【自主企画参加】「ただの高校生だった俺に許嫁ができたので、溺愛してきていた姉と妹と幼馴染を振り払って恋愛します!」 第3話

榊琉那@屋根の上の猫部

第3話 凛と俺との関係って何?

「デ、デートになるの?これって」

「まだこの辺りに慣れていないから、色々な事を案内してくれる?いいでしょ?」

「いやいや、会ったばかりでいきなりだし。まだ連絡先も知らないじゃないか」

「〇インぐらいやっているでしょ?教えてあげるから登録しなさい」

「〇インなんて殆ど使ったことないよ」

「つべこべ言わないで登録する。ハイ、これでOKね。後で連絡してよね」

何だか知らないうちに、可愛い子の連絡先をゲットしてしまった。

いいのかこれって。


「一応、今後の土曜日の朝10時ぐらいを考えているから。後で〇イン、忘れないでね」

「あのぉ~、俺たち初めて会ったはずなんだよね。どうして俺と仲良くしようとするの?」

「あれ、お父さんから何も聞いてないの?」

「何の事?何も聞いてないけど」

「……、そっか。ここで話す事じゃないから。学校終わったら電話するからね。絶対、無視しないでよね!」

そう言い残すと、湯川 凛ゆかわ りんは颯爽と去っていった。

(何なんだ、一体……)

残されたのは半分呆然としている匠と、軽い殺意さえ感じさせる友人達の視線だった。

「何でお前ばっかり~」

そして友人達から袋叩きにされる匠であった。

何処かのラノベの主人公じゃないけれど、『不幸だー!!』と叫びたい気分だった。



………………………


「ただいま~」

昼休みの出来事のおかげで、午後の授業はボロボロだった。

「たっくん、おかえり~。どうしたの?何か疲れてるみたいだけれど。

どうする?オッパイ揉む?」

「いい加減、勇斗さんに言いつけるよ。このバカ姉」

「バカ姉はないでしょ。たっくんのいけず~」

柚珠姉のブラコン、何とかならないかと思うのだが、まぁ無理だろうなぁ。


「それはそうと、たっくん、本当に疲れた顔してるから。何かあったの?」

「実は、かくかくしかじかで……」

「私のたっくんにちょっかい出そうっていう奴ぁ、天誅だぁ!」

「誰が『私の』だよ!」

匠は、柚珠姉の頭にチョップをする。いつもの光景だ。柚珠姉がジタバタしているが気にしない。


「土曜日にお出かけするんだよね?一緒に行っていい?」

「ダメ、絶対」

「むぅ~。ところでたっくんは、お出かけ用の服ってたくさん持ってるの?」

「やっぱ、ジャージじゃダメ?」

「当たり前でしょ?ちょっとはお洒落に気をつかおうよ」


匠自身、ちょっと暗めで物静かな性格だし、勉強も運動も得意ではない。

目立たない存在なので、女の子に関わる機会は少ない。

まぁ唯一の例外は、幼馴染みのユリこと榎並友理奈だ。

確かに顔は可愛いし、運動神経もピカイチだ。若干、勉強は苦手な所もあるが。

そして何故か匠に興味を持っていて、何度も告白をしているが、全て匠に断られている。

匠にとって、ユリは仲のいい幼なじみであって、恋愛対象とは違うと思っている。

今のような友達以上恋人未満な関係でいればいいんじゃないか。

それって我儘な事なのかなぁ?


「わかった。今からたっくんのデート服を買いに行こう」

「ちょっと柚珠姉、晩御飯はどうするんだよ?それにナナは放置なの?」

「ナナはそのままでいいよ。お父さんが帰ってきたら、ナナが相手をしてやらないとね。それにナナがいると話が面倒くさくなるから。さぁ、レッツラゴー♡」

「何か『死語の世界』を見た気がする……」

こうなった柚珠姉は、走り出したら止まらない。

諦めた匠は、駅前までデート服を探しに行くのだった。



「え?ここって、〇まむら……」

「〇まむらを舐めちゃだめよ。意外とお値打ちな服あったりするんだから。

あ、このキャラTシャツ、可愛いね♡」

「おい、それが目的かよ……」

とりあえず柚珠姉は放置して、自分に合いそうな服を吟味してみた。

でも匠にとって、自分で服を選ぶという経験がなかったので、

どれにしたらいいか迷ってしまう。

(流石にアニメのキャラのTシャツだとまずいよなぁ)


「たっくんならこれが合うんじゃない?ちょっと試着してみようよ」

遊んでいたとばかり思っていた柚珠姉が、いつの間にか服を選んで持って来た。

縦のストライプが入った白いカジュアルシャツと、グレーのカジュアルっぽいスラックスだ。

キャラTシャツにデニムのジーンズよりは、よっぽど大人っぽい感じだ。

匠は試着室で着替えてみる。あ、サイズもピッタリだ。地味かと思ったけど、悪くないんじゃないの。

「どう……かな?」

「うん、いいじゃん。思った通り、たっくんにはこういうの似合うね。よし、買いましょう♡」

「柚珠姉、お金そんなに持っていないよ」

「大丈夫、お姉ちゃんに任せなさい♪」

柚珠姉は、レジに服を持って行って代金を支払った。予想していたよりもはるかに安い値段で購入出来たようだ。流石、柚珠姉と言うべきか。


さて家に帰ろうと思い、スマホをチェックしてみたら、何かとんでもない事になっている。

着信が10件ほど、〇インにも大量のメッセージが。着信音をオフにしていたから気が付かなかった。

ヤバい、凛から連絡があるって事、すっかり忘れていた。

「ねえ、たっくん、折角だからお茶でも……」

「連絡が来るの、すっかり忘れてた。ちょっとヤバイ。家に帰るわ」

匠は一目散に家へと帰っていった。うう、電話するのが怖い。


「もしもし、ゴメン。出かけていて全然気が付かなかった。ホント、ゴメン」

「私からの電話を無視するなんていい度胸じゃないの」

「今度の土曜日、何か驕るから、それで許して」

「〇アードパパのシュークリーム3つ買ってくれるなら許す」

「わかった。忘れないでおくよ」

「今度忘れたら……、どうなるかわかるよね?」

「うん、これで機嫌直してね」

「まぁ、しょうがないか……」

よかった。ちょっと出費になるけど、喧嘩したままにならなくてよかった。


「ところで、本当に何も聞いていないの?」

ちょっとした世間話をした後で、凛から昼間の話について聞かれた。

「いや、何も、全く」

「私が許嫁になったっていうのに、随分呑気なお父さんね」

「ゑ?」

ちょっと待って、今、許嫁って言ったよね?聞き間違いじゃないよね?

「許嫁って誰の?」

「私が匠の許嫁って事よ。Do you understand?」

「Oh my God!」

いや、一体どういう事よ?何で凛みたいな可愛い子と俺が許嫁?

親父は何で話してくれないんだ?もう訳がわからない。

「という事で、土曜日はしっかりエスコートしてね、許嫁さん♡」

そういって電話は切られた。一体、オヤジは何を仕出かしたんだ?

頭の中が混乱しておかしくなりそうだ。


「湯川さんとこの凛ちゃん?ああ、匠と許嫁だ」

親父はすっかり忘れてたと、ケラケラ笑ってた。

何でこんな大事な事をすぐ話さないんだ?だから母さんに逃げられるんだ。

子供ながら、親父のいい加減な所は直してもらいたい所だ。

「もう少し詳しく話してくれないの?」

「別に話す事なんてないだろ?」

この親父はぁ……。息子ながら少々呆れてしまった。


…………………


気が付いたら土曜日の朝になっていた。よく考えたら、女の子と二人きりで行動なんてした事ないぞ。

柚珠姉にレクチャーしてもらった方がよかったかな?

とりあえず朝ごはんを食べてから支度をする。柚珠姉に買ってもらった服、

いい感じだなと思ったりする。

「行ってきます」

時間に間に合うように、匠は余裕を持って家を出た。


待ち合わせ場所には、もう凛が到着していて待っていた。

結構、余裕を持たせて家を出たのに、いつから待っていたんだろう?

「おはよう、今日はよろしくね」

「おはよう、ところで後ろにいる人は何なの?」

?と思い、匠は後ろを振り返ってみた。

「なんじゃこりゃ~」

後ろには、よく見かける姉と妹と、ついでに幼馴染みが並んでいた。

何?この状況?もう訳がわからないよ。

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