第4話 本格始動

練習が始まって一週間が経過した。

羽束師高校バドミントン部では、練習の前にミーティングが開かれていた。


「今日は、キャプテンと副キャプテンを男子女子それぞれ決める。」

川本監督が声を張る。今日は少し真剣な表情だ。

「この一週間の練習態度などを見てきた中で、僕が勝手に決めるがそれでいいか?」

監督の言葉に一同が返事をする。

「まず最初に言っておくが、僕はエースをキャプテンには指名しない。これは、僕の長年の方針だ。。ということで、男子は二人しかいないから小川がキャプテン、吉本が副キャプテンになるが、いいな?」

(一週間の練習態度の意味ねえ!!)

男子二人の心の叫びとともに、健一と小川君が返事をする。

心が通じ合った瞬間だった。


「女子のキャプテンは勝山、副キャプテンには藤田にやってもらいたいが、どうだ?」

監督のこの言葉に、二人は少し戸惑ったが、それでも大きく返事をした。

戸惑う気持ちは健一にはわかった。

監督はエースはキャプテンにはしない、と言った。

つまり、キャプテンに指名された者はエースとは見られないということだ。だから少しショックなのも分かったのだ。

しかし、それでも受け入れたのは、女子の中に絶対的エースの存在があったからだろう。

”岸谷さち”女子の中でもずば抜けて身長が高く、小川君と同じくらいの身長はあるだろう。

中学校では、シングルスで県大会優勝、地区大会でベスト4と実績も一番高い。

女子の中でも相手になる選手がおらず、健一が相手をしても10点も取れずに敗北という。いわゆる怪物と呼ばれる選手だ。


ちなみに、岸谷に負けたあと、健一は初めて監督に怒られるのだった。

「やっぱあの監督怖え。。。」という言葉を同じクラスの勝山に残した。


健一の実力はというと、女子相手では勝山や藤田にギリギリでやっと勝てるレベルだ。健一が弱いのか、女子が強いのかというとそのどっちもだ。健一は中学時代に成績を残してはいたが、初心者だ。一年生にしてはそこそこできるほうではあるが、高校レベルではない。

対して勝山も藤田も小学校からジュニアで練習していた。勝山は中学校で女子一人だった為、男子と練習し続け、藤田は岸谷と同じ中学校で岸谷の球を受けてきた。エースではないものの、この二人は二番手争いをしていた。


「さて、キャプテンも決まったところで、これからの練習はもっと厳しくして行こうと思う。そして、インターハイ予選までの間、女子を中心としたメニューになるだろう。いいか男子」

男子2人は返事をする。

悔しくないわけではなかった。だが、実際にこの部活では男子より女子の方が強い。二人で練習するより、女子と練習したほうがいいと考えて納得したのだった。


というか、健一の頭の中には監督に逆らうという選択肢はなかった。

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