いろいろアプリの詳細
ログハウスから異世界のテントに戻ってきて、異世界生活三日目。実質的に言えば二日目にも満たないんだけど、気分で言えば三日経ったので三日目だ。
夏瓜はバーベキュー中にアップデートしてもらったタブレットをよくよくと読み込んでいた。
「カーバンクル、見たやつと一緒の魔物だ。額の宝石は高く売れる……か」
タブレットに追加されたアプリは『魔物図鑑』。その名の通り魔物のことが書かれた図鑑だ。ちなみに出会った魔物は無料で情報開示できる。まだ出会っていない魔物は、管理アプリの方で受け取れるSP(サーチポイント)を使用することで情報開示できるらしい。
これから管理アプリを触ろうと思いつつ、昨日ホルに言われたことを思い出す。
『魔物と出会ったとき、まだ君は対抗手段を持っていない。だから護衛をつけようと思うよ』
『護衛ですか?』
『うん、そう。知り合いに聞いてみるから。受けてくれる人はいると思うけど……一週間ぐらいは結界の外に出ないでジッとしててね』
『はぁ』
『あと、魔物に出会ったときの対処法として魔物図鑑を贈呈しちゃおう』
そう言って取り出されたのは一冊の分厚い本。
それを見た夏瓜は『これはタブレットに入ってないんですね……』と口から漏らす。そしたらムッとしたホルが夏瓜にタブレットを貸してと言った。
『なにするんですか?』
『何ってアプリ化させるんだよ』
ホルは夏瓜のタブレットを持つと、画面部分に本の角を押し付けた。すると何ということだろう、本がスルスルと中に入っていった。
『わ、すごい』
『ふう。これでアプリが追加された。……次からは直接ダウンロードした方が楽だな』
ホルは独り言のように言う。
意外と神様でも疲れることはあるんだなと考えたことを思い出して、夏瓜はふふと笑った。
魔物図鑑の概要は見たので、次は管理アプリを開いてみた。
管理アプリを大まかに三つに分けるとすると、『建築』『植物』『ポイントサービス』に分かれる。まず『建築』、『植物』は選択した物をパパっと生み出す機能。どうぶ〇の森のカタログみたいなものだ。カタログと違って必要なのはお金じゃなくてSPだった。
次に『ポイントサービス』。これは簡単で、SPの集め方やポイント取得履歴が載っているらしい。SPはデイリーミッションをクリアすると貰えるそうで、『ポイントサービス』にはデイリーミッションも載っていた。
「なになに、スプーンを作る。草刈りをする。一万歩
クリアしたのは一番下にあった。
大体五、六個のミッションがある様子。今度は取得履歴を見てみた。すると少しだけクリアしているようで、今のSPは1200となっている。ちょっと面白そうだ。
「さっそくSPを使ってみようかな」
お試しで、と言いながら『建築』の画面をスクロールする。
見たところ最低が500SPの木箱、最高だと城や屋敷なんかも作れるそう。ダンジョン内だし、絶対に要らないなと思いつつケチって木箱を押してみた。
「ぽちっとな」
言いたい気分だったので言ってみる。
そしたら夏瓜の目の前……ミニテーブルの上に七十センチメートルくらいの木箱が出てきた。思ったよりも小さい。けど
少し残念な結果だったなと思いつつテントの周りの雑草をぶちぶちと抜く。雑草は気を抜いたらすぐ生えてくるもんだから、こまめに抜かなければいけない。
そんなことをしているとすぐに日が暮れてくる。
風呂小屋に向かうとサッとシャワーを浴びて湯船に浸かった。この水の発生源は謎でしかないけど、おかげで水は無限だから助かっている。まあいくら冷たくしても温い水しかでないのが欠点か。
ちなみにトイレも水洗の洋式トイレ。ちゃんと綺麗なもので嬉しいがこちらも汚物がどこに流れるか不明。公衆トイレなだけあって男女あるけど今のところ男性の方の必要性は皆無。
「まぁ風呂もトイレも綺麗が保たれるからいいかなぁ」
そんなことを言いながら、就寝の準備をする。
テントは良いやつなので天井から空が見える。夜の空は異世界でも綺麗なことには変わりない。たまに赤い流星が流れたりするのを見ると異世界だなって思うけど。
でも地下奥深くなんだよなぁと不思議に思う。……もしかしたらオーナーに騙されているのかもしれない、と思いつつ目をつむった。
❋
大体一週間くらいが経った。毎日デイリーを行っているけど、食べ物確保のために『植物』で野菜とか果物を毎日のように交換していたら一日の終わりにはいつも500SPぐらいしか残らなかった。それでも減る一方ではないのが助かっている。それもこれも、夏瓜がSPを増やすために頑張った賜物だった。
それから、何度かオーナー宅にご飯を
次にオーナーは優しさをあまり持ち合わせてないってこと。数回集ったところで「異世界行った意味ある?」と笑顔で拒否された。おのれ、千世さんがいないからそんなこと言いだして……と考えたけど食費の事とか考慮したら自分が悪いと反省。オーナーは自分の意思を伝えれるちゃんとした人でした。
お詫びに家事代行をして、とても喜ばれた。薪割りとか沢山したから肩と腰が痛いのなんの。まあ全面的に自分が図々しかったので喜んで引き受けた。
そんなわけで、異世界生活にも慣れてきたころ。まあ肉が食べたいから日本のスーパーにでも行こうかな(たぶん行けるはずだ)と考えて、さぁ動こうと思った瞬間。
夏瓜の目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。
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