初恋の人と結婚したい!どうしても子供が欲しい!その願望が強烈なまでに膨らんだ末路の夫婦…

天川裕司

初恋の人と結婚したい!どうしても子供が欲しい!その願望が強烈なまでに膨らんだ末路の夫婦…

タイトル:(仮)初恋の人と結婚したい!どうしても子供が欲しい!その願望が強烈なまでに膨らんだ末路の夫婦…


1行要約:

結婚と子供願望の強過ぎた女の末路


▼登場人物

●藍市(あいし)マスヨ:女性。43歳。結婚と子供が欲しい願望が強烈にある。OL。

●葉時芽 一夫(はじめかずお):男性。享年30歳。マスヨの初恋の人。マスヨの同級生。暫く付き合っていた。交際中に事故死。子野世墓地に埋葬されている。

●余綿(よわた)リコ:女性。40代。マスヨの結婚したい夢・子供が欲しい願望から生まれた生霊。

●カップル:一般的な男女のカップル。冒頭に登場。本編では「男」「女」と表記。イメージ的な描写でOKです。

●尾張 元(おわりはじめ):男性。43歳。リコから紹介される。実は一夫の生まれ変わり。リコが霊界から引き寄せていた。

●益夫(ますお):マスヨと一夫の子供。男児。ボール遊びが好き。


▼場所設定

●A商社:マスヨが働いている。一般的な商社のイメージで。

●マスヨの自宅:一般的なマンションのイメージで。

●子野世墓地:一般的な共同墓地。時々、子供の幽霊が出るとの噂アリ。

●バー「マリーゴールド」:リコの行き付け。お洒落なバー。


NAはナレーションと藍氏マスヨでよろしくお願いいたします。



オープニング~


エクソちゃん:ねぇデビルくん、デビルくんって結婚した~いとか、子供が欲しい~とかって願望ある?

デビルくん:結婚と子供?ンなモンあるわけねーじゃん♪俺ぁ不老不死だよ?子孫繫栄とか必要ねーし、生涯のパートナーなんて人間がいてくれてりゃそれでいーワケだからな♪

エクソちゃん:相変わらず寂しい人生よね~アンタって。

エクソちゃん:今回のお話はね、結婚願望と、子供が欲しい願望に取り憑かれちゃった或る女性のお話なんだ。

エクソちゃん:で、ずーっとそんな調子が続いて悩んでた時に、或る不思議な女性と出会うの。そんでその女性に長年の夢を叶えて貰えるのよ!だけどその夢はいっときの夢でね、いずれは覚めちゃうものだったの。

デビルくん:ふぅん。まぁ人間が持つ夢なんざ、大抵そんなモンだな。

エクソちゃん:でも一瞬で終わっちゃうその夢にどうしても我慢出来なくて、或る日、つい一線を超えちゃうんだ…。

エクソちゃん:最近は晩婚化が進んだり、生涯独身で人生を終える人がかなり増えて来たけど、そんな人でも本当は結婚して、子供を持ちたいって夢はあるみたいなのよね。そんな人達にとっても興味深いストーリーになってると思うから、ちょっとゆっくり見てみない…?

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



メインシナリオ~

(メインシナリオのみ=4395字)


ト書き〈深夜、子野世墓地横の道をカップルを乗せた車が走る〉


NA:ナレーション)

ここは子野世墓地に隣接した道。

人や車はほとんど通らない。

偶に業務用トラックや、カップルを乗せた車が走ったりする程度。

この日の深夜、カップルを乗せた車が1台走っていた。


男)「ここってやっぱ不気味だよなぁ。なんか、7歳くらいの子供の幽霊が出るって話だぜ…」


女)「もう!やめてよ!怖いじゃない!」


NA)

ここ最近、子野世墓地では「子供の幽霊が出る」という噂が広まっていた。

なんでも子供が墓地の方からフラフラ出て来て、ボールで遊んでいると言う。


男)「ん…?あれ…何だ…?」


女)「え…?」


NA)

ちょうど2人が車の前方を見た時だった。

1人の男の子がサッカーボールで遊んでいる。


男)「あ…あれ、子供じゃねぇか…」


女)「ねぇ!この道通るのやめよ!ねぇやめよ!」


男)「あ、ああ!」


NA)

2人はすぐさまUターンして帰って行った。


ト書き〈時制を7年ほど巻き戻す形で〉


NA)

それから7年ほど前の事。

ここA商社で働く1人の女性がいた。


ト書き〈A商社〉


NA:マスヨ)

私は藍市マスヨ。

今年で43歳だがまだ独身。

でも結婚願望は異常なほど強い。


マスヨ)「はぁ…。周りじゃみんな結婚してるのに、なんで私だけ…」


マスヨ)「もし一夫さんが生きててくれたら…」


NA)

私にはその昔、葉時芽 一夫という彼氏がいた。

彼は私の同級生で、初恋の人。

でも13年前、事故で他界した。

私は一夫をまだ愛している。

彼は小説家を目指していた。

ちょうど出来上がったばかりの原稿を編集社へ持って行く所。

子野世墓地横の道に差し掛かった時、暴走したトラックに撥ねられたのだ。

彼の遺体はその後、子野世墓地に埋葬された。


マスヨ)「一夫。…どうして死んじゃったの…」


ト書き〈数日後〉


NA)

私は仕事を終え、気晴らしに飲みに行った。


マスヨ)「あれ?」


NA)

いつもの通りに、全く知らないバーがある。

お洒落な感じだったので入ってみた。


ト書き〈バー「マリーゴールド」〉


マスヨ)「へぇ…イイ感じ」


NA)

カウンターに座り、1人でカクテルを飲んでいた。

その時…


リコ)「こんばんは。隣りいいかしら?」


マスヨ)「あ、はい」


NA)

1人の女性が声を掛けて来た。


リコ)「こんな時間にお1人?寂しいですね」


マスヨ)「え、まぁ…」


リコ)「もしかして、何かお悩みでも?」


マスヨ)「え?」


NA)

馴れ馴れしい感じ。

でも本当に悩んでいたので、私は素直に頷いた。


リコ)「実は私、こう言うお仕事をしてるんです」


NA)

女性は名刺を差し出した。


マスヨ)「『結婚への夢を叶えるメンタルコーチ』…余綿リコ?」


リコ)「私は人生の夢とも言える結婚と、幸せな家庭を持つ事、そして子供を持つ事への夢を、理想的な形で叶える為のお仕事をしています」


NA)

いま私が悩んでいるのがまさにそれ。

その奇妙な偶然に少し興味を持った。


マスヨ)「どうして私が悩んでいると…?」


リコ)「長年このお仕事をしていますと、直感とでも言いますかね、何となく分かるんです。あなたのご様子を拝見させて頂いて、ふと、あなたからそんなオーラのようなものを感じたんです。それでお声を掛けさせて頂いて」


NA)

そう言うリコにも不思議な感覚がある。

気付くと私は、今の自分の悩みをリコに全て打ち明けていた。


リコ)「なるほど。あなたは結婚願望を非常に強く持ってらっしゃるんですね。愛する人の子供を産んで、円満な人生を充分味わいたい…」


マスヨ)「ええ…。でも現実には叶わなくて…」


リコ)「分かりました。あなたに男性を1人ご紹介致しましょう。紹介料は無料で結構です。明日の夜の今頃にもう1度、このバーへお立ちより下さいな」


NA)

結婚願望と子供を持ちたいという思いは冷めない。

しかも無料。

私は明日の夜、もう1度来る事にした。


リコ)「でもマスヨさん。先に言っておきます。私はあなたの夢を叶える為のお仕事をします。でも夢には必ず終わりがあるもの。私はあなたに甘い夢をご提供致しますが、それは次のステップへ進む為のキッカケです」


リコ)「そのあとは、あなた自身の足で人生を歩み、あなたの手で幸せを掴み取って下さい。決して私がご提供する夢に延々浸ってはいけません」


NA)

いきなりそう言われて少し躊躇した。

でも、紹介してくれる男性と本当に恋に落ちれば、そんな事は関係無い。

きっとそこから又、新しい運命が始まる。

今の状態から脱出したい…これまでの不毛な生活を華やかにしたい…そんな思いが膨らんで、この時リコが言った事を私は軽く受け止めた。


マスヨ)「…はい、わかりました」


ト書き〈翌日の夜、バーにて〉


NA)

そして翌日の夜。


リコ)「こちらの方です」


元)「どうも初めまして。尾張 元です」


NA)

その男性を見た時、私の心に衝撃が走る。


マスヨ)「あ…あなた…!か…一夫!?」


NA)

尾張 元は、私の初恋の人・葉時芽 一夫にそっくりだった。

まるで生き写し。


元)「ハハ、僕そんなに初恋の人に似てますか?」


マスヨ)「あ…はい…」


NA)

私の心に、一気にあの頃の思い出が甦った。

そして改めて恋に落ちた。

その日から、私と彼は付き合った。


ト書き〈甘い日々が続く〉


NA)

それから数日間、私と彼との甘い日々が続いていった。

まるで本当に青春の頃に返ったようだ。


元)「この映画、一緒に観ようか?」


マスヨ)「うん」


NA)

映画の趣味も一夫と一緒。

料理の嗜好も一緒。

好きな色・好きな服・好きなタイプまで、全部、一夫と一緒。


マスヨ)「(ああ、本当に一夫と一緒にいるみたい…)」」


NA)

こんな驚くべき偶然を不思議に思いつつ、私は幸せだった。


ト書き〈数か月後〉


NA)

しかし或る日の事…


ト書き〈マスヨの自宅〉


マスヨ)「あなたー?あなたー?…あれ、どこ行っちゃったんだろ…」


NA)

彼がどこにもいないのだ。

私達はあれから同棲していた。

しかし部屋にもマンション周辺にもどこにも彼がいない。


マスヨ)「ハァハァ…ど…どこ行ったのよォ!」


ト書き〈その日の夜〉


NA)

その日の夜、私は「マリーゴールド」へ駆け込んだ。

そこには彼の代わりにリコがいた。


マスヨ)「あ!リコさん!」


リコ)「あらマスヨさん」


マスヨ)「ねぇ、いないんです!あなたに紹介して貰ったあの人…元さんがどこ探してもいないんですよォ!」


NA)

血走った眼の私をリコは落ち着かせ、宥めた。

そして…


リコ)「前にもお話した通り、私があなたにご提供した夢には終わりがあります。あれから数か月、あなたも自分の人生についていろいろ考える事が出来たでしょう。もう夢は終わったんです。次の恋愛へ進む勇気を持ち、今までの思い出を振り払い、新しい男性を獲得するべきです」


マスヨ)「え…?」


リコ)「マスヨさん。あなたはもう、思い出から卒業しなければなりません。でなければ、いつまで経っても次の恋愛へは進めないでしょう。もし初恋の人をずっと心に住まわせてしまえば…」(遮るようにマスヨが話す)


マスヨ)「イヤです!絶対にイヤ!あの人を返して下さい!お願いします!あなた多分、彼の居場所をご存知なんでしょう!?だってあなたが紹介してくれたんですから!ねぇお願い!私にあの人を、元さんを返して下さい!」


リコ)「…でもそうすると、あなたは2度と現実の恋には戻れませんよ?次の恋愛に進む事も出来なくなるでしょう。それでも良いのですか?」


マスヨ)「…構いません。あの人とずっと一緒にいられるなら!」


NA)

忘れ掛けていた「愛する気持ち」…

初恋の人ともう1度過せたような甘い日々…

この2つの感動が私を捕えて離さなかった。


リコ)「…わかりました。あなたが望むように致しましょう。その代わり、あなたはもう2度と現実の生活に戻る事は出来ません。でも彼のもとへ行けば、あなたにもそれなりの幸福はやって来るでしょう…」


NA)

そう言ってリコはカクテルを1つ注文した。


リコ)「これをお飲みなさい。飲んだ瞬間あなたは彼のもとへ行けます」


NA)

私はそれを一気に飲んだ。

その瞬間、私の意識は消えてしまった…


ト書き〈子野世墓地の一夫の墓下に家庭があるイメージ〉

ト書き〈7年後〉


NA)

それから7年後…


マスヨ)「あなたー、はい💛コーヒー」


一夫)「や、有難う」


マスヨ)「小説を書くお仕事も大変ねぇ。少し休んだら?」


一夫)「いや、これくらい大丈夫さ♪今夜中に一気に書き上げるよ」


NA)

私と元さん…いや一夫は今、一夫が眠る墓下の家庭で暮らしている。

私に紹介された尾張 元さんは、やはり一夫だったのだ。

ここへ来て一夫に教えて貰い、改めて判った。


マスヨ)「でもリコさんも人が悪いよねぇ。初めからあなただって言ってくれたら良かったのに」


一夫)「まぁ向こうの世界には向こうの事情があるんだよ。いきなり幽霊を押し付ける訳にもいかないだろ(笑)」


一夫)「でも良かったじゃないか。お陰でこうしてお前と円満な家庭に落ち着けたんだ。リコさんに感謝しないとね」


マスヨ)「そうね。彼女と出会ったお陰で、あなたとも再会出来たんだから」


NA)

墓下の家庭と言ってもここは不思議な空間。

食料は部屋の中でポンと言った感じにわんさか沸いて来る。

生活に必要な物も全部揃ってる。

子育てするにも十分な環境が整っていた。


ト書き〈益夫が部屋のドアを開けて墓下から遊びに出る感じ〉


マスヨ)「あら、益夫は?」


一夫)「ん、いないのか?」


マスヨ)「あ、まぁた外に遊びに行ったのねぇ~!」


一夫)「あ、ホントだ。ボールが無い(笑)まぁ幽霊だし、車とかに気を付ける必要も無いから大丈夫だろ♪遊び飽きたら適当に帰って来るさ」


NA)

あれから私と一夫の間に子供が産まれた。

名前は益夫。

今年でちょうど7歳になる。

益夫はボール遊びが大好き。

つい部屋からボールを持って、外に遊びに出る事がある。

一夫が死んだ時、サッカーボールも棺に入れて貰っていた。

一夫は生前、サッカーが大好きだったのだ。

最近この辺じゃ、時々遊びに出た益夫を見掛ける人も増えたみたい。


ト書き〈一夫の墓を眺めながら〉


リコ)「フフ。幸せにやってるようね2人共。私はマスヨの結婚願望・子供が欲しいと言う夢から生まれた生霊。マスヨに初恋の人・一夫を霊界から引き戻し、『尾張 元』という人物に具現化して引き合わせた」


リコ)「そうね。一夫の言う通り、現実の世界じゃいきなり幽霊を紹介する訳にもいかないからね。まぁマスヨくらい幸福願望が強い人なら、そのまま紹介してあげて良かったのかも知れないけど」


リコ)「結局マスヨは、この世での恋愛・結婚より、思い出と結婚し、そこで幸せを勝ち取った。それで本当に幸せになれる人もいれば、そうでない人もいるみたい。マスヨが持っていた思い出は、とても良い思い出だったようね。この世を超えて愛し合える人がいるなんて、そんなの滅多に無い事だもの」


リコ)「お墓の周りで誰かを見掛けた時、もしそれが幽霊だったら、得てしてこう言うエピソードが墓下に眠ってるのかも知れないわ…」



エンディング~


エクソちゃん:今回は結構グッドエンディングだったでしょ?まぁ2人とも死んじゃってたみたいだけど。

デビルくん:て事ぁ、あのときリコが飲ませた酒は、毒入りだったのか?

エクソちゃん:うーんそこまでは言ってなかったから判んないけど、まぁマスヨを幸せに誘(いざな)う薬…みたいに取っとけばイイんじゃない?

デビルくん:まぁ結局毒入りにしたって、リコも生霊だから捕まる事ぁねーからな。

エクソちゃん:でもさ、死んでから初恋の人に再会できるなんて、なんかロマンティックじゃない?マスヨと一夫、きっとこの先も幸せにやって行けそうね♪子供まで生まれちゃって♪

デビルくん:まぁな。

エクソちゃん:現代じゃ晩婚とか独身とか流行ってるみたいだけど、本当は結婚したい・子供が欲しいって、心の底で願い続けてる人がきっと多いのよね。

エクソちゃん:そんな人にとったらさ、こう言うお話でも結構、本格的なハッピーエンドになるんじゃないかな?

デビルくん:まぁ人間てモンは、自分を愛してくれる人と、自分が愛せる人が欲しいって言うからな。俺ぁデビルだからようわからんが、そう言う奴と一緒にいられるんなら、例え墓下の生活でも幸せは幸せなんだろうよ。

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=wuNuPYjrwf0&t=74s

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初恋の人と結婚したい!どうしても子供が欲しい!その願望が強烈なまでに膨らんだ末路の夫婦… 天川裕司 @tenkawayuji

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