サイコパスおじさんと謎の美女

小森シオ

サイコパスおじさんと謎の美女

 俺こと西古渡は人の死を見ても心が痛まない。恐怖だって感じない。むしろ優越感すら抱いてしまう。自分が異常だということは理解している。そして、俺は今日もオンラインRPGで他のプレイヤーをプレイヤーキル。つまり殺しまくっていた。


「ははは。死ねや。ゴミが! ははははは♪」


 今日はなんとなく女を殺したい気分だったので、女性プレイヤーばかり殺している。最高レベルまで鍛え上げられた俺のアバターに勝てるやつなどそうそういない。


 そして、次の女プレイヤーを殺そうとした時に、なんとチャットで命乞いをされた。


『おねがいします。なんでもしますからキルしないでください。今日アイテムを課金したばかりなんです』


 なんだよ、この女。アイテムを課金したばかりとか、むしろ格好の餌食じゃないか。だってキルした相手の一部のレアアイテムはドロップする。つまりキルしたらその女の課金アイテムは俺のものというわけだ。つまり殺すメリットしかないのだ。


 しかし、女プレイヤーはとんでもないことを言ってきやがった。


『フレンドでもなんでもなりますし、もしよろしければ結婚だってしてもいいです。だから殺さないでください』

「何! 結婚だと!」


 この女の言った結婚というのはネトゲの中での結婚だ。つまりアイテムの共有や、プライベートルームでちょっとセンシティブなことなんかもできたりする。つまりゲーム内でこの女の肉体を自由にできるのだ。


 なんとなくメリットしかないと思った俺はキルするのをやめて、女に結婚の申し出を送った。するとむこうは三秒で承諾のメッセージを送ってきやがった。


 これで俺もゲーム内では妻子持ちというわけだ。俺はなんとなく女のアバターをまじまじと見つめる。桃色の髪をしたロリ巨乳の美少女だ。俺はなんとなくこの女を好きにしたい欲望で溢れてきた。とにかくまずは挨拶だ。俺は女にメッセージを送った。


『結婚の承諾をしてくれてありがとう。それでいつやるの?』


 すると秒で女からチャットが返ってきた。


『はぁ。単純な人。そっち目的で私を殺さなかったのですね。わかりました。いいですよ。どうせならリアルで会いませんか? そういうことするなら生身の方が楽しいでしょう?』


 どうやらこの女はクソビッチのようだ。現実世界の女を抱いたことなどないが、この女は尻が軽そうだし、やるだけやって捨ててやろう。ガキができても責任なんて取らなくてもいいや。


 俺は女にすぐにチャットを送った。


『いいぜ。リアルで会おう』


 俺のチャットからまた数秒も経たないうちに、チャットが返ってきた。


『わかりました。ではこれがわたしのジョインIDです』


 俺はすぐさまジョインを起動してID登録を行った。女の名前は桜庭桜とかいう変わった名前だ。まるで少女漫画のヒロインみたいな名前だと思った。どうせ偽名だろう。ID登録が終わったあと、俺はすぐにゲーム画面に視線を移して女にメッセージを送った。


『登録したぜ。じゃあ明日二連休だし。さっそくリアルで会うか!』

『はい。ではそろそろログアウトしますね』

『おう。お疲れ』


 その後、俺たちはすぐさまパーティーを解散してジョインで色々メッセージのやり取りをした。自撮り画像なんかも見せ合ったが、向こうの女は黒髪清楚な美人と言った感じで、デブで冴えない俺とは釣り合いそうもない。向こうは俺の写真を見て引くかと思ったが、恰幅が良くて男らしいなどと適当なお世辞を言っていた。


 たぶんこの女はこんな清楚な見た目してクソビッチに違いない。きっと俺みたいなモテなさそうなチェリー親父を食いまくって遊んでいる変態女なのだ。


 そうとわかれば明日のベッドの上ではせいぜいわからせてやってもいいだろう。サイコパスの超ドSプレイでひんひん泣かせて後悔させてやるぜ。


 そのあと、女はサービスとか言って下着姿の写真を送ってきた。着やせしているが、けっこういい身体をしている。明日は色々と楽しめそうだ。抜きたい気持ちもあったが、明日のデートのためぐっと堪えて蒸らしておくことにした。


 翌朝。駅前の時計台で俺は桜を待っていた。すると、桜はすぐにやってきた。今日はミニスカートを履いており、小柄ながらもムチムチなふとももが露わになっており、俺の下半身は少し反応した。


 そして、桜は俺の姿を見つけるなり、すぐさまこう言った。


「こんにちは。リアルでお会いするのは初めてですね。渡さん」


 いきなり下の名前呼びにこいつのビッチさが見え隠れしていてちょっと腹が立った。俺はすぐさま本題を口にした。


「んなこたぁどうでもいいだろう。それより早くラブホ行こうぜ。お前が昨日変な画像送ってきたからこちとらもう我慢の限界なんだ」


 桜は俺の少し盛り上がった下半身を見てクスクスと笑ってから、俺の腕に抱き着いて胸を当てながら色っぽく耳元で囁いた。


「いいですよ。じゃあ私の家に行きましょうか。一人暮らしなので二日間好きなだけいちゃいちゃできますよ? ふふふ……」


 こいつ絶対わざとからかってやがる。こっちが童貞だからってバカにしやがって、あとでぜってぇわからせてやる。


 俺はちょっと切れ気味に彼女に思い切った発言をした。


「おい。てめぇ。俺のハートに火をつけたんだ。言っとくが手加減しないからな!」

「はい。よろしくお願いします。渡さん♪」


 俺たちは歩きで彼女の家まで向かった。どうやら駅の近くにあるらしく、けっこう豪華な家だった。これで一人暮らしとか、こいつもしかして成功者なのか。


 俺は彼女の家に上がる。女の家に上がるなんて生まれて初めてだ。しかも、そこはかとなくいい匂いがする。


「じゃあ。渡さん。する前にまずはお酒飲んでからしませんか? その方が気持ちいいでしょう?」


 確かに酔ってしたほうが楽しそうではある。俺は桜の言う通り酒を一杯貰うことにした。


「ああ。頼む」

「じゃあ。スマホでも見て待っていてください」

「おう!」


 桜は冷蔵庫に向かっていったので、俺はすかさず彼女の部屋を見渡した。なんとなく質素な雰囲気がする。物もあまり置かれていない。しかし、部屋干ししていたのか、彼女の下着があってそれを見て興奮を隠せなかった。まさかストライプ柄の下着を履いているなんて、オタク女だと思ったが、コスプレとかするのだろうか。


 俺がまじまじと桜の下着を見ていると、すぐに桜は酒を持って俺の前に現れた。


「もう。なに人の下着じろじろ見ているのですか。恥ずかしいからやめてください」

「うっ……。すまん」


 これは失敗した。やる前から引かれたら、本番のときに支障が出かねない。まあ。このあと色々酷いことをしてやるつもりなので、気にする必要はないかもしれないが。そして、桜は俺に酒を渡した。


「さあ。お酒淹れましたので飲んでください」

「おう。じゃあ。いただきます」


 俺は勢いよく酒を飲みほした。けっこう強い酒だったのか、ちょっと頭がくらくらしてきた。


「あ、あれ……?」


 その途端、俺は気を失った。


 ☆☆☆


 目を覚ますと、俺はベッドに縛り付けられていた。どうやら服も脱がされてパン一になっているらしい。


 そして、桜が俺の方を見ると、彼女の下着姿で舌なめずりをしていた。俺は動揺を隠せず桜に質問を投げかけた。


「どういうことだ。桜。どうして俺を縛る。どうしてこんなことをする」


 すると桜ははっきりとこう答えた。


「そんなの渡さんを監禁して何年もかけて嬲り殺すためですよ。わたしリアルプレイヤーキルが趣味なんですよ。これからたっぷり可愛がってメタメタに殺してあげますからね。あっはっはっはっは♪」


 その瞬間、俺は本物のサイコパスに出会ったことで、生まれて初めて恐怖と言う感情を抱いた。

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サイコパスおじさんと謎の美女 小森シオ @yumedayume89

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