アンナ・エヴァン・イリイーチ

 この世界に親の顔を知らない子どもは何人いるのだろう

 きっと私が思っているよりもずっといるはずだ

 

 周りから見ればその子どもは可哀想な子、親の顔を知らない不幸な子ども


 きっとそう思わている


 でも私は違う

 

 私はその子たちが羨ましい

 大切なものの存在なんて知らない方がいいのだ

 

 親も友人も恋人も、いずれは失う

 最初から知らなければ失った時の辛さも知らないで済む

 

 別に自分を特別不幸だとは思わない

 きっと私よりも辛い思いをした人もいるし、それでも私のように道を間違えたりしない人もいるはずだから

 

 だから私は不幸ではなくただの愚か者なのだろう


 でも私はあの時の気持ちに嘘をつくつもりはないし、これから考えを変えるつもりも毛頭ない

 

 あの時私が最初に感じたのは悲しみでも恐怖でも不安でもなく、ただただ自分の内側から醜く溢れ出てくる殺意だけだったのだから

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