弱音と朝
カーテン越しに感じる朝の陽射しで春市は目が覚める。
「……もう、朝か」
ベッドから上半身だけを起こし、心底怠そうに春市は眠気の残る頭を叩いた。
ぼんやりと視界がかすむ。ふと気を抜けば、そのまま夢の世界に引き戻されそうだ。
「起きたか、黒乃」
「できたらこのまま二度寝したい」
自分が寝ている二段ベッドの下から、ルームメイトの声が聞こえた。
「あー、行きたくねぇー」
金曜日。あの強制参加イベントから四日が経ち、いよいよ今日は
本来ならヤル気に溢れて、清々しい朝日の下で決意表明でもするのだろう。だか、生憎と春市はそんな気持ちにはなれなかった。
そんな春市を一成は咎める。
「情け無いことを言うな。昨日までの自信満々な様子はどうした?」
「……
はあー、とため息を吐く春市。フィアや凪沙の前では、不安を見せないように振る舞ってはいたが、春市の本心は不安だらけだ。ついでに言うと、気持ち的にもちょっと疲れている。
「まあ、黒乃なら大丈夫だ。俺が保証する」
「なんだよそれ」
「緊張や不安は誰でもある。大事なのは、それらを足枷ではなく自らの力に変えることだ。そして、俺は黒乃がそれらを力に変えることができると確信している」
「……真顔で朝っぱらから恥ずかいこと言うなっての」
ぷい、と春市は視線を逃した。
一成は尋ねる。
「それで、調子はどうだ?」
一成の問いに、ふむ、と声を溢しながらベッドから降りて、体を軽く動かす。怪我などの痛みはなく、連日の訓練と猛暑による疲労感も昨日丸一日休養に当てたおかげでまったくない。あるとすれば、準備不足の不安と適度な緊張感。それらはさして問題ではなかった。それを力に変える術を今さっき友人に教えてもらったのだから。
春市は拳を握り、そのまま数回のシャドーを繰り返し、
「――これ以上ないってくらいにベストコンディションだ」
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