第弐章四話 【開戦】

突如太平洋に現れた、謎の大陸。出現してから十数年、そこでは様々な組織がここで争いを行っている

誰も彼もが、永久にこの争乱は収まらないと感じていた

しかし、ここにきて変化が起こる

大陸内での紛争抑止委員会の勢力が衰えていったのである。他の組織からの集中的な攻撃を受け、元々勢力が最も小さいこの組織は壊滅寸前に追い込まれた

決定打は、死神の異名を持つ傭兵による要人抹殺。これにより委員会のスポンサーは、大陸に関わることによる危険性を理解する

敗北を予測した委員会部隊は、最後の賭けに打って出る

大陸にある全ての戦力を一ヶ所にかき集め、そこで出来た大部隊による他組織領地の蹂躙。最初のターゲットは、革命者の重要拠点

今、大陸史上最大の部隊戦が始まろうとしていた












タナトスの輸送機

青空の中で揺られるこの飛行機の中で、メアリはある人物と通話をしていた

ディスプレイには、若々しい青年が写っている

「アレックスか?マイケルはどうした?」

「えぇっ!?メアリさん、どうして!?」

「代わってくれ」

彼はアレックス・ジョンソン。ベテラン傭兵マイケル・ジョンソンの息子である

メアリは以前マイケルと共同で依頼を遂行したことがある。今回はそのツテを使った相談だ

「マイケルか?メアリ・クロードだ」

「ああ、アレックスから聞いている。久しぶりだな」

「御託はいい、本題に入るぞ」

髪をかきあげ、メアリはマイケルに聞いた

「委員会の攻撃は知っているな?」

「依頼はもう受けたぞ」

「ああ、私達もだ。そこで、だ・・・私達と手を組まないか?」

マイケルは睨み付けるようにメアリを見た

「何?」

その眼光は、並の者では失禁してしまうほどするどかった。自然と瞼の動きですら、素人とは訳が違う

しかし、そんなものをまったく無視しながらメアリは会話を続ける

「今回はかなり危険な戦いとなるだろう。互いに手を取り、背中合わせに戦う方が生存確率は上がるのではないのか?」

「なるほど、一理ある・・・そちらの依頼主は?別だったら敵同士だぞ?」

「死神は・・・革命者からだ」

書類に目を通しながら、メアリは答えた

「こちらもだ なら、その話乗った」

「そうか、ミシェル達に報告しよう」

マイケルはこの話の件をメモに書いておくことにした。棚からメモとペンを取りだし、インクの文字を刻む

しかし、ここで疑問が湧いた

「そうだ、そのミシェルさんなんだが、なぜお前がこの相談を持ち掛けてきた?普通ミシェルさんが連絡するのでは・・・」

「ああ、ミシェルは・・・」

メアリはため息をついた。そして頭に手を当て、首を振って困ったような顔をした

「どうした?」


「倒れた」





























作戦当日、デストロイアは所定の位置で待機していた。四つの脚が地面に機体を固定する

今回の戦場は砂漠。見晴らしが良いが、遮蔽物のないこの場所での戦闘は質より数がモノを言う

佇むデストロイアの隣に、黒い機体が歩み寄る。ミシェルに代わり臨時オペレーターのメアリが、マイケルに通信してきた

「聞こえるかマイケル、もうすぐ委員会部隊が来るぞ」

通信機に笑いかけながらマイケルは、機体の最終チェックを始める

「問題ない、いつでも行けるさ」

「気を付けろよ!委員会も何をしてくるかわかんねえんだから!」

アレックスが心配そうに言った

メアリとアレックスは、戦場から離れた場所にいる

今回は大規模な乱戦となるだろう。いつも以上に巻き添えを食らう可能性が高いため、戦場から離れる必要があった

タナトスが両手の武装を前に向ける。デストロイアも武器の安全装置を解除する

頭部のカメラが、彼方から迫り来る委員会部隊を写し出す レーダーには、革命者の味方部隊が写った

デストロイアの後方二百メートル先、革命者の地上戦艦から、全部隊に通信が入る

それは兵士の士気を上げるための、雄々しい演説であった

「諸君ッ!これまで私達はあの俗物どもの尖兵と歯を食い縛り戦ってきたッ!しかし今日、奴らはこの地に特攻まがいの突撃を行ってくるッ!ここで、紛争抑止委員会などと言う綺麗事の看板を提げた悪魔どもとの決着がつくのだッ!確かな勝利のために、君達の奮闘と、思想の違う我々が、本当に手を取り合う戦いとなることを期待するッ!全部隊攻撃開始ッ!!」

叫ぶような演説が終わったと同時、革命者の様々な機体が敵に向かう

デストロイアとタナトスも、足を踏み出した

「始まった・・・!」

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