『朝の影』

ヒニヨル

『朝の影』

人混みの中を

僕は歩く

朝の群れは駅に向かって

それから

学校や仕事先へと向かうのだろう


僕はというと

正反対を向いていて

川の流れに逆らう

サカナのようだ


周囲の視線は一直で

僕には誰も気が付かない


あの群れに加われば

誰か僕を見つけてくれるだろうか

僕はあの中に入ることが

出来るのだろうか


まばゆい朝日に照らされて

視界が真っ白になる


僕の姿やカタチは

とても希薄だから

光が通り抜けていって

何も無かったかのように

地面を照らし出さないかと

心配になった


不安な僕は

いつも怖くて

後ろを振り返らない


頭上では

お喋りな小鳥たちが

「おはよう」を言い合っている

疎外感には慣れっこだ


感傷的な余韻に浸りながら

子どものような自分の内側に

思わず笑う


いたわるように気持ちを沈めると

僕は素直になって

いつものように

この朝を受け入れる。



     Fin.





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『朝の影』 ヒニヨル @hiniyoru

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