第22話 人を形つくるもの、残りし思い


━━日常は斯くもありがたいものだ━━


しかしそんな平和なままでは、つまらない。彼らが動かなくとも、誰かが問題を持ち込む。それだけ彼らは、目立っていた。黙っていれば美麗パーティー。前回の功績も加われば、尚。今はまた、別々でいる。


「あなたたち、暇ならちょっと頼まれてくれない?」


お母さんがやってきた。多分、誰もが想定出来る人物だ。


「……人数は?」


溜め息混じりに確認。


「今回は無制限、といいたいけど……。多すぎてもねぇ」


しこりの感じる言い方だ。


「どんなクエスト?」


恐る恐るリーゼロッテが確認。


「総称『』の人形鎮圧よ」


ローゼリアがピクリと、分かりやすいほどに嫌そうな顔をした。……人形のあるところには、あの娘がいる。


「……のんびりはさせてくれないのね」


「難しいクエストは、大半が報酬に目が眩んで自滅してしまうの。だから、あなたたちくらい生存率が高くないと」


明らかに難しいクエストを持ってきている。


「……それは終始、ローゼが機嫌悪くなりそうなんだけど」


視線をさ迷わせる。あれだけ怒りを露にしたローゼを見たものは、避けて通りたいと思うだろう。しかし、あんな怒り方なら可愛いとも思えるから、複雑だ。


「色々聞いたけど、こっちも行方不明が絶えないのよ!お願い!」


拝むように二人の前で頭を下げる。お母さんに頭を下げられたなら、断るわけにはいかない。リーゼロッテはローゼリアを見ていた。いやでも、空気でわかる。


「……仕方ないわね。説明してちょうだい」


額に手を当て、降参を顕す。



クエスト内容は、さっきもお母さんが言っていた『人形の鎮圧』。前回同様、人形が何かにより、暴走していると仮定できる。因みに、『』は、人形愛好家が人形を収集していたことから名付けられた。しかも、東国人形やフランス人形などの人を模したような人形ばかりだという。そんな人形がところ狭しと並んでいたら、正直怖い。何もなくても怖い。


「……それとね?今までは、いたんだけど……。最近、一人のが冒険者を返り討ちにしているみたいなのよ。おかしな話よね。まるで、ように襲いかかって来るって話よ」


……、もしかしたら……。二人は顔を見合わせる。


「……予想が当たっているなら、してやれそうね」


「ローゼ、どこで覚えたの、そんな言葉……」


二人で適当なやり取りをしながら引き受けたところへ、アリスたちがやってきた。


「なんだなんだ?新しいクエストすんのか?」


「仕方ないね、力になるよ」


「……前回のザマを忘れるとは、都合のいい鳥頭だな、おまえら」


雑なコントに、ローゼリアが冷たい視線を送る。


「捨てゴマになりたいなら、ついてくればいいわ。あたしは容赦しないわよ。あなたたちが死んでも後悔はないもの」


危なくなったら、平気で彼らを突き飛ばす気満々だ。


「もう!白雪姫ったら、あんまり虐めないであげて?」


「……優しくしておけば、自ら進んでやってくれるものよ」


美女コンビまで会話に入ってきた。


「七人いれば、早く片付きそうね。頼んだわよ!」


クエストの紙を置き去りにして、お母さんは立ち去った。またも、情報が少ない。


「………3月ウサギ、あなたまた情報集めてきてちょうだい」


人形とくれば、女性が名乗りをあげると踏んだのだ。


「ふっふ~ん♪大丈夫!私たちが情報持ってるよ!」


ラプが嬉しそうに詰め寄る。


「じゃあ、3月ウサギ待機ね。」


ウキウキとナンパに向かおうとして、止められた。かなり不服そうである。


「……で?何で用意がいいのかしら?」


ラプンツェル、にんまりと笑う。


「それはね?私たちが、おかみさんにお願いしたからよ!二人じゃ危ないっていうんだもの。だったら、白雪姫たちと行きたいって言ったの」


ルクレツィアも頷く。食えない人たち。最初から、二重に仕組まれていたようだ。


「あの館の人形たちね?屋敷の人間が、人形好き過ぎて、ただかき集めたみたいでね?お祓いも何もしないで置いてあるそうよ。東国では、人形は供養しなきゃだめってあるみたいだから、それもありそうよね」


捨てられていた人形も多々あるだろう。これは厄介。リーゼロッテは全部食べれるかもわからない。怨念渦巻く人形の館。一波乱ありそう。




━━運命の再会まで、あと少し


待ち受けるものとは…………………━━

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