エピローグ


 ――後日。


「へろへろー。もう、お兄ちゃんったらおっそーい☆ 待ち続けるの、疲れちゃったゾ☆」

「そうか、疲労骨折で死ね」


 パァン、と晴天の下で俺のケツが甲高く音を立てた。

崩れ落ちる俺の前で、石畳の引かれたカフェーのオープンテラスに腰掛けた"奴"が腹を抱えて笑う。

その隣には、フードを目深に被った怪しげな銀髪巨乳……想像し得る限り最悪の組み合わせがそこにあった。


「言葉遣いが汚いですよ、おじ様」

「……スイマセン、勇者様……で? 何でお前がわざわざこっち来てんだよ、【設定辞書データブック】よぉ」


 中途半端に染めてるせいでまだらになった茶と赤のショート。

このファンタジーな世の中で真っ青なデニムとピカピカの白衣を身に付け、上半身は徹底的にチューブトップを維持し続ける雰囲気ぶち壊し女。

勇者家が誇る表に出したくない最終兵器にして頭脳系チンピラ、俺たちの各種能力チートの名付け親でもある今代【設定辞書】サマである。


「何でって? 何でオレ様がきちゃダメなのよー、トリガーくぅん。ぶっ壊した魔導二輪車、直してくれーって言ってきたのテメーじゃん?」

「直すのオメーじゃねーだろ。運んでくるのにだって、オメーより向いた奴なんて腐るほど居るわ。暇してんのか?」

「ああ暇だね。スゲー暇だね。何でも知ってると、人生ってのはホント退屈だ……と思ったらよ、オレ様の知らない能力チートが発現したって言うじゃねーか。だからまー見に来たワケよ」


 どこか野暮ったい丸メガネの下、切れ長の目が無遠慮にこちらを眺めてくる。

その、何もかも見透かしたような瞳が苦手な奴は多いだろう。俺だって、別に好きで付き合ってる訳じゃない。


「いやー、それにしても見事に尻に敷かれてんなぁ! トリガーくんの無様で今日も茶がうまいぜ!」


 ゲラゲラゲラと、不愉快な音を立てて奴は笑う。この広い歴史の中、奇遇にも同日生まれだった腐れ縁がなければお互いを認識することも無かっただろうに。

そう考えると、俺って生まれる前から酷い不幸を背負ってんじゃないか。その分現世に利益が有っても良いんじゃ無いかと思うくらいなんだが、その辺どうですかね女神様。

どいつもこいつも、黙ってたら美人なくせに……とか考えていると、隣のアナザー残念がフードで目元を隠しながらニヤついて笑っていた。


「愉快な幼なじみだね、アジンド。ああそれとここは君の奢りだから、我々は遠慮無く注文させてもらってるよ」


 うん、分かってたが本当ヒデェなこの組み合わせ。

これで隙あらばアニーゼが俺の尻を狙ってくるのだから、俺の味方はどこに居る。女神は死んだ。

そのアニーゼだが、2人に勧められるがまま席に腰掛けると、テーブルベルで給仕を呼ぶ。あくまでテラスの小さいテーブルなので、これで3席全部埋まったことになる。

まぁ、もう1席あってもどうせ座る気は無いが……なんかいつの間にか男女比がキツくなってるな。俺も同年代の男どもと酒場で馬鹿騒ぎしたいぜ。


「ご注文ですかー?」

「ケーキセット、オレンジを使ったの以外で上から下までお願いします」


 俺がそう、あらぬ方向に意識を飛ばした隙に、アニーゼはとんでもない注文を入れていた。


「ちょっ、お嬢!?」

「なにか?」


 金色の目でにこりと微笑む笑顔は、俺に声すら上げさせない重圧を伴っていた。

俺が諦め混じりに小さく首を振ると、クソメガネの笑い声が一段と大きくなる。ガッタンガッタン椅子を揺らすな、店の迷惑になるだろうが。


「どうしてこうなった……」

「いやー、甘いご褒美を期待してた相手が、忽然と姿を隠し全力で抵抗し続けた上で『夜明けに間に合わなかったからご褒美は無しだな』なんてドヤ顔キメたんだろ? 残当だと思うけどね」


 くそっ、まだ苦笑交じりで返してくれるトロワが優しく思えるぜ。

場の女性比が高まると、男ってのは本当に肩身が狭くなる。この場にデュティが居なくて本当に良かったと思うぜ。


「って、デュティはどうしたんだ? あいつだって当事者だろ」

「まだ不貞腐れてるよ。本当は来るつもりだったみたいだけど、【設定辞書きみ】が来ると聞いたら梃子でも動かないとさ」

「ありゃりゃ、嫌われちったなぁ」

「そりゃ、あんだけ会う度弄り倒してたらな」


 なんならお嬢にも、遠慮せず誅して貰いたい所だ。

というかむしろスッパリやれ。多分、それで世界の3割くらいは平和になる。


「んでもま、本命の方とは顔合わせられたから良いか。聞いてるよ、転生者なんだって? なるほど、こりゃあ確かに女神プレイヤーの能力じゃないなぁ。書き換えチートとはまた違う……はぁん、そういう事か。仮にオレ様が名付けるとしたら【真相追記ライトライター】ってとこだぁね」

「【我が戯曲こそ真なりアイ・アム・ア・ライト・ライター】だ。もっとアイを込めて!」

「ほいほい……あぁそうそう、結局今回の私闘のお咎めについてなんだが」


 クリームが付いたフォークをペロリと舐め、それでこちらを突き刺しながらブックはやっと本題を切り出した。


「悪いのはそこの魔王候補サンってことで、今回は大きなバツは無しだ。ま、せーぜー厳重注意って感じ? 席順の変更とかも無し。3位だ5位だとかならともかく、ワンツーフィニッシュ決められちゃねぇ」

「……私闘禁止の戒を破ってお咎め無しですか? ホッとしますけど……ディーちゃんはまた怒りそうですね」


 確かに、その辺りでちと潔癖なのがアイサダ・デルフィニィ・デュオーティの生き様だ。

むしろそこの辺りは、「言われたとおりに勇者やってればいい」と考えてるアニーゼの方が大分割り切っている。

ま、コイツもコイツで動かない時には梃子でも動かなくなるんだがな。エンチャント系のチート持ちは、良くも悪くも自分の世界が強固だ。


「せーじの話って奴だよ。そん代わり魔王サンには色々制限かけさせて貰うのさ。いやーウチもニホンの技術で食ってってるからよー、勝手に色々広められると困っちゃうんだよねぇ?」

「真っ黒な話ですねー」

「人は正しさのみで生きるに非ずだぜ、ノーブちゃん。キミだっていつかは『』考えなきゃいけねーのぜ?」

「大丈夫ですよ、その時は私が正しいと思った分だけ斬りますから」


 まぁ、そういう所では自分が出す答えを微塵も疑わないからな、アニーゼは。それが強さでもある。

その分ギリギリまで絡め手に引っ掛かり安いんだが……そこんところは俺がフォローしてやるさ。

何より俺が死にたくないし。仮にコイツが罠を踏み抜いてノーダメージだとしても、俺までそうとは限らんのだぞ。


「けっ、相変わらず極まってんなぁ。次席ちゃんならこれで三日三晩悩んでくれるってのに……あーつまんねーつまんねー、久しぶりにトリガーくんの顔も見れたしオレ様帰るわ。直したバイクはそこに置いといたから、後で拾えな?」

「だから直したのオメーじゃないだろっての。ったく、路上に放置すんなよ……」

「なんだい、勇者になれずにグレてた割に、はとこの子の前ではお利口さんになりやがって。ヘイタクシー、ポートオープン」

「うっせー、はよ帰れ」


 合図とともに、超自然の光が地面上で波紋を作る。シッシッと手を振る俺に構わず、ブックはそちらに向けて歩き出した。


「んじゃーねー、B以上の関係になったら一旦叱られに戻って来いよー」

「は? お前何言って……オイ待て!」


 最後に爆弾発言をぶち上げて、我が家の誇る天災女は【転移装置ポートゲート】の青い残光を残して消えた。

余談だが、奴に【転移装置】と名付けられた男もれっきとしたウチの家族の一人であり、便利なタクシー扱いには強い遺憾の意を示す奴だ。

アレに【装置】とか付けられたからモノ扱いされたがらないのか、それともモノ扱いされるのを嫌がるからわざわざ字に【装置】とか入ってんのか。どっちが先かは分からないが、名付け人の性格が悪いのだけは確かである。

ああ全く、本当に性格が悪い女なんだ、アイツは。


「そんな死にそうな顔をするなよ、アジンド。この先またバイクに2ケツして行くんだろ?」

「最近アニーゼの奴、怒りっぱなしの癖に妙に距離が近いんだよ。この間なんかウェットシガーを噛もうとしたら無言で手をはたき落とされたし。妙にこう、怖くてさぁ」

「見事に自縄自縛だねぇ」


 肩を竦めるトロワだが、流石にそれ以上のフォローも無いようだった。


「……ま、覚悟を決めて行くしかねぇか。このまま徒歩じゃあお嬢の足を引っ張りかねないしな」

「タフだなぁ……。僕はしばらく、馬もバイクも遠慮したいよ」


 心なしかぐったりした様子で息を吐くトロワを見ると、勇者タダヒトが旅の途中徒歩で移動し続けていた理由もなんとなく察せるようだ。

最終的には竜形態もとれる大婆様の背に乗って、世界の各地に駆けつけたりもしていたらしいが。ま、ニホンじゃきっと馬なんてとっくに過去の遺物なんだろうな。


「そういや、お前はどうすんだよ。このままデュティについていくのか?」

「んー……また兄からの追手もまた現れるようになるだろうしね。僕だって弱いつもりは無いけど、暗殺はなー」


 実際トロワがガチで戦うとどうなるかと言うと、まず魔王印の保持者というだけあって魔力保有量はもの凄い。

だが武芸アーツとなると俺から見てもド素人で、戦略的にはともかく戦闘的には付け入る隙がいくらでもあるという評価だ。

端的に言えば砲兵だな。大魔法をぶっぱさせるだけならトップクラスって奴。


「彼女の事が気に入ってるのは変わらないし。しばらくは一緒に居させてもらうさ」

「そうか。こっちとしても見張り兼護衛は付けないわけもいかんし、お互い希望が合いそうで何よりだ」


 ま、そこにデュティの希望は無いんだが。一応ペナルティ的意味も含まれてるだろうから、断るに断れんだろう。


「……で、そういう君たちは?」

「俺たちゃこっから西進だ。東の方は荒れ地ばっかで面白味もねぇしな。対して西は、巨大な港町『ベギーベイ』だの、この大陸の中心地とも言える『神聖帝国』の総本山だのがある」


 ちょっと名前が仰々し過ぎる感じはするが、あっちは文化も栄えてるし飯も美味い。良いとこだ。

特に腐りきってどうしようも無かった奴らは100年前に勇者タダヒトが誅を下したしたらしく、今は世情も安定してるしな。

何より種馬……もとい勇者が残した血の一筋も残ってるし。正式に四世勇者として認められるためにも、挨拶しに行きたい所だ。



「ふむ、なるほど。……それならどうだい、アジンド。ここで一つ賭けをしないかい?」



 ところが、俺の説明を受けたトロワは「それじゃつまらない」と言わんばかりに笑みを深め、こんな事を言い出した。


「賭け? 何をだよ」

「道を、さ。デュティもまだまだ旅を続けるだろうし、肩を並べてよーいドンじゃ格好付かないだろう? ここに丁度、タロットが有る。太陽の札を選んだ方が西を目指し、月を選べば東へ行く」

「タロット……? ああ、ニホンのまじないカードか」

「厳密には日本のじゃ無いけどね。どうだい? 面白いと思うんだが」


 なるほど、賭けね。まぁそれそのものは嫌いじゃ無いが、正直やるメリットがねぇな。


「じゃあこうしよう。君が太陽の札を引けば、ここの支払いは全部僕が持つ」

「よしやろう」

「もう、おじ様ったら……」

「うるへー! 何割かはお嬢のせいなんだよ!?」


 さっきまでケーキが並んでたそのテーブルに、皿がいくつ積んであるか言ってごらん!?

100年前に比べたらそりゃあ庶民でもだいぶ手が届くようになったとはいえ、甘いクリームを使った菓子なんてまだまだ高級品であることには変わりねーんだぞ。

その辺、まだ天空街から降りてきたばっかでなかなか実感がわかないんだろうけどな。やっぱ、アニーゼって基本お嬢様だし。


 トロワの指がカード束の中から素早く2枚を抜き取り、絵を確認させたのち素早くシャッフルする。そしてその2枚を指につまむと、こちらに裏を向けるように突き出した。


「ゲームを持ちかけたのは僕だ。好きな方選ぶ権利は君にあげるよ、アジンド」

「……ほう、良いのか? 俺には【十中八駆ベタートリガー】があるが」

「構わないさ。この形なら飛ばすものは何も無いだろう? 完全なる50:50だよ。僕がイカサマすればその子にバレるしね」


 なるほどな。直接言葉にしたわけじゃ無いが、要はこいつなりの意趣返しと言うわけだ。

言わば、俺の【十中八駆】に思惑を台無しにされたわけだからな。思う所はあるだろう。

くっくっく、だがツメが甘い。要は物を飛ばしさえすれば良いんだからな。かます方法は幾らでもある……!


「なら俺はコインを使って決めようじゃないか。こいつを"飛ばし"て、表なら右、裏なら左の札だ」

「な、それは……」

「おおっと、既に言質は取ったぜ? 【十中八駆】、コインは……表だ!」


 トロワが手を引っ込める前に、俺は素早くカードを引き抜き表返す。

勿論、このやり方は【十中八駆ベタートリガー】がギリギリちゃんと発動するラインだ。

飛び道具という縛りも、ちゃんと使えば意外とゆるゆるなもんだぜ。


「フッ、敗北を知りたい……」

「……格好つけてる所悪いですけど。多分そのカードはハズレですよ? おじ様」

「んなぁ!? ば、馬鹿な!」

「あ、ホントだ。月のカードだねえ。つまり賭けは僕の勝ち」


 おかしい、確かにチートが発動した感じはあったはずだ。

つまり、8割は勝てる勝負。イコールほぼ勝ちの決まった賭けだった筈なのに。なぜに?


「い、イカサマか!?」

「してませんよ。もう、おじ様ったら所詮8割なんですから過信出来ないって、以前ご自分で言ってましたのに。」

「ぐ、ぐおおお! 最近負け知らずで調子良かったんだぞ……!?」

「敗北を知りたいカッコわらい。ところで、勇者サマはどうして分かったのかな」

「え? だって、肩の動きが丸見えでしたし……」


 ええい、これだから才能のある奴は。こちとら余裕がある時は3発重ねて使ってたとはいえ(トロワを探す時なんかはBBが2回同じ方向に飛ぶまで粘っていた。工夫は大事だ)、それなりに一発勝負しつつヒーコラ頑張っていると言うのに。

こうして肝心な時に役に立たないから、ヘボ能力の烙印を押されるのだ。女神のケツめ。

しかし、ルールはルールだ。ここの支払いは相変わらず俺のポケットマネーだし、しばらく西進は諦めにゃならんか。

俺1人だったら勿論適当な所で折り返すんだが、アニーゼが見届けているからな……。こいつ、そういうズルは許さないし。


「くぅ~……俺のベギーベイ……夜の港……」

「あ、な、た――?」

「いえ、なんでもねっす」


 指の間をすり抜けていく男の夢が漏れたのか、スッとアニーゼの目が細まった。

心なしか瞳の奥から金色の光まで溢れている気がする。ちくしょう、良いじゃんか一夜の泡沫くらい。

どうせそんな事だろうと思いましたよ、と嘆息するアニーゼが瞳を碧色に戻しながら言う。


「あまり目に余るようでしたら、そのズボンを引剥してナマで叩きますからね」

「か、勘弁してくれ……俺、もう30手前だよ……?」


 もみじ痣でもついたらもう絶対他人の前でズボン下ろせないじゃん。【設定辞書】にも載せられちまうよ。

俺が思わず縮み上がった下半身を庇うように腰を引くと、下がった頭にアニーゼの口元がそっと近づいた。

甘ったるいクリームの匂いと一緒に、さらりと解ける髪が俺の頬に触れる。



「……少しは、知らない人のレモンの香りを嗅がされる身にもなって下さい」



 甘えるような、スネたような、可愛らしい口調で。しかし、その……おかしいな、ちゃんと寝てたはずだよね?

耳がちょっとこそばゆかったが、なんかもう色々とそれどころじゃなくしばし固まる。


「ん? 大丈夫かいアジンド。顔色がトリコロールしてるけど」

「ああ気にしないで。ライム・ジャムは嫌いなんですと、お願いしただけですから」

「なぁんだ、好き嫌い? 意外と子供っぽい所有るんだねえ、勇者様も」

「ええ、レモンやライムは私の敵ですので」


「よーしじゃあそろそろ出発しようかー!? いやー東か、何が有るんだったっけな!」


 背中に流れる冷や汗に耐え切れず、俺はテーブルに勘定を叩きつけるようにして立ち上がった。

やっぱ14歳って怖えわ。アニーゼの場合もう1~2年下にも見えるような顔つきもあり、つい気を緩めちまう時がある。


「東ねぇ……そういえば、こっちにも極東は有るんだっけ?」

「いきなりゴールかよ。もうちょい道中を考えろ道中を」


 東の果て、神秘の出づる地。NINJAにゲイシャに天狗だなんだの……まぁ俺も、ちらほら単語を知るだけだが。

ただ、たぶん元ニホン人であるトロワがイメージするような世界ではないはずだ。あやふやなのは、俺も勇者タダヒトによる「コレじゃない」という言葉でしか知らないからなんだが。

あるいは、勇者スケコマシやトロワの前にも似たような奴が居て、それっぽい文化に仕立て上げたのかも知れんが……もちろん偶々風土が似ていた結果、そうなっただけという可能性もあり得るよな。


「あまり考えても仕方がないですよ? 私としては、おじ様と一緒に旅ができるだけで楽しいんですから」

「……なんかお嬢、本当に最近ぐいぐい押してくるね?」

「ええ、まぁ。ディーちゃんに勝っちゃったからには、お姫様扱いだけで満足するのは止めませんと」


 "背負う"ってそういう事でしょう? と微笑みかけてくるアニーゼに、俺は乾いた笑いしか返せなかった。

これで標的が俺じゃ無ければ、素直にお嬢の成長を祝えたんだがな。

なぜだろう、肉食獣がじっとこっちを眺めてるような背筋の冷たさを感じるのは。

無言で二輪車のエンジンをかけると、懐かしい手応えが掌に響く。とりあえず今のところは、問題もなさそうだ。

再会して2秒で廃車とか冗談にならんからな。既に宿はチェックアウトしてるし、これならすぐにでも町を出れるだろう。


「元気でねー、二人とも。アジンドも、変形合体する時がきたら教えてくれよ」

「やめろ縁起でもない。『魔導』の趣味的にわりとマジでやりかねないから嫌なんだよソレ」

「私の剣も、変形とかしたら面白いんですけどねー」


 やりたいのか、変形。デュティの槍は合体するもんな。

段々と風を切る速度を上げていくと、アニーゼの腕が腰に巻き付くのを感じる。

それは細くて柔らかく、同時に背中にひっつく身体の温かみも。やれやれ、なんだか妙な気分だぜ。


「……そんじゃま、次のサイコロを振りますか」

「はい!」


 俺達、天空街から降り立った勇者様ご一行。

こんな道中だが、"世界救済"の旅の途中である。

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