私の隣の黄色(イエロー)

柊 奏汰

私の隣の黄色(イエロー)

彼の弟から泣きながら連絡があったのは、3年前。

汗でじっとりと濡れたTシャツが肌にくっつくのが鬱陶しかった、ある夏の日のことだった。

海デートの後に私を自宅まで送り届けてくれた彼は、前触れもなく突然に、あまりにも呆気なく、この世から姿を消してしまった。


私を自宅まで送り届けた帰りに起きた、酒酔い運転の車との事故。

私があの日、彼に送って欲しいと我儘を言わなければ、と、後悔した数は数えきれない。


忘れ形見にと、彼が飼っていた黄色いカナリアを譲り受けたのが間違いだった。

私は、カナリーイエローのこの鳥が鳴くたびに彼の笑顔を思い出して、悲しくて切なくてやりきれない、何とも言えない感情の中に引きずり込まれる。

夏生まれで海が大好きだった彼と、一緒に海辺を歩くのが大好きだった。

一度だけ1人で海に行ってみたけれど、隣に彼の熱がないのが寂しくて、早々に自宅に帰る。


「私はどうしたらいいの」


誰も居ない部屋でぽつりと零れた独り言に応えるように、またカナリアが鳴いた。

気のせいだと言われてしまうかもしれないが、私が泣き言を言うと、励ますように鳴いてくれている気がするのだ。


彼のいない私達の夏が、今年も目前に迫ってきていた。

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私の隣の黄色(イエロー) 柊 奏汰 @kanata-h370

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