第2話 道場と組手


あれから5年、俺は12歳になった。

鏡で自分の胸を見る、Bカップぐらいにはなっただろうか?

男のふりをするにはサラシが必要だ。


召使の声が聞こえる


「十兵衛様、旦那様がお呼びです」


「分かった、今行く」


俺は胸にサラシを巻き、着物を着ると

お父様の所に向かった




お父様は真剣な目をして座って居た


「お父様、どうかしましたか?」


「ふむ、そろそろ頃合いかと思ってな」


頃合い?


「俺との修行だけじゃ、お前の成長にも限界があるだろう

 道場に通っていろいろな子と戦いながら、成長してもらおうと思ってな」


なるほど道場通いか

確かにそれは勉強になりそうだ。


「俺としてはぜひ望むところです、経験を積めますし。」


「そう言ってくれると思って居た、手配は出来ている。

 後は道場に通うだけだ、くれぐれも女バレはしないようにな」


「はい…」


十文字家の跡取りが女だとバレたら

大騒ぎだからな、バレないように気をつけないと




俺は道場の前にやって来た

ここは成人を迎える前の死者退治人が鍛える、道場。

俺もここで今日から揉まれる事になる。


「おーっす、新人さん?」


オレンジ髪ショートヘアーの美少女、でかい胸が目立つ


「はい、そうです。」


白のキャミソールを着て黒のミニスカートを履いている

年齢はおそらく14~15歳ぐらいだ、年上だろう。敬語を使うべきだ


「なんで敬語?私達同じ道場の仲間じゃん、タメでいいよ」


え?


「なに驚いてるの?」


「いや、こういう場面では敬語を使うのが普通だと思ったから」


美少女は笑った


「敬語なんて上司相手でもない限り使わないよ、私は上司にも使わないけど

 私は灯(あかり)だよ、よろしく」


「よろしく、灯さん」「さんはいらない」


「じゃあ、よろしく灯」


死者退治人界隈では年上に敬語を使わないのか

あるいは灯がフレンドリーなだけなのか

どっちだ?分からないな。




俺たちは道場で着替えをする。

俺は濃い白の肌着の下にサラシを巻いて

胸を目立たないようにしているが、じーっと見られるとバレるだろう


見られないように気をつけながら着替えないといけない。




道場で稽古が始まる

先生は黒髪セミロングの穏やかそうな先生だ。


「みなさん、今日は新しく入る門下生を紹介します

 十文字十兵衛さんです」


「十兵衛です、よろしくお願いします」


俺は礼儀正しく礼をした

それからぱっと道場を見渡す、男の方が多いのかと思ったが

男女半々ぐらい居る。


案外死者退治人を目指す女の子は多いのかもな。


「十文字って、あの名家の?」「死者退治の名家じゃない」


十文字の名は知られているようだ

有名なんだなうちの家


「名家か、けっ!!気に入らねぇ」


金髪ロングヘアーの門下生がそう呟いた




俺は道場で稽古する、稽古の内容は空手の道場と同じ。

拳の素振りに蹴りの素振り


呼吸法で霊力を全身にまわす修行もあったが、平々凡々な修行だった

よく言えば無理ない、悪く言えば、”甘い”だ、


「それでは最後に組手をして、終わりたいと思います」


最後に組手が行われるようだ。


金髪ロングヘアーの門下生が言った


「先生、俺とその名家の奴やらせろよ」


「剛田君、だが…」


「先生頼むよ、名家って奴がどれほどの強さなのか感じてみたいんだ。」


どう考えても、名家が気に食わないから絡むって感じだが。


「いいですよ、先生。組手、受けて立ちます。

 俺も修行を積んでいるんで、負ける気はないですから」


灯が止めた


「いいよ、あんなやつの組手受けなくて。危ないよ」


俺は笑った


「でも、逃げたら名家の名折れだしな。受けるしかない。」


剛田と言われた金髪ロングは灯を指さした


「あんなやつ呼ばわりしたんだ、名家を片付けたら次はお前だ。」


灯はあっかんべーした


「こいつ…」


とりあえず剛田は高校生ぐらいに見える

敬語で接するべきだろうか?


「剛田さん、よろしくお願いしますね。」


「敬語なんて使って、気取ってるつもりか?」


…やはり鬼退治界隈では、年上に敬語が常識ではないようだ

なら接し方を変えよう


「気取ってるつもりだって言ったら、どうする?剛田」


「ぶっ潰す」


先生は言った


「それでは組手開始!!」


剛田は霊力を手足に纏う。

そして猛攻撃を仕掛けて来る。


「オラオラオラオラ!!

  どうだ、どうだ俺の攻撃は」


俺は霊力を手足に纏いつつ、その攻撃をすべて受け払う


「とろいな、その程度なのか?」


あまりにも遅すぎる

お父様と比べると月とすっぽんだ。


「この野郎!!」


剛田は思いっきり顔面に、右ストレートを打ち込んで来ようとする。

俺はしゃがんで。


あえて霊力を外して腹パンした

霊力を外さないと、剛田を殺してしまいかねないから。


「ごほっ!!」


剛田は一撃で座り込む


「これが名家の力、お父さまの教育のたまものだ。覚えておけ」


「く、そ…」


灯の声が聞こえた


「やるじゃん、剛田を圧倒するなんて」


そう言う灯も、対戦相手を瞬殺したようだ


「…相手が弱すぎただけだ」


「剛田はここで言う中堅ぐらいの強さなんだけどね」


あのレベルで中堅か?

この道場のレベルもたいしたことないのかもな


ここで修行になるのか?お父様と2人の修業の方が成果が出る気がする。

俺はこの道場に来るべきじゃなかったのかもしれないな

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