第9話 決意

「やっぱり…。」

正直それしか言葉が出ない。衝撃的な事実が多すぎて、逆に頭は冷めてきた。以前から不思議に思っていることはいくつもあった。しかし、そのいくつかはヒカルたちが時魔であることを考えると何の不思議でもないことだった。例えば、ニコがあたしが時魔に狙われやすいと知っていた理由。簡単だ。ニコは時魔なのだから、あたしが時魔好みの過去を持っているなんて簡単に察知できる。星がヒカルの名前を呼ぶ時に「あ……」と言い間違えていた理由。兄貴って呼ぼうとしてたんだ。でもあたしたちがいるから、兄弟であることをばらしてはいけなかった。星とヒカルが兄弟であることが知られてしまうということは、ヒカルが時魔であると知られてしまうということだからだ。ヒカルたちはあたしたちに正体を知られたくなかったらしい。確かにあたしは時魔を憎んでいる。ヒカルたちの正体を知ってしまったらあんなに仲良く過ごせなかったに違いない。でも嘘をつかれるのも嫌だ。あたしがショックを受けているのは、嘘をつかれて裏切られたから。一度嘘をつかれると、今までのことが全て嘘だったように思えてきてしまう。ヒカルたちもきっと、嘘をつくか正体をばらすかの間をさまよったのだろう。そこで嘘をつき続けることを選んでも、仕方ないといえば仕方ない。そもそも、誰かと知り合いになって嘘をつき続けるつもりは無かったのかもしれない。誰も入らなそうな星座研究部に入って、時魔としての活動の本拠地にするつもりだったのかも。きっとそうだ。だとすると、あたしはその3人と自ら関わりを持って、その自分のせいで傷ついている。そうだ、ヒカルたちのせいじゃない。星がついてくるなと言ったのは、あたしたちが傷つくことのないようにと思ったからだ。その忠告を無視してついてきたのはあたしたちだ。

「星、魔王のところまで案内して。」

「アスカ!?自分が何を言ってるか分かってるのか!?」

「ヨウ、あたしはちゃんと分かってる。これはあたしが自分で決めたことよ。あたしはヒカルを死なせたくない。」

あたしが魔王のところに行かないと、ヒカルの全ての時が奪われてしまう。つまり、死んでしまう。そんなのはいやだ。

「…本当に…それでいいんだな。」

「うん。」

あたしは心配そうな星に笑いかけて、そして自分の中で渦巻いていた感情を一つにした。

「いいの。」

ヨウは一瞬呆然と、そして少し寂しげな顔をしていたが、すぐに引き締まった顔になった。柔道の試合前に見せるのと同じ、燃え上がる戦意を感じさせる顔だ。

「じゃあ、俺も行くよ。」

その時、カサメの声がした気がした。

「ヨウ!アスカちゃん!」

振り向くと、カサメとニコが走ってきていた。一瞬体がこわばった。でも、次のカサメの言葉による驚きで、こわばっていた事も忘れてしまった。

「あのね!一緒に魔王を倒さない?」

「……え!?」

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