第22話 俺は絶対
「……だから、私は」
大切な人を失った私に、もう二度と手放したくない家族が出来てしまった。彼を守るために紅摩学園に入学し、日々を皆と一緒に過ごすように努めてる今も、あの日から私を苛む不安は一向に消えてくれない。
「……死にたくない、死んでほしくない」
思念暴発により曖昧になっていく自我の中、私が抱く『欲望』は未だに確かな形を保っている。
「もう誰も、死なないで」
せめて真の願いだけは叶う様に、嘘偽りのない本心を言の葉に乗せる。昔のように嘘が真にならないように、霧散していく祈りの形を必死に保ち続ける。
「大丈夫だよ、薫」
「え……?」
身体の感覚なんてとっくに失ったと思ってたのに、それにここには私以外誰もいないと思ってたのに。私の手を握る確かな温もり、馴染み深い男の子の語り掛けてくる声が私の五感を呼び戻す。
「俺は絶対、死なないから」
いつものはったりなのか、それとも彼自身が確信している未来を現す言葉なのか。男の子の微笑みは深層心理の暗闇を瞬く間に晴らしていき、目の前には陽の光が降り注ぐ森林地区の野原が広がった。
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