第8話 インターハイ予選②

団体戦予選の翌日、いよいよ個人戦の予選が始まった。

個人戦のブロック予選は、トーナメントで行われるが、シングルスは2回、ダブルスは1回勝てば予選突破という方式だ。

個人戦は団体戦とは違い、強豪校の一年生やランクが低い選手なども出場する。対戦相手によっても大きく左右される。


(とはいっても、女子は当たり前のように予選突破するんだろうよ)

健一は焦っていた。ここで女子に差をつけられるわけにはいかない。何としても予選を突破しなければならないと。


まずはシングルスから始まる。健一たちのブロックには、去年の団体戦ベスト8の並美ヶ丘高校がいた。

「うわ、二回戦で並美ヶ丘じゃねーか、ついてねえ、、、」

健一は肩を落とす。

「その人強いの?」

小川君が問いかける。

「いや、名前は聞いたことないけど、、ん?」

健一は遠くのベンチを見た。見覚えのある顔がそこにはあったのだ。

並美ヶ丘のベンチだった。

「おーい、竹下!!」

健一は声をかける。そこにいたのは、中学時代から交友のある竹下一だ。

健一とは練習試合で何度か対戦していた。

「おお、吉本か、お前羽束師にいったんだな。」

「ああ、見てのとおり女子がほとんどさ、、そういうお前は並美ヶ丘か。」

「おう、中学の時から練習に来てたからな。」

竹下は自慢げにユニフォームを見せる。

と、ここで健一は一番気になっていたことを聞く。

「なあ、この新田って人、三年生だろ?強いの?」

すると竹下はすこし考えて、

「んー、高校からバドミントンを始めた人だけど、それにしてはうまいよ」

なんともあやふやな答えだ。あまりチームの情報を教えたくないということなのか。

健一もそれを察して、それ以上は聞かなかった。


試合が始まる。

健一の一試合目は、初心者の一年生だった。

(ちょうどいい、ちょっと緊張してたところだから、この試合で調整しとくか。)

この試合、健一は難なく勝利した。

監督のところへアドバイスを聞きに行く。

「おお、どうだった?」

監督が聞く、

「(見てなかったのかよ)10-21、7-21で勝ちました」

少し不満があったが、健一は報告する。

「そうか、次も頑張れ」

興味なさげに、監督は言った。

健一は返事をして、ベンチにもどる。

(くそ、絶対結果を残して意地でも注目させてやる。)

少し不機嫌そうな顔をしながら、ベンチで休んだ。

すぐそこのコートで、小川君が試合をしている。

(決して強くはない選手だ、小川でも勝てるだろう。)

と、ラリーを見ていたが、審判のコールした点数を聞いたとたんに、目の色を変えた。

(今、5-11っていったか?負けてんのか?)

健一はコートのそばまで駆け寄った。よく見ると、明らかに小川君の様子がおかしかった。

(緊張か。。!)

健一は理解した。高校初の試合で、明らかに緊張していた。

「小川、まず一本だ!落ち着いてとれ!」

声をかける。しかし、その声は届かなかった。小川君は明らかに周りが見えていない。

健一は不安になった。ダブルスでは、弱いほうが確実に狙われる。あのままでは一回戦を突破するのも難しかった。

健一の応援もむなしく、小川君は負けてしまった。

とぼとぼとベンチに返ってくる小川君。

「緊張してたな」

「、、、うん」

「もう緊張は解けたか?」

「わからない」

「まあ、ダブルスにむけてしっかりアップしといてくれ。お前にはもうダブルスしかないからな」

健一は冗談っぽく励ます。

ここで、健一の二試合目のコールがかかった。


「え、もう?」

健一は少し焦る。アップをしていなかったのだ。

(なんか、調子狂うな)

健一は、ストレッチしながらコートに向かう。

次の相手は、並美ヶ丘高校だ。

この試合に勝てば、一次予選に進める。

気合を入れ、コートに入る。相手の身長は健一より高かった。


試合が始まる。

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