第5話 C-003

放課後。土曜日のため多くの部活が休みで、いつもよりまっすぐ帰る人が多い中、下駄箱付近をうろつくあやしい五人組がいた。

「わたしたちここで何しているの・・・?」

「もちろん、丸井タスクを待機しているんだ。」

ヒカルがいつになく決め顔で言った。無表情なのは変わらないけれど。

「どうせこの後、丸井タスクを尾行することになるんでしょ。」

噂をすれば、人は突然やってくるものだ。丸井タスクは、もうほとんど人がいなくなった下駄箱に、数人の女の子を引き連れてやってきた。

「タスクぅ。今日はだれとお出かけぇ?」

「ミカちゃんだよ。だからまた明日二人でどこか行こうか。」

「ええー。マヤだけなんてずるぅい。」

こういう人たちを見たとき、女の子の方を怒鳴りたくなってしまうのはなぜだろう。同じ女として恥ずかしいからか。それとも、騙されていたらかわいそうだから目を覚ましてほしいのか。

「じゃあ、みんなで行こう。」

丸井タスクは爽やかで甘く、詐欺師が最初に見せるような笑顔をした、そのとき。女の子たちの心臓当たりから、色とりどりの煙のようなものが出てきた。それらは空気中で交わって黒ずみ、丸井タスクの左肩に吸い込まれていった。

「いま、魂を少し削り取られたんだな。」

ヒカルの一言に、ヨウもようやく丸井タスクの手法が分かったらしい。

「つまり丸井先輩、いや丸井タスクは、そのルックスを活かして、女子たちから時をうばって長い時間一緒にいることで、少しずつ魂を削り取っているのか!」

「そういうことだね。」

ニコの言葉を合図にしたように、ヒカルとニコとカサメが飛び出した。丸井タスクはビクッとして逃げ出そうとしたが、ヒカルに阻まれた。女の子たちは阻止されないのをいいことに、よくわからないという顔をしたまま散り散りに逃げていった。

「丸井タスク、おまえの本名は何だ。」

ヒカルはいつもより凄みがあり、P-011のときのような邪魔してはいけない雰囲気があった。

「・・・C-003だ。」

Cグループの三番目!?もしかして、強いやつなのでは・・・。

「C-003、俺たちが魔黒石を集めていることは知っているな。」

丸井タスク、いやC-003はうなずいた。観念したようにも見えた。しかし、次の瞬間、黒い翼に、口からは牙が生え、耳はとがり、光を失った目をした時魔がそこにいた。

「俺はまだ消えたくない!」

しわがれた声を昇降口に響かせ、出口に向かった。しかし、出口の前に立っていたヒカルが急に高く飛び、宙返りをしながらキックをかましたため、出ることはできなかった。すると、時魔はそばにいたあたしを見つけ、捕まえると、

「この女の過去を暴いて、魂を奪われて欲しくなければ、出口を開けろ!」

と叫んだ。しかし、その声は人質になっているあたしよりおびえていた。ヒカルは一瞬、やりにくそうに顔をゆがめたが、何とか隙を見つけ、今度はもっと強烈なキックを食らわし、あたしを助けてくれた。人質作戦が失敗したためか、時魔こそ魂を奪われたように、別の出口に向かおうとふらふら飛んでいった。しかし、大きく開いた目でにらむニコがいて、その重苦しい圧に時魔は耐えられなかった。そして向かったのが、〈憤怒のカサメ〉のところで、カサメはまさに憤怒状態だった。持っていた傘で時魔を指し、突くまねをしただけだったが、小さな竜巻が起こるほどの速さと力があった。こうしてずたぼろになったC-003は床に倒れ伏し、ヒカルが、切れた制服の間からのぞく魔黒石に容赦なくお札をたたきつけた。C-003は崩れるように消えていき、黒ずんだ魔黒石だけを残していった。

「この魔黒石、いままでのより黒いね。」

「あたりまえだ。魔黒石の黒さは、その時魔の持っている魂の量と力に比例している。」

Cグループでこの黒さなら、Aグループの魔黒石は漆黒なのだろう。

「すっげー!やっぱり実際に見ると迫力が違うな!特にカサメ。敵にすると超こわいけど、味方にするとめちゃくちゃ頼もしいな。かっこいいな!」

ヨウは、戦隊ヒーローを応援する男の子のように、興奮していた。カサメもほめられたと受け取ったのか、ほほを染めて照れていた。時計を見ると、集合してからぴったり十五分しか経っていなかった。

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