スマホ地獄

sui

スマホ地獄


世界中にばら撒かれた病の種は、ある日一斉に芽を出した。

いやいや、元よりあったのかも知れない。どうせ人間なんて幾代幾度と連ねた所で大して変わるものでなし。


――――――――――

――――――――――

―――――――――――――

――――――――――――――

――――――――――――

――――――――――――

―――――――――



「今日は超刺激的な一日になる事請け合いだぜ!何てったってこれからやるのは殺人だからな!」



『この人年だし何で人気なのか分からない、有り得ない』

「は?人の年齢にどうこう言う?それにしてもこの人の服どうにかならないの、有り得ない」



「借金をしてみた結果」

「強盗傷害やってみた奴おる?」

「逮捕された件」

「刑務所に入るとどうなる?調べてみた」

「受刑者ワイ、人間力最底辺だと思い知らされて咽び泣く」

「前科ついてるやつ、マジで危機感持った方が良い」



「食事に行こう」

「いいよ、どこにする?」

「××の店が良いんじゃない、映えるって有名だし」

「えー、もう有名な所行っても仕方なくない?」

「『ねぇ聞いて、友達の文句が多くてウンザリ』っと。じゃあ、そうだ。〇〇〇さんが食べてたお店が良いよ」

「あー、確かに。乗っかって行こう。やりやすそうだし」

「まず沢山注文するでしょ。それを写真に撮るから」

「そしたら食べてる所をライブ配信して」

「あ、ちゃんと切り抜きの事も考えてよ」

「あと何回やったらダイエット始める?」

「うーん、どうしよう。ダイエット用品買うの、通販先もちゃんと選ばなくっちゃ。△△さんと同じって言ったらコメント増えるかなぁ」

「プチ炎上したらいいよねー」

「先に過食嘔吐が始まりそう」

「あー、そっかー。適当な所で深夜に病み配信して薬貰いに行かないと」



「誰のお陰で食べてこられたと思ってるの!」

「俺の姿をばら撒いて得た視聴数のお陰」



「はい、こちら限定商品になりまして購入なされば注目される事は確実かと」

「有難い」

「いいえ、こちらとしても宣伝は必要ですし」

「それで実用性は?」

「ございません」



『×××社の社員が機密情報を漏洩したとして逮捕されました』

『取り調べによると氏は配信で自分のファンがコメントしていたから話していいのだと思い込んだ、と供述しているそうです』

『こういうのはね、気付いたら身内で固まってたりして、結果ややこしくなりがちなんですよ』

『トレンドだと思ったら体よくステマに利用されていた、気付いたらマルチ商法に巻き込まれていたなんて話もありますしねぇ』

『昨今こういったジャンルも競争率は高いですからね、そもそも敵が多いですよ。ちょっとでも這い上がろうとして倫理道徳に沿わない事をすれば味方は減りますしね』

『それでは次のニュースですが〇〇報道の××さんにお願いします』

『はい、××です。今週のトレンド調査ですが今日は△△というお店に来ています。ここはタレントの□□さんが来るお店として一躍有名に~~~』

『~~~~~はい、有難うございました。いやぁ美味しそうでしたね、人気になるのも頷ける』

『そうですね』

『実は××さん、私の知り合いの娘なんですよ』

『そうなんですか、うちの息子は出版やってるんですけど□□さんのファンでしてねぇ……はい、次のニュースです』



「毎日毎日同じ事の繰り返し!家出て仕事でパソコン触ってネット眺めてるばっかり!早く家に帰ってスマホ弄りたい!SNS見たい!!通販で頼んだお気に入りのお菓子をずっと食べてたい!!」



「働くなんてバカバカしい、配信すれば金になるんだから皆やれば良い」

「〇〇が買いたいのにいつになっても買えない。人手不足で生産不能?世間は何をやってるんだ」



「あいつマジふざけてる、俺でいいね取りやがって」

「アタシと出かけた話ももう使われてんだけど」

「俺の写真も」

「アップする速度が遅いのが悪いって何なんだよ」

「あいつに近付くと全部ネタにされて金と評価に変えられるよ」



「おい、お前ちょっとジャンプしてみろよ。そうだよ、出せるだろ。バズりてぇんだよこっちは」

「視聴数と賠償金で……うーん、これじゃトントン位だな」

「そんなぁ、ちゃんとバズって下さいよ」



「運転手さん、乗せて下さい」

「はい、お客さんどちらまで?」

「目的はありませんよ、乗り物に乗るのが目的なのですから」

「ああ、お客さんもかい」

「も、とはどういう事ですか」

「いやぁ最近多いんだよねぇ、ドライブ動画って言うの?」

「多い……多いというのはどれ位ですか?その回数カウントは月ですか日ですか?いつ頃の事ですか?」

「え、いや先月?よりもっと前か?数なんて数えてませんよ」

「それ位だと中途半端で注目されにくいか。じゃあやっぱり止めます」

「お客さん?……はー、変な客が多過ぎる。疲れる。車運転するのが動画で金に出来るんならタクシーなんてやる意味あるか?」



「いらっしゃいませ『クソ客クソ弊社早く帰りたい仕事嫌い今日も配信しなきゃ』」

「これ下さい『クソ店員クソ会社早く帰りたい寝たい今日配信の日だ』」

「『はーい、こんばんは。今日も応援ありがとー!』」

「『一生推していくからねー!』」



「うちのグループに入れば視聴数稼げるって言われたんだよ」

「私も、確かに前より視聴回数は増えたよ」

「でも何かさぁ、一軍にこき使われているって言うか。新入りだからって負担が重いと言うか」

「分かる。それでこっちは10増えたけどあっちは5000増えて、みたいな……なんか割に合わない感じ」

「初期のファン、いなくなってどうしたんだろうと思ってたら一軍の方に行ってた」

「努力の問題だって言われるけどそうなのかな」

「辞めた人の中には嘘吐かれたとか誘われ方が強引だったとか言ってる人もいるみたいだけど」

「流石にそれはないんじゃない?」

「そうだよね」

「そろそろ発掘シーズンなんだって」

「勧誘頑張って使う側に回るしかないのかなー」



「こっちのSNSは人が多いから注目率高い筈!」

「誰も見てくれない見てくれない見てくれない見てくれない誰も見てくれない見てくれないこんなに人がいるのに目に止まらない見てくれない見てくれない見てくれない見てくれない」

「こっちのSNSはどうかな?」

「ずっといるあの人とやってる事は変わらないのに全然見てくれないおかしい見てくれない見てくれない見てくれない見てくれない見てくれない」

「あっちのSNSを使ってみよう」

「凄い辛いしんどいでも見てくれた見てくれた見てくれた見てくれた合わないけど頑張らなきゃもっとやらなきゃ見てもらわなきゃ続けなきゃやらなきゃ難しいけど頑張らなきゃ笑われてるけど頑張らなきゃやらなきゃ」



「最近旦那が面白くないの」

「えー、コメント取れないならもう離婚した方がいいんじゃない?今時有り得ないでしょ、配偶者にバズも与えられないなんて」

「最近彼女の写真載せてもさぁ、評価つかないんだよな」

「はぁ?じゃあもう良くね?努力の足りない女とか価値ねぇよ。コスメとか整形とかやれる事いくらでもあんのに、それしないとか舐め過ぎ」



「好きな事やってそれをネットに上げればお金になるんだから人生楽勝」

「今日も十二時間ぶっ続けで~す。でも最近体調が悪いんだよね……え、皆も?」



『もっと過激な事しないと駄目、努力してこその注目だよ』

「そうですよね!」

「本当に勉強になります」

「いつも見てます!」

『派手な事すればいいと思ってるのが終わってる、技量磨いてなんぼでしょ』

「そうですよね!」

「本当に勉強になります」

「いつも見てます!」

『コバンザメがウザい』

「そうですね!」

「本当に勉強になります」

「いつも見てます!」



「SNSも頑張ってるのに全然伸びないんだよねぇ~どうにかならないかなぁ?」

「どうだ、明るくなっただろう」

「なんて素敵な提灯記事!大好き!!もっとイエロージャーナリズムを発揮して!」

「よしよし、針小棒大にして心象膨大にしないとな」


「……おかしいな、頑張ってるのに叩かれる」



「二十二時から死にますので、皆!見てね!!!」



―――――――――

「……なんて小説を見たんだけどさ」

「時代に取り残されてる根暗のウザ絡みじゃん、しょーもな」

――――――――――――

「……等と言うように、SNS使用における誹謗中傷や所謂スマホ中毒は過熱しており

「これはねぇ、本当に。社会問題です

――――――――――――

『……とかやってるけど大概世間を騒がせてるのはメディアであ

『ヘイト撒きしかして

――――――――――――――

「と、文句を言う為にメディアを覗き込む奇特な人々

「本当に愚か

―――――――――――――

『……なんて茶々入れしか出来ないヤツばっか。だから議論は下手になるし言葉遣いも悪

「頭使わない人間が増えたん

「だから詐欺にも遭

――――――――――

「病気の多くの原因はストレスです」


『現代人がストレスを感じる理由第×位:人間関係』


「ITやインターネットの発展により、今や世界中の人々が繋がっている状態となりました」

――――――――――

アッハッハッハッハッハッハ!!!

イッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!!!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スマホ地獄 sui @n-y-s-su

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ