ショートショート:汗かき泥棒

こたつむり

第1話

私の職業は泥棒だ。

私には欠点がある。緊張からくる汗で、足がペタペタと音をたてるのだ。おかげですぐに家主にいつも気づかれてしまう。全く向いてないにも程があるものだ。もうやめよう。そうだ、今日の仕事が終わったら足を洗おう。さあ、最後の仕事だ。


家に潜入することは問題なかった。

だが、


「ペタペタ」

やはりペタペタと音が鳴る。幸い誰も家にはいないようだ。足音がならない良い案はないものか。そうだ、壁をはい登れば音が鳴らないのではないか。

早速試してみよう。

おぉ、これは順調だ。

これなら、足音はならない。


どうやらそうしているうちに目的の場所まで来たようだ。

これで最後に成功して終わることができる。

なんとも気持ちの良いものだ

「ペタッ」

おいおい、こんな所で音が鳴るとは。

みると足が床に引っ付いていた。

なんだこれは?


そのとき、頭上で爆音が。


「お父さん‼︎ゴキブリが冷蔵庫の前に‼︎」


巨人が私の頭上から叫ぶ。

大きな塊が私に押し付けられる。

やめてくれ、まだ死にたくないっ!



はあ、嫌な夢を見たものだ。ゴキブリになる夢とは。全く気持ち悪いものだ。思い出す。だけで鳥肌が立つ。


「ガチャッ」

部屋のドアを開け、

娘が猛スピードで駆け寄ってきた。


「お父さん‼︎ゴキブリが・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショートショート:汗かき泥棒 こたつむり @kotatumuri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る