パンの国の王様

野松 彦秋

第1話

きょうは、サンタクロースのともだち、ホットケーキ王のおはなしです。


むかし、むかし、一人の王様おうさまがおりました。王様の名前なまえは、ホットケーキ1いっせい

王様のお父さんが、ホットケーキが大好きぎて、自分の息子にホットケーキと名付けてしまいました。

ただ、ホットケーキと息子むすこ名前なまえを呼ぶと、王様の家来けらいが間違ってホットケーキを作り始め、っててしまうので、困った王様のおとうさんは、息子ホットケーキの後ろに1世と付け加えました。

だから、王様の名前は、ホットケーキ1世となったのでした。


ホットケーキ(一世)王は、なまもので又食べる事が大好きな王様でした。朝、起きると、王様は枕元にある鈴をならします。『ちり~ん。』と一回。

そうすると、王様の家来がタオルとお湯を持って来てくれるのです。王様は其れを使って顔を洗います。

顔を洗うと、王様は鈴をもう一度鳴いちどならします。『ちり~ん、ちり~ん。』と2回。

今度は、王様の別の家来が、朝ごはんを持ってきます。

今日は、サンドイッチとコンポタージュ。あと美味おいしいサラダです。アイスクリームもついてます。

王様は食べ終わると、またすずを鳴らします。『ちり~ん、ちり~ん、ちり~ん』と3回。

王様の着る服を持った家来けらいがやってきて、王様にわたします。

何時いつものようにベッドで寝巻ねまきいで、ふくを着る王様。『つかれた・・ふくるのは疲れるなあ。』と言うのが王様の毎日の習慣でした。

着替えのあと、王様はベットに又入り、すずを4回鳴らします。

今度は、仕事しごと書類しょるいやまほどもった家来たちが、王様の部屋へやに次々と入ってきます。

『おはようございます、王様、今日も見ていただかなければいけない書類がこんなにあります。宜しくお願い致します。』と家来は、ベットにりかかって半身はんしんを起こしている王様の前に王様の専用机せんようづくえき、その上に書類しょるいをドサァ~と置く。その書類を面倒くさそうに、一枚一枚目を通す、王様。

書類を見るのが飽きた王様は、今度は両手を合わせて、手を1かいたたく。『ピシャ!!』

家来がオレンジジュースを持ってくる。又手を2回叩く。『パン、パン!!』今度が家来がショートケーキを持ってくる。


鈴の音と、手を叩く音で、家来がしなければならない事が決まっていた。

だから、王様はほとんどベットから出ず、生活をしていた。運動をほとんどしない王様はどんどん肥っていった。50㎏、60、70、80、90、気がつけば100㎏も越えてしまい、王様はおデブちゃんになっていた。


ふとるとドンドンうごく事が大変になり、ますます怠けた生活をする様になった王様は、病気にかかってしまった。その病気びょうきは、何を食べても美味しくないという病気でした。

あんなに好きだったチョコレートも、ポテトチップス、ステーキ、エビフライ、カレーライス、食べても美味しいとは思わなくなってしまいました。


困ったホットケーキ(1世)王は、町中のお医者を呼び、自分を治してほしいとお願いをしたが、どんな注射ちゅうしゃを打っても、どんなくすりを飲んでも治りませんでした。


困った王様の家来、パフェ大臣だいじんは国で一番長生きをしていてる仙人の元へ王様の病気を治す方法が無いかと聞きに行ったのです。


どら焼き仙人は、150歳で国で一番の物知りです。昔、どら焼き仙人は若い時に魔法使いの弟子だったので魔法も少し使える、ちょっと怖いおじいさんでした。


『どら焼き仙人、どうか、王様の病気を治してください。もし、王様の病気を治してくれたら、王様はアナタに好きな物を与えると約束しております。又、何でもするといっております!!。』

『ほう何でもか、・・・それはいいのう。では、この契約書にサインを、王様にサインをする様に言って下され、その契約書けいやくしょ魔法まほうの契約書でね。もし、ウソをついたら、呪いがかかり、一生いっしょうが見えなくなるから、よく読んで、覚悟を決めてサインをしてくれと王様にお伝えくだされ。』と言って、魔法の契約書を渡した。


パフェ大臣は、急いで、お城に帰り、王様に仙人の言った事を伝えようとした。

『王様、どら焼き仙人が言うには、この魔法の契約書にサインをすると、病気を治してくれるそうです。それと・・・』とパフェ大臣が言ったらすぐに、王様はベットから起き上り、『何だって、どの契約書じゃ、直ぐにサインするぞ、これか、これにサインすれば、あの美味しい味が帰ってくるのか、する、する、サインなんぞ、一つや二つ、どれじゃ、早く出すのじゃ!!』と、興奮しながらパフェ大臣に契約書を出す様に命令をする。


パフェ大臣は、説明を半分しかしていなかったけれど、王様の迫力に負け、直ぐに魔法の契約書を出してしまった。契約書を王様に渡した大臣は、もう半分の説明をしようとする。

『もし、契約書の約束を王様が破った場合は、王様の目が・・・・。』と言った時には、ホットケーキ王は、既に契約書の名前を書く欄に名前を書いてしまったのである。

名前を書き終わった後、『約束を破ったら、ワシの目がどうした~??。ウウン?』と大臣に聞き、同時に契約書の約束の内容を読む王様。

『見えなくなってしまいますぅ!!』とパフェ大臣が、言いきると、『誰の目が見えなくなるのじゃ、誰の?。』と聞き逃した最初の言葉を聞き返す王様。

『王様の・・・目です。』と青ざめた顔で王様の顔を見る。


『・・・何でそれを先に言わんのか!!。』と怒る王様。『言っている内に、王様がサインしちゃったんですよぅ~。』となみだを流しながら弁明する大臣。


暫く、茫然とする二人。口をパクパクしているホットケーキ王を横目に、パフェ大臣は契約書の内容に急いで目を通す。

『毎晩、王様の夢に、どらき仙人が参り、一軒いっけんの子供の家の住所を教えるそうです、王様はその教えられた家に、必ず美味しいパンを届けなければならない。その約束を破ったら、王様の目は見えなくなるそうです。そう書いております。国中の子供達にパンを贈った日に、王様の病気は治りますとも、書いております。』とパフェ大臣は大きい声で王様が伝えた。


『こうなったら、やるしか道はございません。王様、このパフェも手伝いますので、一緒にこの契約書の約束を果たしましょう!!。』

『面倒くさいが、目が見えなくなるのも嫌じゃ!!!仕方が無い。大臣、ワシも頑張るから、助けてくれぃ。』と言い、二人は共に頑張る事を誓ったのでした。


その日の夜、約束通り、王様の夢にどら焼き仙人が現れました。

『王様、この度は良きご判断をされましたね。わが国には、貧しくパンを食べれない子供もたくさんおります。その子供たちに、美味しいパンを届けて下され、ワシはこれから毎晩貴方様の夢に来ます。その時は、翌日届ける子供の住んでいるところ、パンの必要な数を教えます。そして、王様がその日、パンを届けた子供がどんな顔をして王様のパンを食べたかを見せまする。王様の国の子供たち全員が、王様のパンを食べれたら、約束どおり、王様の病気を治して進ぜよう・・・それでは、最初の子供の住んでいるところと、必要なパンの数です~~。』と依頼を言ってどら焼き仙人は去っていったのである。


夢が覚めると、既に朝になっていた。

王様は、直ぐに鈴をならし、パフェ大臣を呼ぶ。『大臣、バターロールを5個、フランスパンを2個、出来次第、南町の4番地に住むセバスチャンという子供に届けるぞ!!急いでコックに言って作ってもらえ!!。』と命令を出す。

ホットケーキ王も、ベットから飛び起き、お風呂に入る。洋服を選ぶ。何時も来ている王様の服ではなく、動きやすい服はどれかと考えながら、王様は服を選ぶ。

朝ごはんを食べ、パンを届ける時間までに急いで王様の普段の仕事をこなす。

やっと仕事が終わったかと思うと、パフェ大臣が部屋に入ってきて、『王様、届けるパンが出来ました!!。』と部屋に急いで入って来た。

大臣が馬車を運転し、王様はパンを持って二人で、依頼のあった子供の家に届けたのでした。


王様が直接パンを渡すと、子供が驚いてしまうという事で、パンが入った籠に、王様の言葉が書かれた紙と、王様が届けさせたことが分かる様に、パンを入れた籠には王様の家の紋章がつけられていた。


急いで何時もの仕事をして、その後パンを届けたので、王様はその日直ぐに寝てしまった。

寝ると、どら焼き仙人が現れ、その日届けたパンを美味しそうに食べるセバスチャン少年とその家族の様子を見せてくれた。王様は、セバスチャン少年が美味しそうに食べるパンがとても美味しそうに見えた。

翌日、夢でみたパンが忘れられず、王様は同じパンを朝ごはんに食べた。

味は、変わらなかった。まだまだ、病気が治るには早すぎるのかと思いながらそれでも全部食べた。


次の日も、依頼された子供の家に、パフェ大臣と共に届ける。そんな生活を1年、2年、3年と続けた。

王様は、最初、忙しい生活が面倒くさくて大変だったのだけど、だんだん夢で見れる食べてくれた人の笑顔が嬉しくなり、パンを届けるのが面倒くさくなくなっていった。

肥っていた体重も、100㎏、90㎏、80㎏、とだんだん減っていった。


パンを届ける事が嬉しくなった王様には、大きな変化があった。昔の様に食事が美味しくなったのである。

ただ、昔の様に美味しいものを一杯食べなくなっていった。食べ物を感謝して食べる様になり、無駄に食べなくなったのである。王様は、食べ物に感謝するようになると、総ての食べ物が好きになり、何を食べても美味しくなった。性格も昔よりもとても優しくなった。


パンを届ける仕事をするうちに、王様とパフェ大臣は仲よくなり、やがて二人は愛し合うようになっていた。そして二人は結婚したのである。


10年後、どら焼き仙人が夢の中で、王様に告げる。

『明日が、パンを届ける最後の日じゃ。王様、貴方は立派な王になられた。よく10年間、頑張られた。』

『王様は、この10年間、忙しい中、毎日パンを国中の子供達に届けてくれた。ワシは嬉しい。貴方は良い王様だ。貴方の身体も健康になり、もう目が悪くなることもないので安心して欲しい。』とどら焼き仙人はいった。

『いえいえ、この10年間、あっという間でした。笑顔になってくれる子供達の笑顔が、私に食べ物に感謝する気持ちを思い出させてくれて、そのお蔭で美味しいという感覚が元に戻りました。』

『こちらこそ、病気を治してくれて有難うございました。!』と王様はどら焼き仙人はお礼を言ったのでした。


『それで・・・じゃ、王様、つかぬ事をお聞きするが、12月24日の日の夜、ちと頼みたい事が有るのじゃが、ワシの仕事を手伝って欲しいのだが、クリスマスのプレゼントを世界中の子供達に届けなければならないのじゃ、駄目かのう??』

『パンを届ける姿を見てきて、其方になら頼めると思っているのだが、どうですかな!』

『喜んでお手伝い致しますよ。我が国の大臣であり、我が妻パフェも手伝えると思います。』

『有難い、其方達二人とも、ワシのかけがえのない友達じゃ。どら焼き仙人こと、このサンタクロース心からお礼申し上げる!」と言った後、どら焼き仙人は、自分の白いアゴヒゲを触りながら、『では、この国の総ての子供達は、貴方たち二人に任せようと言って、二人が使う魔法の袋を二つ渡した。

欲しいおもちゃを念じて袋に手を入れると子供達が欲しがるオモチャが出てくる魔法の袋である。


目覚めると、枕元には魔法の袋が二つ。隣には、幸せそうな寝息を立てるパフェ王妃。

王様は、パフェ王妃の耳元で、鈴を鳴らす。『ちり~ん。』『フランスパン2個、メロンパン3個ですぞ、大臣、起きなされ!!。』


パンの国の王様は、国に大きなパン学校を立てました。入学するのには、お金が必要ありません。

王様の届けたパンが入っていた籠を持ってる人、全てが入る権利を持っていました。

その国は、やがてパンが美味しい国として世界中で有名な国になりました。


そして、内緒ですが、王様と王妃様はサンタクロースの友達で、クリスマスはサンタクロースのお手伝いをしております。読んでくれたアナタにだけお伝えしますね。

めでたし、めでたし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パンの国の王様 野松 彦秋 @koneri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る