神話に通じた識者だからこそ書ける濃厚なハイファンタジー

まず、美文に目を見張りました。
語彙が豊富なのは言うに及ばず、試しに音読してみたら響きが何と壮麗なこと!

情景描写、叙情的な文節からも、人物の心情をたやすく読み取れます。街の風景1つ取っても、見る人の気持ち次第でモノクロに見えたり、総天然色にも映るもの。
風景描写とは、実は心象風景でもあるのです。
昨今のライトファンタジーでは味わえない、高尚で静謐な空気を、リアルに感じました。

物語も実に重厚。
音楽で魔術をかける、という職業はよくありますが、楽器の名称や演奏に作者様の並々ならぬこだわりが見え隠れします。

そんな彼らが、森へ入れば盗賊に、港に着けば海賊に襲われ、すったもんだの大立ち回りを演じる冒険活劇は、古き王道ファンタジーを正調に継承しています。
…見目麗しき美女が実は男だったときの虚脱感はご愛嬌ですが_| ̄|◯
作者様は人物造形も達者なので、いやぁガチで騙されました。泣いてもいいですか?

舞台の風土や生活様式も、モデルとなった北欧神話を実によく研究しておられます。
人名や地名も、北欧の言語から取ったとおぼしきものもあり、世界観の構築に一役買っていますね。

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