第1話




「部活決めた?」


昼休みに入り、親友がいるクラスに向かう。

やっと中学校生活に慣れてきたけど、肝心なのは3年間続けられそうな部活に入ること。


「いやまだ悩んでるんだよねー…バレーか吹奏楽か」

「あー…でもバレーは入る人少なそうだからレギュラー狙えるんじゃない?」

「んー…」


私の親友・通称いっちゃんは小学生の頃はバレーをしていた。なので、そのまま続けるか、音楽に方向転換するかで結構悩んでるらしい。

そもそもうちの学校は部活のバリエーションが少なすぎるので、運動が苦手な生徒の逃げ場は吹奏楽部か帰宅部しかないというのが難点。


「まぁ部活見学は来週まであるし、ゆっくり決めるよ」

「うんうん、そうしよ」

「…てか会った?ゆいちゃんが振られた人」


その一言だけでもピンときてしまう。

私が人生初で誰かに告白して、人生初で誰かに振られたという苦い思い出。


「まだだけど…でももう未練はないよ」

「ほんとかなぁ?ここ最近恋愛してないのってその人を諦めきれてないからじゃないの?」


ニヤニヤと妖しい笑みを浮かべるいっちゃん。


「ほんとだってば…第一、1年も経ってたら相手だって忘れてるでしょ」

「わかんないよ?2回目だったらいけるかも!当たって砕けるのさ!」

「なんでいけそうなのに当たって砕ける前提なんだよ…」


相手に彼女がいたりして面倒くさいことになったら嫌だし…

中学校は勉強と部活に専念するって決めたし!


「えーでもあんまモテる人じゃないじゃん?身長ちっちゃいし」

「いやいや、成長期なんだから1年も経てば───」

「…ねぇ、あの人じゃないの?」


そんな…漫画じゃないんだからちょうどそこに本人がいたなんてあるわけ───

…いた!?

1年前と変わらず可愛らしい顔に黒渕の眼鏡。優等生っぽい見た目に穏やかな笑顔。友達と微笑み合ってるその姿は、まるで天使。

面影は結構残ってる…けど、身長めっちゃ伸びてない!?あの頃は私の方が高かったのに!?


「…な、尚正s…」


呼ぼうとしてやめた。

だって、振った相手に話しかけられるなんて…そんなの気まずすぎるだろうし。

溢れた気持ちも、ずっと言いたかった言葉も。全部…全部無視した。



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