第47話

 平城忠泰が目を覚ました時、何がどうなっているのか、正確に思い出せずにいた。

(何してたんだっけ?)

 微睡んだ意識の中で、そんな事を考えながら地面に手をついた時、そこが地面の上だと遅まきながら気がついた。

「う……」

 ぼんやりとだが思い出してきた。

(そういや、死神の手が僕の胸を……)

 何で生きているのか? ひょっとしてここは死の世界なのか? とか考えて見渡してみると、見慣れていたはずの庭が、見るも無残な姿と化していた。

 家の壁は崩れ、地面は割れ、木は根っこからひっくり返っていた。

(な、何が……)

 気を失う前はこんな事にはなっていなかったはずだ。

 だが、そんな事がどうでもよくなる様な光景が次の瞬間に視界に入って来た。

「え……?」

 少女が横たわっていた。

 長い黒髪、白のワンピース。

「藤……吉……?」

 足を縺れさせながら、地を這う様に駆け寄った。

「藤吉!」

 慌てて怒鳴る様に声をかけるが、浅葱は目を覚まさない。

 どんな風な経過を経てそうなったのかは分からないが、死神の手が頭の中を過ると強烈な不安に襲われた。

 身体こそまだ温かいが、本当にそれが生きていると言える状態なのか?

「何をした?」

 レイブンが言った。

「何をしたんだ! 貴様ァーー!」

 その言葉を聞いて、忠泰は心が沸き立つ様な感情なにかが噴き出てくるのを感じていた。

 いつもの彼ならば、ここで踏みとどまっていただろう。

 だが、今回は

「何をしただって……」

 はっきり言えば、レイブンが何を言いたいのか分からなかった。

「それはこっちの台詞だよ……」

 ただ、あまりにも一方的な言い方に、忠泰は怒りを隠さずに怒鳴った。

「藤吉に……何をしたアァァァーー」

 戦いは新たに仕切り直され、本当に最後の闘いとなる。

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