ペンギンの行方? あぁ、それならその辺の風に聞いた方が早いかもね。

 ニックネームやあだ名なんて、その人の持つイメージや好きなもの等だったり、あるいはまったく関係ない所だったり。しかし身体的特徴からイメージを引っ張ってくるというのはとても褒められたものではなく、当の本人が受ける精神的な苦痛にも配慮は必要というものです。敬意を込めての敬称略なら、まぁ……分からなくもない……? けれど、ペンギンと呼ばれた彼女がどう思っているのかは(周囲からペンギンと呼ばれているという事実を知っているのかということも含めて)非常に気になるところです。
 慣れとは実に怖いもので、「階段……え、また階段……しんどい……」が一年で「ほいほい~」位の感覚になれるなんて、なんとも恐ろしい。後述される七不思議に加えて欲しいくらいですね。……と言うのはさすがに過言ですが、もうここまで読まれたのであれば、「過」ぎ去った「言」葉ですので、お気になさらずにそのまま先へお進みください。
 そんな七不思議の一つに数えられるかくれんぼの会。え……かくれんぼの会自体がかくれんぼをしているんですか……? それなら、かくれんぼすらできないのでは……?
 (サークルだけに)どこかの空き教室にぽっかりと穴でも開いてて、その穴に飛び込んだらかくれんぼの会に行けるとか、そんな話でも……なさそうですね。
 そんな文字通りミステリーなサークルなのに、実態はちゃんとある……。色んな憶測が飛び交う中、そのサークルの中心、渦中にいる人物こそ冒頭の彼女(ペンギン)だった……ですと……。その格好はとても目立ち、それは学内でもレアキャラ扱いもされるのも納得といいますか……。そのステッキが「このゆびとまれ」の指のメタファーのように感じられてくるほどに、先の展開が気になりました。
 学生の本分は勉強! まったくもってその通りなんですが、遊びとのメリハリをつければ全く問題なし! というのは持論ですが、そんな中隣に座ってきたペンギン。
 なるほど……彼女自身もペンギンと呼ばれていることを知っていたのですね。なんというか、がらんとした教室の中、わざわざ私の隣に座ってきたのも、ボールペンを忘れていったのも、フミちゃんが言うように何らかの意図があると思わざるを得ませんね……。(意図だけに)そこに、かくれんぼの会につながる糸が伸びているかもしれませんし。
 そうして、始まったペンギン大捜索。すばしっこいのか、残像なのか。目撃情報やその目で見た数は多かれど、なかなかその尻尾をつかむことはできず。
 そんな中、迎えた転機。なんと……まるで置き土産のように、犯行現場にわざと足跡を残していく犯人のように。ボールペンを置いていくなんて……これは、ペンギンからの挑戦状なのでしょうか……?
 なるほど、かくれんぼの会とペンギンに因果関係はなく、それぞれが独立していると……確かに! かくれんぼの会のリーダー=ペンギン=ゴスロリステッキ女が一本の糸でつながる確たる証拠なんてないですね……。思い込み、刷り込み。先入観。自然の中に溶け込ませる不自然。……なんて考えを巡らせていたらなんと、ペンギンをついに捕獲ですと!?
 ペンギンの口(いや嘴と言うべきか)から語られる真相。……いや、これすらも真実なのかと疑ってかかるのは無粋でしょうか。ってΣ ゚Д゚≡( /)/エェッ! 自然に存在感を消せるなんて……そんな手品よりも手品みたいな芸当ができるなんて……手を変え品を変えどころか、手も品も変えないまま消えてしまいましたよ……。しかも、私にだけ見えているとは……。チャンネルや波長を合わせる、みたいな感覚に近いのでしょうか。おそらくですが、それは意識的に合わせようとしてできるものではなく、もともとの近しい感覚を持つ者同士、共感覚のような性質を持つ者同士でなければ感知しえないようなものなのではないかと思いました。私と、ペンギンにはそういった何らかの糸でつながっている。だから、ペンギンは私に接触してきたし、ボールペンもわざと残して自身を探させた、と考えると合点がいきますね。
 ペンギンの提案に私だけが乗り気だったことを考えるとやはり、先述したようなことの裏付けのようにも感じられますが、真相はペンギンにしか分かりえないことですので、あくまでも私個人の妄想ということで一つ。
 気配を消して、だれからも感知されず、関与されずひっそりと安住の地という名の空き教室に、ペンギンを含めて四人。どこにいるとも知れぬかくれんぼの会。
 空気に溶け込むように。あるいは、空気そのものになるように。その程度まで存在を薄めることができたなら。影がどんどんと薄まって、黒から灰色になって、灰色から透明になって、カメレオンのように風景に溶け込んだなら。それはもう、入部したも同然で。
 しかし、「もーいーかい?」「まーだだよ」の掛け声すらないかくれんぼ(の会)に於いて、己の存在を完全に消し去った彼ら彼女らを見つけようとする鬼もまた、隠れる側と同様に、限りなく自分の存在を薄めて消し去った鬼なのかと思うと、なんだか微笑ましく思えてしまうのは私だけでしょうか。類は友を呼ぶ。彼ら彼女らなら、あるいは鬼とすら友達になれるのかも知れませんね。