One Last Love

天川裕司

One Last Love

タイトル:(仮)One Last Love



▼登場人物

●上木翔太(うえき しょうた):男性。35歳。一流企業で働くサラリーマン。妻帯者。浮気性。

●上木佳代子(うえき かよこ):女性。34歳。翔太の幼馴染であり妻。器量は良くない。気立ては良い。

●綾乃(あやの):女性。享年25歳。翔太の元浮気相手。浮気性。思い込むと行動が恐ろしい。

●木下香恋(きのした かれん):女性。30代。翔太の理性から生まれた生霊。


▼場所設定

●翔太の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。

●カクテルバー:お洒落なカクテルバー。翔太と香恋の行きつけ。

●街中:必要ならで一般的なイメージでOKです。


▼アイテム

●One Last Love:香恋が翔太に勧める特製のカクテル。これを飲むと恋心や愛が活性化される。


NAは上木翔太でよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたには愛する人が居ますか?

その人を大事にしてますか?

また逆に、あなたはこれまで

あなたを好きになった人を捨てた事がありますか?

今回はそんな恋愛がらみ…いや浮気がらみで人生を捨てた

ある男性にまつわる不思議なお話。



メインシナリオ〜


ト書き〈数年前に結婚〉


佳代子「ほんとに信じて良いのね?嬉しい」


俺の名前は上木翔太(うえき しょうた)。

今年で35歳になる妻帯者。

一応、都内の一流企業で働いている。


一流大学を卒業し、資格も沢山持って

俺のステータスは一般に高いと言われる。

でも1つだけミスをした。


それは、結婚。


本当に好きでもない女と流れで結婚し、

彼女が幼馴染だからと、その点で正しい選択肢を取る視点が曇っていたのだろう。


佳代子は確かに大人しく気立ての良い女だったが、

俺の美的感覚から言えばブスな部類に入る。

そう、器量が俺のタイプじゃなかったのだ。


ただそろそろ結婚したほうが良い、

と言うそのステータス確保の為だけに結婚。

だからだんだん佳代子に対する愛情も失せていく。

結婚した後にも関わらず。


俺はよほど女運が悪かったのか。


確かにこれまで何人かと付き合った事はあるが、

佳代子と同じく勢いで付き合ったのもあり、

適当にフッて泣かせてきた事もある。


思えば、綾乃との出会いから交際は壮絶だった。


俺が大学の時に2週間だけ付き合った彼女だが、

付き合った後に気づいたが彼女はかなりの浮気性で、

その奔放ぶりには俺でさえ目を余らせる程。


そして適当なところでフッていた。

その時もちろん佳代子とも付き合っていたから

俺は浮気していた事になり、その事は佳代子には話してない。


綾乃は綾乃で俺と付き合うだけ付き合って、

彼女のほうでも何人かの男と浮気していた。

これも奔放のなせるワザ。


だからフる事にはそれほど罪悪感はなかったのだが、

いざ別れるとなった時、綾乃の感情的な行動というか

最後の足掻きのようなものが凄まじかった。

どうもあいつは俺を遊び相手としてキープしたかったらしく、

それが叶わなかったからあれほど嘆いたんだろう。


あいつの事をあれ以上深くは知らず、早めに別れておいてよかった。

まぁそれでも浮気だったから、俺も人の事は言えないが。


ト書き〈カクテルバー〉


そんなある日。俺はカクテルバーに立ち寄っていた。

よく来る場所ながら、俺はそこで新しい人と出会った。


香恋「フフ、こんばんは。お1人ですか?もしよければご一緒しません?」


そう言ってきた彼女は木下香恋(きのした かれん)。

都内でライフヒーラーの仕事をしていたようで、

どことなく清楚で可憐な上、気品漂う良い女。


でも喋っている内、1つの不思議に気づく。

彼女に対しては、何の恋愛感情も湧かない。

それどころか自分の理解者になってほしいと言う思いのほうが膨らみ、

気づくと俺は今の自分の悩みを打ち明けていた。


香恋「え?ご結婚に失敗されたと?」


翔太「え、ええ。こんなこと他人に言える事じゃないですけど、でも何故かあなたには聞いて頂きたくて…」


それから俺は自分の心の全てを暴露した。

これまでの女性遍歴の事まで。


香恋「まぁ。まるで浮気だらけの人生ですね?」


翔太「ええwでも付き合った人数は少ないんですよ?」


香恋「それが1度でも2度でも浮気は浮気です。そんなに素晴らしい奥さんが居ながらあなたはどうして?」


翔太「ですから、本当は僕のタイプじゃなかったんですよ」


香恋「おやおや、奥さんが聞かれたら泣きますよ?」


どうしようもないテーマの話が続く。

でも彼女は親身になって聞いてくれ、

俺のその悩みを解決しようとしてくれたのだ。


香恋「良いでしょう。それではそのお悩みを、私が解決して差し上げましょう」


翔太「え?」


香恋「ただしこの1回限りです。1度だけあなたにチャンスを与える意味で、今の奥さんと仲睦まじくずっと過ごして行ける、その生活の土台を得るチャンスを差し上げます」


そう言って彼女はそこのマスターにオーダーし、

一杯のカクテルを俺に勧めてきた。


香恋「さぁどうぞ、こちらをお飲み下さい。これは『One Last Love』と言う特製のカクテルで、あなたの恋心を活性化します。あなたはその心を持って、どうか奥さんを愛するように努めて下さい」


香恋「1度愛し、結婚したその相手の奥さんを、蔑ろにしちゃいけません。自分がされて嫌な事を相手にもするな、こんな道徳は小学校の頃にあなたも習った筈でしょ?でもその道徳は大人にも通用します。あなたは今それで悩んでるんですから」


彼女は不思議な人。

他人に言われたってその気にならない事も、

彼女に言われると信じさせられその気になってしまう。


俺は改心するように彼女の言う事を聞き、

勧められたそのカクテルを一気に飲み干した。


ト書き〈もう1度愛する〉


佳代子「あら?あなたどうしたのこれ?」


翔太「え?いやお前が前にそれを欲しがってたから、買ってきたんだよ♪」


俺はその日、佳代子が町角で前から欲しがっていた

バラの花をプレゼントした。


佳代子「とっても綺麗。あなた、ありがとね」


翔太「いやぁ、ははwお前が喜んでくれたらそれで良いよ」


何故か俺の心には、

佳代子に対する愛のようなものがもう1度芽生えていた。

やっぱりあのカクテルのせいだったのか。

こんな事、ここ最近じゃずっとしていなかったのに。


でもそれから俺はやっぱり変わっていた。

佳代子を見る目がすっかり変わり、彼女を愛し、

彼女と出会う事ができて本当によかった…

そう心から思う事ができていた。


佳代子「あなたが最近優しくて嬉しい。昔に戻ったみたい…」


佳代子も最近の俺が変わった様子をどこかで気づいていたらしく、

昔に戻れてよかった…そんな事を何度も言った。


俺もこれで幸せ。

本気でそうなれると信じ、

佳代子とこの先ずっと幸せにやって行けると思っていた。


ト書き〈トラブル〉


でもトラブルが起きた。

と言うか、俺の浮気心がまた暴走したのだ。


会社帰り。

都内の割と綺麗なレストランで軽く食事をしていた時。

少し向こうに…


翔太「な…なんて綺麗な人なんだ…」


と思わせる絶世の美女が座っていた。

どうやら彼女も1人で来ていたようで、俺は彼女に近づき…


翔太「あの、今夜よかったら一緒に…」


と夜のデートに誘ってみた。

すると彼女は二つ返事で…


文香「まぁロマンチックな方。ええ、喜んで」


とOKした。

その時まだどこかに、佳代子に対する不満が自分の中にあると

俺ははっきり思い知らされた。


俺がこのとき引っ掛けた女は文香(ふみか)と言った。

彼女の美貌の前では佳代子の姿が薄れてしまい、

俺の心は文香に奪われていた。


このとき少しだけ香恋に言われた事を思い出したが、

そんなもの軽く聞き流し、今を大切にした。


でもその文香とホテルへ行った帰りの事。

また会う約束を取り付けて俺が1人で路地裏を歩いていた時…


香恋「フフ、こんばんは。こんな所でまたお会いしてしまいましたね」


翔太「うおわっ!?あ、あんた…!」


いきなり現れたのはあの香恋。

全く人の気配がしなかったのに急に現れた彼女に対し

俺はこのとき初めて恐怖した。


香恋「あれだけ言っておいたのに、奥さんをまた裏切って、別の女と愛し合った後のホテル帰りですか?」


翔太「え…えぇ?」


香恋「彼女と会うのはおやめなさい。これが最後の忠告です。もしこのまま密会を続ければ、あなたの身にとんでもない不幸が訪れるでしょう」


でも俺は聞いている内だんだん腹が立ってきた。


翔太「な、なんだあんたは!そりゃあの時は助けて貰って感謝したけど、それとこれとは別だ!俺のプライベートに干渉するなって事だ!」


そう言って彼女を振り払い、俺は又スタスタ歩き出した。

そのとき背後で…


香恋「もし又その浮気相手に会えば、あなたは身を滅ぼす事になります。あなたが浮気症なのはもう知ってます。その上で言うんです。おやめなさい。そして奥さんを愛するんです」


と聞こえたが俺は無視した。


ト書き〈オチ〉


そしてその週末。

俺は又あの彼女・文香と会っていた。

今度はホテルではなく彼女の自宅で。


でもこの時の文香の様子は前と違った。

何かひどく落ち着いており、静かで、

1点を見つめてぼうっとしている。


それが少し気になり俺は聞いてみた。

すると…


文香「え?…あたしが落ち込んでるみたいですって?」


翔太「ああ、なんだか元気がないなって思ってさ」


文香「そう。まぁ当たらずも遠からずってとこね」


翔太「ど、どうしたんだい?」


文香「確かに落ち込んでるわ。でもそれだけじゃない…」


翔太「え?」


文香「フフ…この沈黙は嵐の前の静けさ。…アンタに復讐できるから静かに喜んでるの…」


翔太「…文香…?」


その時、彼女の部屋のテーブルに置いてある

写真立ての名前に目がいった。

そこには見覚えのある女と、その女の両親が写っている。


そしてその女の顔の下には「綾乃」と

小さくペンのようなもので書かれてあった。

きっと想い出として、あとから書かれたものだろう。


文香「わかった?あたしの本当の名前は文香じゃない。綾乃って言うのよ、忘れたかしら?」


翔太「なっ…」


すると、途端に文香の顔が崩れ始め、中からドクロのようなものが現れた。


翔太「う…!うわぁああぁ!!!」


文香「アンタを離さない!いつまでもキープしてやるわあ!!さぁこっちへ来なさい!!」


文香の後ろに暗闇のようなものが生まれ、

まるでブラックホールのようなその暗闇に俺も文香も吸い込まれてゆく。

そして2度と戻らなかった。


ト書き〈消えてゆく文香のアパートを見ながら〉


香恋「だから言ったのに。文香の正体は、彼がずっと前にフッて捨てた綾乃だったの」


香恋「彼女のあれからの人生、あなたは知らなかったでしょ?あれから彼女、あなたにフラれた悲しみで自らこの世を去っていたのよ。そして私はその彼女の霊を引き寄せ、それに人面瘡をくっつけ、1人の美貌の持ち主として実在させた。あなたの前にちゃんと現れるようにしてね。なんともまぁ、いっときの感情に全てを任せた奔放な行動ね。でも彼女の心がそうして傷ついたのは事実。それは誰にも否めない」


香恋「そもそも、佳代子という恋人がありながら浮気するからそんな事になったのよ。今回はあなたを試してみたわ。あれから変わってるかどうかをね。全く進歩なし。あなたは同じ浮気の罠にかかって身を滅ぼしたわけ。『類は類を呼ぶ』の喩え通り、浮気は浮気を呼ぶもの」


香恋「あなたも自分のこれまでの人生を、その闇の中で振り返りなさい。私はあなたの僅かに残った理性から生まれた生霊。これはその私を蔑ろにした罰なのよ。不憫なのは今の奥さんね…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=1wEJVO2WATE&t=187s

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