【短編】幸崎 ゆきこは運が悪い

MrR

ハリウッド映画のアクションヒーローみたいな女の子

 Side 幸崎 ゆきこ


 私は幸崎 ゆきこ。

 

 闇に生まれ、闇に生きる女。

 

 この異能力が溢れたヒーローだらけの世界で私は異能力を使って悪を成して悪を討つ。

 それが私の信条。

 血と硝煙こそが私の生き場所。


 今日は大富豪の娘、西園寺 まりなちゃんのお誕生日パーティーに招かれ、更なる悪の華の高みへと――


(とかカッコつけている場合じゃない!! マジで、本当にどうしよう!?) 


 大金持ちのお友達のお誕生日会が行われているビルがテロリストに占拠された。

 以前起きた、まりなちゃんの誘拐事件を解決したお礼として招待されたらこれである。


 テロリストは異能力集団とかではなく、バリバリ銃器で武装したテロリストだ。

 それももう、アクション映画でしかお目に掛かれないような武器で武装している。

 アサルトライフルにグレネード、ロケットランチャー。

 更には夜空を戦闘ヘリが飛び回っている。

 どうやら私は昔からヘリに縁があるらしい。


 地上にいればヘリに追いかけまわされる。

 ヘリに乗ったら大概何かしらの要因でヘリが墜落する。


 そして今回は高層ビルの窓ガラスから戦闘ヘリが機銃掃射してくる。

 たぶんロシア製のハインド。

 手近な部屋に駆け込んでその場に伏せた。


「いやぁあああああああああああああ!? どうして私ヘリに縁があるのよ!?」


 縁があるならいい男と縁を結びたい。

 この際、ある程度外見は問わないからテロリスト相手に屈しないタフガイがいい。


 そんな事を思っているとロケット砲を打ち込んできた。

 爆音、爆風が体を焦がす。

 パーティー用におめかししたドレスが台無しだ。 


「これ普通の女の子なら死んでるわよ……」


 そう言いつつ、手に握った拳銃、テロリストからパクった奴を確かめる。

 予備マガジンは一つ。

 もっとパクっとけばよかったと思う。

 

(うわ、もうきた!!)


 足音が複数聞こえる。

 拳銃でマトモにやり合って勝てるわけがない。

 私はアメコミで主役張れるような能力は持ってない。

 一応私は無能力者ではないらしく、車とかヘリの操縦の仕方とか拳銃の使い方とかが分かる能力だそうだ。

 何なら即席の爆弾とかもつくれる。

 どんな能力だ。

 恨むわよ神様。


 そう思って私は一先ず逃げる。

 

『いたぞ!?』


『まだ生きてたのかあの女!?』


 激しい銃撃を浴びる前に私は消火器めがけて銃撃を撃つ。

 消火器の激しい噴煙が周囲に散らばり、怯むテロリスト。

 私はその隙に逃げ出す。 



 スマホで友人から状況を聞きながらどうするか考える。

 ビル内の上へ下へと行ったり来たり。

 今はビルの中にあるレストランの厨房の物陰に隠れている。

 

 とにかく助けが来るかどうかが問題だが、助けは来ない。

 プロヒーロー達も人質のせいで迂闊に手が出せない。

 強行突入したがテロリストの重火器で撃退されたらしい。

 

(あーもう、こう言う時にどうして役に立たないのよプロヒーロー!? 事件解決すれば一躍時の人よ!? もっとガッツみせなさいよ!?)


 だが悲しいかな。

 私の経験則では、私が絡んだ事件でヒーローが役に立ったためしがない。

 ヒーローの助けが欲しい時に助けはこない。

 どうしてかは分からないがそう言うもんなのだ。

 

『小娘一人になにをてこずっている!?』


『申し訳ありません!! 想像以上にしぶとくて!!』


『見つけしだい射殺しろ!!』


 メチャクチャ物騒な会話しながらテロリストが来た。

 もう腹くくるっきゃない。

 私はキッチンフロアのガスを充満させて脱出。

 

 テロリストが踏み込んできたところで—―遅れて大爆発が起きた。


『リーダーなにやったんですか!?』


「――ちょっとキッチンのガスを充満させて爆発させたのよ。私も吹き飛んで死ぬかと思ったわ」

 

 私は硬い地面に這いつくばりながらスマホに出て笑う。

 それにしても頑丈なスマホだわ。

 この機種にして正解だったわ。

 なんかもうおかしくて笑える。

 なにがおかしいのか分からないけど、笑いがでてくる。


「この状況を動画にして配信すればパズりそうね。今から配信しようかしら?」


『本当に大丈夫ですか? 爆発で吹き飛ばされて頭変になってません?』


「失礼ね。私は正気よ――あ、もうまた来た」


 また足音が聞こえてきた。

 いったいテロリスト何人いるのだろう。

 殺したら殺した傍から補充されてくる。


『あのアマ! こいつでぶっ飛ばしてやる!!』


「あ、やば」


 厳ついドラムマガジン式、グレネードランチャーが見えて私は脱兎の如く逃げ出した。

 

 爆発に継ぐ爆発。

 私がいた場所が次々と吹き飛んでいってると思う。


『大丈夫ですか!? 生きてますか!?』


「あーくそ!! 私もう死んでんじゃないの!?」


『生きてますよ!? てか凄い爆発音しましたけど!?』


「グレネードランチャーで吹き飛ばされただけよ。大したことないわ」

 

 てか私まだ高校生よ?

 普通の女の子よ?

 殺すのにグレネードランチャーを使うって頭おかしいんじゃない?

 体中が痛む。

 実は腕が取れてたり、体の一部分なくなったりしてないわよね?

 

 風通しがよくなったビルのフロアで人影が近づいてくる。

 味方ではないだろう。

 私は立ち上がり拳銃を発砲した。 



 Side テロリストのリーダー


 私は仲間を連れ、人質をつれて屋上まで逃げ込んだ。

 上空にいる仲間のハインドで脱出するつもりだ。


 計画が狂ったのはあのイカれ女のせいだ。

 幸崎 ゆきこ。

 日本で起きた大小様々な大事件に関与し、裏社会では生きた伝説として存在が語られている。

 

 ヒーローではない。

 

 強力な能力を持っているわけでもない。

 

 だが彼女がいるとハリウッド映画のアクションムービーのような大惨事になって事件は解決するのだ。


 その噂が本当だと言う事を思い知りながらもビルから大金を積んで撤退――


 しようとした時、眼前で最後の希望を踏みにじるかのようにはハインドが上空で爆発して俺達のもとへ飛び込んできた。



 Side 幸崎 ゆきこ


 不意打ちでロケットランチャーでハインドを撃墜し、友達であり、パーティー主催者の西園寺 まりなを助け出す。

 そばにはテロリスト達が転がっていた。 


「だ、大丈夫ですか? ボロボロですけど?」


 ドレス姿のまりなちゃん。

 青髪のボブカットで小動物のような可愛らしさとお姫様のような気品も感じる。

 男受け良さそうで羨ましく思う。

 香水にも気合入れたのか硝煙に交じって心地よい匂いが漂っている。


「大丈夫じゃないわよ――ヘリに撃たれるわ、グレネードで吹き飛ばされるわ――ああでも私、ビルのレストラン爆破したりしたわ……今はそれよりも逃げましょ」


「うん――」


「おっと、お嬢さん。そうはいかない」


 テロリストのリーダー格だろうか。

 黒いスーツに髭面の外国人の男が拳銃を向けていた。


「動くな、動くと撃つぞ」


 そう言って拳銃を向けて来る。

 

「銃を下ろせ」


「分かったわ」


 私は素直に要求に応じた。

 銃のマガジンを抜き、拳銃内に残った一発で発砲。

 銃声が二発。

 相手の頭部に直撃。

 私は何処か撃たれたらしい。


「ゆきこちゃん!?」


「あっ、私撃たれちゃったのかしら?」


 ヘリにライトアップされる。

 自衛隊か、警察か、それともマスコミのヘリだろうか。

 テロリスト側ではないと思う。


「とうとう私も――年貢の納め時かしらね――」


「そんな事言わないでください!!」


 死ぬ時はこんなもんかしら――私は眠りについた。 



 =数日後・病院にて=


 私は病院に運ばれて治療を受けた。

 運が良かったのか、大事には至らなかったようだ。

 毎度の事だが友人達に泣かれて泣かれて申し訳ない気持ちになった。


 テロリストは全員逮捕か死亡。

 事件の全容解明の為に警察の取り調べを受けることになる。 

 私の経験則では今回も正当防衛による射殺が認めらるはずだ。

 と言うかこれで正当防衛が成り立たないなら色々と国として終わっている。

 

 治療費は全額、西園寺さんの家持ち。

 弁償も免除だ。

 

 色々と一安心である。


「どうしてまたこうなるのよ!? 私入院しても一息つけないの!?」


 病院の玄関に銃火器で武装したテロリストが車で突っ込んできてさあ大変。

 テロリストに病院が占拠された。


 そんな事知らずに、何時ものクセで携帯していたスタンガンでテロリストを制圧してしまい、銃器を奪い取って他のテロリストと激しい銃撃戦を繰り広げる。


 マスコミのヘリが流れ弾で墜落してその墜落に危うく巻き込まれて死にかけたり、駆けつけたパトカーがテロリストのロケット砲で吹き飛んだりしたが最終的に屋上でテロリストのリーダー格と人質を挟んで対峙し、リーダー格相手にヘッドショットを決めて人質を救出。


 その後、違う病院に移り精密検査することになったのでした。


 私やっぱり呪われてるのかしら―—

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