魔法少女と付き合ってみた【短編版】

桜井正宗

魔法少女と付き合ってみた

 この世にバケモノが存在した。

 俺は今、ゴーレムのような“影”に襲われていた。


 ……ナンダ、アレハ。


 こんな物体は見た事がない。

 ただ俺は家に帰ろうとしていただけなのに。


 大きな影は俺を狙い、襲い掛かってきた。



 あ……死んだ。そう思った。



「…………!」



 けれど、影は突然真っ二つに裂けてちりとなった。なにが起きたのか分からなかった。

 縦に半分となった影の間に少女の姿があった。


 え……あの顔。見た事がある。

 でも、なんだ……あの魔法少女のような姿。


 とても可愛らしかった。


 ピンクのドレスような煌びやかな服。フリフリのリボン。それと特徴的な杖――じゃなくて、ピッケル。え……ピッケルぅ!?

 あの雪山とかで使う道具だ。

 魔法の杖じゃないのかな。



「あの、大丈夫ですか」



 少女は俺を気遣ってくれた。



「ああ、ありがとう。姫川ひめかわ 万穂まほさん」

「うん……って、わたしのこと分かるの!?」


「同じクラスじゃないか」

「そうだけど、わたしの素顔は魔力で隠されているはずなんだけどな……ミスったか」


 なんだかよく分からないが、本当は正体が分からないらしい。でも、俺にはハッキリと分かった。彼女が同じクラスの姫川さんだと。


 ・

 ・

 ・


 そして、次の日。



 俺はなぜか姫川さんと付き合うことになった。



「なんで俺と?」

「わたしの正体を知っているのはキミだけだから。バラされない為にも彼氏になってもらうしかないじゃん」


「なるほどね」



 妙に納得する俺。

 でも、現役の魔法少女と付き合えるとか……なんだか新鮮というか、面白いと思った。 まさかこの世界に魔法少女だとか魔物だとか実在するだなんて、思いもしなかった。



 けど、姫川さんはあんまり魔法少女の活動について詳しく教えてくれなかった。巻き込みたくないからだという。

 いや、もう巻き込まれている気が。


 でもいい、俺は彼女が気になった。

 これからじっくり知ればいい。



 一週間もすると彼女との距離感もかなり縮まった。

 俺は相変わらず、裏でサポートするくらいしか出来ないが、魔法少女である万穂を癒すことでお互いに信頼できる仲になっていた。



「いつもありがとね、宗明」

「いいんだよ。万穂の方が大変だろうし」

「ごめんね。わたしには使命があるから」

「いや、魔法少女である万穂を支えられるなら、俺はなんだってするよ」


「うん。今日は疲れたから休む! だから、いっぱい甘やかして!」

「了解した」



 万穂と抱き合い、イチャイチャする。それだけで彼女は満足してくれた。これからも俺は万穂を支える。支え続ける。


 魔法少女・万穂を。

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