二人のキョリ

ろくろわ

世界のキョリの概要

 知識が無い事は罪なのか。

 勉強を疎かにした事は悪なのか。

 俺は、目の前の敵に銃を突きつけている今日程、歴史を蔑ろにしてきたのを後悔した事は無かった。


 遡る事、四年前。

 俺は所謂いわゆる神隠しやタイムトラベルと呼ばれる類いのものに遭遇し、昭和十六年の日本に迷い混んだ。


 そしてその四年後の今、昭和二十年。

 何のために戦っているかも分からない事に身を差し出し、怒号と轟音と静寂が混じる中にいる。


 俺はこの戦いの結果を知っている。

 日本が負け、どう歩んで行くかを知っている。何なら四年前からどうなるか知っていた。だけど、ただそれだけで、詳しい事は学んだ筈なのに覚えていない。

 知っている事は、歴史の大まかな流れだけ。

 よく、異世界転生やタイムトラベル系の物語には、現代の知識を使って開拓や革命を起こすものがあるが、あれは嘘だ。都合良く賢い奴ばかりが転生やタイムトラベルをすることはない。

 或いは、不出来な俺達みたいなのは物語にすらならないのかもしれない。


 俺は目の前で勉強した筈の英語を喋る彼の言葉が聞き取れないし、理解ができない。

 だけど彼らが将来、日本のアニメや文化に熱中し日本を大切にしてくれる事を知っている。


 だから俺には何もできない。


 彼に向けた銃口も、彼から向けられる銃口も、俺のこの先の歴史に刻まれる事は無い。



 了


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二人のキョリ ろくろわ @sakiyomiroku

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