うらの神社にいるあいつ

ユウリ・有李

第1章

第1話 うちのうらにいる○○○

 とある地方都市の中心地からは少し離れた住宅街の、どちらかといえば端っこに近いところ。少し歩けば田んぼや畑が見られるような場所に、うちはある。


 お父さんががんばって働いてローンを組んで、わたしが小学三年生のときに建てた家で、見る人が驚くほど大きいわけでもなく、他の家に劣等感を抱かなければならないような出来栄えでもない、いたって普通の一戸建て。


 家族構成は両親と、大学生の兄がひとり。

 そして高三のわたし。


 道路から向かって見て左隣の佐々木さんちはつい最近改装した二世帯住宅で、右隣の阿川さんちは共働きの御夫婦が住んでいる。


 そしてうちのうらには、神社がある。

 羽田端(はたばた)神社という由緒あるその神社の奥には、古い池がひっそりと存在していて、そこにはそれはそれは恐ろしい物の怪が封じられている――というのがもっぱらの噂だ。


 わたしは自分の部屋の窓をがらりと開けてベランダに出た。

 羽田端神社の鎮守の杜が一面に広がっているので、ベランダからはそれ以外のものがほとんど見えない。


 夏は虫が多くて困るし、台風でも来ようものなら生い茂っている木々が風にあおられて大暴れするから、台風が去ったあとのベランダは葉っぱや枝が散乱していて結構大変なことになる。


 それになにより――。


「よぉ、いくあ。お帰り」


 すぐ足下から聞こえる声。

 そこには、うちのベランダでまったり毛づくろい(っぽい動き)をする、齢10歳程度の外見をした人間の男の子がいた。  

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