鐘と共につけていたテレビでニュース番組が始まった。

ニュースキャスター

「こんにちは。お昼のニュースの時間です。先日からお伝えしております12年前の埼玉県下笹目市女児行方不明事件ですが、どうやらこれは、DD社元社長の板東鉄治被告による誘拐監禁事件であることがわかりました。」


「ですが、依然二人の足取りは掴めておらず、いまだ解決には至っておりません」

「現場の地下室に落ちていた毛髪等から、この二人は現在も生存している可能性が高いようです。」


「では、現場の板東宅から500メートルほど離れた場所にある白鳥 舞ちゃんの自宅前で、レポーターと中継が繋がっております。現場の古西くん?」

古西「はい。こちらビッグマグナム古西です」キャスター「そういうのいいから」

古西「では、今から白鳥舞ちゃんの両親に話を伺いたいと思います。」

古西が女性にマイクを向ける。

舞の母親「舞………お母さんよ、元気にしてるの?」


伊達「お母さん若いな…タイプだ。」


舞の母親「きっとさぞかし美人になっているんでしょうね……」

舞の母親は大粒の涙を落とした。

最上が部屋に入ってきた。

最上「警部、手配書できました。」

伊達「よし、行くか!美人の母親の為に早く二人を見つけださんとな…。」


伊達と最上は街へ聞き込み捜査にでた。

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