第一章・難攻不落のセレイスレイド

第二話・三つの砦



 ──セイマティネス王国、王都セレイスレイド。




 一箇所を除いて周囲を湖に囲まれ、更にその四方を広大な森に囲まれた、特殊な環境にあるセレイスレイド。

 大陸では『難攻不落の王都』としてその名を轟かせていた。

 その理由は、周囲を囲む湖と森。


 ──『死の湖』『死の森』と、それぞれ呼ばれるこの二つ。そこは人を喰らう生物の棲家すみかであった──。


 湖には、普段は大人しいが血のにおいで豹変する水棲生物が多く棲まい、その総数数十万。それらは人をものの数分で喰らい尽くす凶暴さを持つ。


 そして森。

 そこには冬眠を必要としない、人を喰らう獣が数万頭も棲んでいた。

 獰猛どうもうで残酷な獣達。

 彼らの棲まう森は七つに別けられ、それぞれに王が君臨。統率している。

 総じて七王ななおうと呼ばれるその存在。──彼らにはどんな屈強な戦士であろうとも決して敵う事はない、と言われていた。

 何故なぜならば、君臨する王は例外なくの獣よりも十倍以上はあるであろう巨大な体躯たいくを持ち、その硬くて分厚い皮膚は剣も矢も通さない。

 重厚なよろいすら貫通させる爪と牙は鋭くとがり、何より人に対して慈悲じひがない。


 そんな生物に囲まれた中に、国の中枢となる王都はある。

 しかし、人がき来出来ず交易も行えないような、そんな閉鎖された場所ではない。


 セレイスレイドには『死の護人もりびと』と呼ばれる者が存在する。


 縮めてただ護人とも呼ばれるそれは『死の森』で自由に活動する事を許された者の事。戦闘能力にけ、『死の森』に棲まう獣に認められた者の事である。

 その『死の護人』が王都と外とを繋ぐ橋渡しを務める。

 森に棲まう獣は、護人が護衛する人間だけは襲わない。

 ──それはいにしえからの盟約。

 森の住民と、建国よりも遥か昔に『死の護人』の先駆け的人物となる者が交わした契約。


 そんな『死の湖』と『死の森』、そして『死の護人』がある王都セレイスレイドは、難攻不落と言われている。



 また、セレイスレイドをゆうするセイマティネス王国は大陸で二番目の国土の広さと勢力を誇り、大陸一の国土と勢力を誇る隣国アスヴィナ王国と同盟を結んで、大陸の平穏を護っていた。

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