掃除代行人、シンデレラ

星野 ラベンダー

掃除代行人、シンデレラ

 昔々。あるところに、小さな国がありました。その国の王子様は、非の打ち所がない完璧な方と言われていました。お顔が綺麗で、頭が良くて礼儀正しく、馬術や剣術、弓術も上手で、更にとても優しいのです。そんな王子様は町の人達から大変な人気者で、憧れの的でした。


 ところが、王子様は実は「完璧」ではありませんでした。というのも、ある「欠点」があったからです。


「ああ~どうしよう……」


 真っ白なお城の中の、とある一室。広々とした寝室に、広々とした続き部屋。バスルームや洗面所までついているこの豪華な部屋は、王子様の自室です。自分の部屋の中心で、王子様はすっかり頭を抱えていました。そんな王子様の周りを囲むのは……。


 物、物、物。足の踏み場もないほどの、物の数々。脱ぎっぱなしの服、床に置きっぱなしの剣や弓、ごちゃごちゃに積まれた本、何種類もある散らばったチェスの駒、贈り物の箱やリボンからただの紙切れなど、他にもあらゆる「物」が膝くらいの高さまで積み上がり、部屋を埋め尽くしています。もう一つの部屋も、バスルームも、同じような惨状です。


 そう、この国の王子様は「お片付け」が大の苦手だったのです。


当然、使用人は王子様の部屋を何度も何度も掃除しようと試みました。しかし王子様は、部屋を片付けられるのがとても嫌でした。


 王子様の「欠点」を知る数少ないお城の人達は、王子様の部屋にあるものを「ゴミ」と言います。しかし王子様にとってみれば、自分の部屋にはゴミなど一つもないのです。みんな必要で大切で、取っておきたい「宝物」なのです。だからそんな宝物を捨てようとするなんて絶対に許しませんし、掃除なんてもっての外なのです。


 王子様なので、一つも捨てるなと命ずれば、使用人は従うしかありません。なの、掃除が行き届いたお城の中でただ一つ、王子様の部屋だけ汚れに汚れまくっていました。


 しかし、ずっと片付けをしたくないという我が儘を通してきた王子様ですが、いつまでも通用するわけではありません。先日、ついに王様とお妃様がかんかんに怒りました。三日以内に部屋のゴミを捨てて綺麗にしなければ、問答無用で部屋にあるものを全て燃やすと言い放ったのです。


 王様もお妃様も何度も厳しく叱ってきましたが、今回は今までの比ではないほどの怒り狂ったさまを見せました。王様とお妃様の部屋に、王子様の部屋からやって来たとみて間違いない、黒色の害虫が現れたからです。


 両親が揃って末恐ろしい姿を見せたことと、全部燃やされてしまっては大変だということで、王子様は渋々、部屋の片付けを了承しました。


 けれど、王子様は掃除を今まで一度もしたことがありません。どうすれば部屋が片付くか、全くわからないのです。だから王子様はぶんぶん羽虫が飛び交うゴミだらけの臭い部屋の真ん中で、呆然としているしかありませんでした。今回、使用人には絶対に頼ってはいけないと、王様から言われています。彼らに掃除を頼むことはできません。


 このままでは部屋を燃やされてしまいますが、ではどうすればいいのか。

 どんなに考えてもわからず頭ばかり疲れてきたので、王子様は気分転換に、庭の散歩に出ました。


「おや?」


 緑豊かな、広い庭をぶらぶら歩いていたときのことです。噴水に、一羽の白い小鳥が止まっているのを見つけました。金色の瞳を持つ、今まで見たことのない、とても綺麗な鳥でした。その鳥を見た王子様の頭に、町で聞いた噂話が蘇りました。


 ――掃除が苦手で苦手でどうしようもない人がいたならば。この国のどこかで新雪のように真っ白な体と金色の瞳を持つ小鳥を見つけたら、小鳥の足に名前と住所を書いた紙を括り付けてみなさい。その日の晩の、月が高く昇る頃に、どこからともなく灰かぶりの姫……“シンデレラ”が現れて、零時になるまでに、その人の家をすっかり綺麗にしてしまうから。


 小鳥の金の瞳が、王子様をじっと見つめています。もしかして、と思いました。


 王子様は慌てて、紙に名前と住んでいる場所を書くと、そっと小鳥の足に括り付けました。終わった瞬間を見計らったように、ぱたぱたと小鳥は青い空の向こうへ飛び去っていきました。


 本当に、“シンデレラ”なる人物は来るのか。王子様は緊張しながら、夜を待ちました。




 フクロウが鳴き、月が昇る頃。こんこんと、バルコニーのガラス扉が叩かれる音がしました。王子様は、よいしょよいしょとなんとか足の踏み場を見つけながら、扉を開けました。


「こんばんは。ご依頼を下さってありがとうございます。お掃除代行人のシンデレラです」


 そこには、若い女の人が立っていました。晴れた空の瞳に、小鳥の瞳と同じ色をした長い髪を後ろで一つに結び、灰色の服に白いエプロンを身につけています。その女の人は、とても美しい顔をしていました。「姫」と呼ばれているのにも納得で、こんな綺麗な子を王子様は初めて見ました。


 けれども、どうやってここまで来たのだろう、と王子様はとても不思議に思いました。


 しかしそれを聞く前に、シンデレラは王子様の向こう側、ごちゃごちゃに散らかった汚部屋に目を向けると、「では、掃除に取りかからせて頂きますね」とにっこり笑いました。


 シンデレラはホウキにハタキに雑巾、大きな麻袋をいくつか持っていました。それらを担ぎ直すと、すたすた部屋に入っていきました。


「ま、待ってくれ!」


 王子様は急いでシンデレラを呼び止めました。


「僕のこと……知っているよね?」

「王子様ですよね? よく存じていますよ?」

「ぜ、絶対に話さないでもらえないかな。ぼ、僕が、ちょっとだけ掃除が苦手なこと……」

「このレベルは“ちょっと”ではないですが、大丈夫ですよ。守秘義務があるので、依頼人の個人情報を言いふらすなんてことはしませんから。それより、掃除を始めていいですか? 私、ここまでの大物を相手にするの、凄く久しぶりなのですよ」


 シンデレラは、妙にキラキラした目を向けてきました。


「大物……?」

「はい、大物です。掃除代行と言っても、明日お客様が来るから部屋を綺麗にしてほしいとか、そういう依頼ばかりなんですよ。既に綺麗な家を掃除するみたいな感じで……。いや、ここまでのレベルは本当に久しぶりです。実に汚い、汚すぎます。最高ですよ、さすが王子様。がぜん燃えています、私」


 貶されているように聞こえましたが、シンデレラの瞳は輝かしく、生き生きとしていました。


 王子様が言葉に詰まっている間に、話している時間も惜しいとばかりにシンデレラは口と鼻を白い布で覆って後ろで結ぶと、麻袋の中にどかどかと部屋にある物を詰め込んでいきました。


「ちょちょちょちょっと待ってくれ!!」

「なんですか、邪魔をしな……いえ、外で待っていて下さいよ」

「麻袋の中に入れたものはどうなるんだい?!」

「燃える物は炎の中へ、燃えない物は分別して専用の埋め立て地へ向かいます」

「だめだめだめだめだめ!!! 全部宝物なんだ、部屋にあるものは全部取っておく方向で掃除をしてほしくて!」

「では一つ窺いますが、この千切れたリボンは王子様にとって必要な物ですか?」

「えっと……」

「この、読めない落書きの書かれた紙は? 開けっぱなしの箱は? 穴の開いた片方だけの靴下は? 二つに割れたチェスの駒は?」

「えっと……。いつか使うかも、と……」

「今じゃなくていつか必要だと思ったなら、その“いつか”は未来永劫訪れません。はい捨てます」

「あーーーっ!!!」


 シンデレラは、袋にゴミをどかどかと詰め込んでいきました。

 王子様の悲鳴などお構いなしです。シンデレラは天使のように美しい顔をして、まるで情け容赦ない性格をしていたのです。


 一応、これは必要かどうか逐一聞いてくれますが、すぐに答えられないとあっさり袋へぽいっと放られます。


「本当に欲しいものがあったら、また袋の中から探して下さい。袋は入れた物の種類ごとに分けてありますから。もちろん、その後の片付けもちゃんとやりますからね」

「うーん……」


 シンデレラは細い腕で、軽々とゴミを纏めて抱えてどさっと袋に詰めていきます。ぱんぱんに膨らんだ袋が、いくつも生まれていきます。


 その袋を見て、王子様は首を傾げました。この中には、自分が宝物だと思ったものがいくつも入っているはずなのです。ところが、こうして袋に入って纏められてしまうと。開けて探し出そうという気に、全くなれないのです。なんでだろうと思ったときです。


「王子様、これはどうしますか?」


 シンデレラから声がかかりました。彼女が持っていたのは、押し花の栞でした。白い、マーガレットの花の。


 王子様の目が、大きく、大きく見開かれました。


「そ、それは! ぜ、絶対捨てないでくれ! お願いだ、他は捨ててもそれだけはだめだ! だから」

「はい、どうぞ」


 弾かれたように走り寄った王子様に、シンデレラはあっさりと押し花を渡しました。


 王子様は両手でそっと押し花を受け取り、その白い小さな花を見つめました。

 すっかりなくしてしまったと思っていたのに。まさか、部屋にあっただなんて。


「それは、王子様にとって大切な宝物なのですね」


 シンデレラが優しく言いました。ああ、と王子様は深く頷きました。


 この押し花は、王子様が小さかった頃、ある女の子から貰ったものでした。その子は、時々遊びに来ていた庭師の長女で、王子様と同い年でした。その女の子と王子様はとても仲良しで、よく庭で遊んでいました。その子から押し花を貰ったとき、ずっと大切にすると約束したのを今でも覚えています。


 その子は、今はもういません。押し花を貰ってからしばらく経った頃、庭師の家で火事が起き、家族全員亡くなってしまったからです。家も全焼し、その子の持ち物も、記念の品も思い出の品も何もかもが、灰に変わってしまいました。


 王子様が、ものをなんでも取っておくようになったのはそれからです。


 ある日急に、大切にしていた宝物がどこにもいなくなってしまうかもしれない。どんなものだって取っておかないと、ある日忽然と、それがあった証しが消えてしまうかもしれない。


 そう思っているうちに、段々とものを捨てることができなくなっていったのです。


 ですがそのせいで、あの子から貰った押し花は、他の多くの物に埋もれて見えなくなっていました。


 王子様は押し花を両手でそっとくるみました。もう体の力がすっかり抜けてしまいそうでした。本当に本当に、見つかって良かったと思っていました。どうしてこんな大切なものを今まで忘れていたんだろうと、泣きたくなりました。


 そうしているに間も、シンデレラの掃除は続きます。シンデレラは30分も経たずに、あっという間に部屋にあったゴミを全てどかしてしまいました。


 露わになった床を見て、王子様はこの部屋の床が白色だったことをやっと思い出しました。しかしその白い床はすっかり汚れていて、おまけに虫の死骸がいくつも転がっています。


 シンデレラは動揺する素振りも見せず、ぱっぱと死骸を片付け、ハタキで埃を落とし、ホウキで床を掃き、雑巾で床や壁を磨いていきました。流れるような、鮮やかな動作でした。


 くるくると動き回るシンデレラは、まるで舞踏会でダンスを踊っているように見えました。軽やかな動きもそうですが、掃除をするシンデレラが、とても幸福そうだったからです。鼻歌交じりに、浮き浮きとした様子を見せながらシンデレラは掃除を進めていき――。


「終わりましたよ、王子様」


 零時の鐘が鳴る前に、シンデレラは王子様を呼び出しました。

 部屋に入った王子様は、びっくりして危うくひっくり返りそうになりました。


「この部屋って……。こんなに綺麗だったのか……?!」


 魔法を使ったと説明されても疑わないでしょう。滑って遊べそうな、磨き抜かれた床。くすみの一つもない壁。埃を被っていないシャンデリアは、一層煌めいているようです。続き部屋もぴかぴかですし、カビだらけだったバスルームと洗面所も新築のように美しく蘇っています。


 埃から解放された調度品の数々を見て、この部屋の家具はこんなに綺麗だったのかと、王子様は初めて見るような心地を味わいました。


 床の上には物一つなく、移動するのに飛び跳ねる必要もないし、茂みをかき分けるように進んでいく必要もありません。臭いもなく、清々しい空気で満たされています。まるで部屋全体が息を吹き返したかのように、全てが色鮮やかに映るのです。


「ご満足頂けたようですね」


 王子様の顔を見つめていたシンデレラが、優しく微笑みました。


「満足なんてものじゃないよ! 凄い、本当に凄いよ! ありがとうシンデレラ、なんとお礼を言えば良いか!」


 王子様は興奮気味に言いながらシンデレラの姿を改めて見て、あ、と言葉に詰まりました。

 ずっと部屋を掃除していたシンデレラは、服も顔も、「灰かぶり姫」の名の通り、すっかり汚れてしまっていたのです。


「その……。君はどうして、こんな大変な仕事をしているんだい?」


 自分だったら、こんな体力仕事など絶対にできません。掃除を生業にするシンデレラの心が、全然想像できませんでした。


「うーん……。王子様に聞かれたとあっては答えないわけにはいきませんね。実は私、幼い頃に母を亡くしまして。その後に父が再婚したんですけれど、父も亡くなってしまって。その後、継母と連れ子の姉妹に、ずっといじめられ続けていたのですよね。家のこと全部押しつけられて、当然掃除も任されて……。一日中ホウキを握っているような生活を送っていました」

「えっ、そんな……」


「で、もうこれは掃除を楽しむようにならないと気持ちが保たないと思いまして。逆に、押しつけられる掃除を楽しもうというように考え始めたのです。そうしたら、本当にどんどん楽しくなっていって。段々と、自分の家の掃除だけだと物足りなくなってきたのですよね。他の家の掃除もやってみたいなあって夢が生まれて、徐々に大きくなっていったんです。そんなある日、私の前に魔法使いが現れたのです。魔法でドレスをあげて舞踏会に連れて行ってくれると言うので、舞踏会はどうでもいいからホウキで空を飛べるようにしてほしいって頼んだんです」

「な、なんで?」


「チャンスだって思ったのですよ。自由に外に出られるようになれば、掃除代行の仕事を始められるでしょう? 仲良しの白い小鳥をよく躾けて依頼の仲介ができるようにして、それから私は毎晩こっそり家を出て、他の家の掃除に向かうようになったというわけなのです」

「……辛くないのかい?」

「あ、仕事でお金が貯まったので、今はもう継母達とは縁を切って、家を建てて一人で暮らしていますよ。大丈夫です」

「いや、そうじゃなくて……」


 王子様は、目の前にいる、髪がボサボサになって、服も顔もどろどろになったシンデレラを見ました。きっと、今のシンデレラを美しいと手放しで褒める人はいないでしょう。もともとの可憐な美しさが、すっかり汚れの下に隠れてしまっています。


「掃除をすればするほど、他の人の家は綺麗になるだろうけれど。反対に君はどんどん汚れていくんだよ。君、灰かぶりの姫って呼ばれているんだよ。それが、少しでも辛いと思ったことはないのか?」


 すると。シンデレラは、とても晴れやかに笑いました。


「いいえ、全く!」

「え?!」


 シンデレラは持っていたホウキを逆さにして、自慢げに言いました。


「私、掃除が大好きなんです。ゴミと汚れを少しずつ取り除いていって、その後ろに隠れていた美しいものがゆっくり顔を覗かせてくる過程が大好きなんです。王子様、綺麗になったこの部屋をどう思います?」


 王子様は、あんなに汚れていたことが夢だったみたいになった、自分の部屋を見回しました。


「凄く素敵だよ。この部屋はこんなに魅力的だったんだって、この部屋の空気はこんなに美味しかったんだって、驚いている」

「そうでしょう? それに、部屋を綺麗にしたことで、大切な宝物を見つけられたでしょう? ゴミの山に埋もれていた、本当の宝物が」


 王子様は、手の中にある小さな押し花の栞に目をやりました。この小さな栞は、どんなにお金をかけてもかえられない、唯一無二の宝物です。生涯、どんなことがあっても大切にしたいと心から思う宝物です。王子様は、うん、と小さく頷きました。


「私は、掃除は部屋だけでなく、心も磨く行為だと思っています。一つ汚れを磨く度に、掃除をした自分の心も、そこに住む人の心も磨かれる。掃除の持つ魔法の力に気づけたから、だから私は、掃除が大好きになりました。なので私は、この仕事を嫌だと思ったことは、ただの一度もありません。

灰かぶり姫と呼ばれていることも、とっても嬉しいんですよ。だって、私が掃除をして汚れていっているということは、それだけ、他の人の部屋と心が磨かれた証しになるのですから。これ以上とない、名誉ある肩書きだと思っています」


 揺るぎない目をして、シンデレラははっきりと言い切りました。


 その真っ直ぐさに、王子様は唖然として、直後、かーっと体中が熱くなりました。


 掃除で見た目が汚れてしまうから、辛いのではないか、などと。


 こんな単純な考えをした自分が、どうしようもなく恥ずかしくなりました。それがシンデレラにとって、どれだけ失礼な言葉だったか想像できなかったことに対しても。


 気がついたらすまない、と口にしていましたが、シンデレラはきょとんとしていました。それでますます、どうしようと恥ずかしくなりました。


「それで、代金のほうなのですが」

「そ、それはもちろんだけど! な、何が欲しい?!」

「はい?」

「と、とてもよくしてもらったし、お金だけじゃ足りないなと! なんでも君の欲しいものをあげるよ! ドレスでも宝石でも金の靴でも……いや、新しい掃除道具でもなんでも! 新しい家とかでも大丈夫だよ! どうだい?!」

「おお、さすが王子様ですね。でも掃除道具は今の使い慣れているものが一番だしなあ……」


 うーんと悩むシンデレラに、王子様はなんでもいいから望むものを言ってほしいと願いました。このままでは全く気が済まないからです。


「あ、じゃあ靴をお願いできますか?」

「靴?」

「はい。掃除のとき、今履いている靴だと動きづらくて。すぐ痛くなりますし。だから、デザインはどうでもいいので、滑りにくくて、小石や小さいゴミなどの異物が入りにくくて、足が痛くなりにくくて、動きやすい……。こう、布か皮でできた丈夫な靴※スニーカーが欲しいなあと思っているんですけれど。大丈夫ですか?」

「わかった! すぐに明日、国中の靴屋に頼んで特注品を作らせるよ!」

「ほ、本当ですか? わっ、嬉しい! まさか実現するなんて……! ありがとうございます!」


 シンデレラはぱっと華やいだ笑みを浮かべました。今日の中で一番嬉しそうな顔でした。それは、宝石よりも何よりも比べ物にならないほどの、美しい笑顔でした。


「では。またのご利用、お待ちしております!」


 シンデレラはバルコニーに立つと、膨らんだ麻袋を括り付けたホウキに跨がり、あっという間に夜空の彼方へ飛び去っていきました。


 鳴り響く零時の鐘の音を聞きながら、王子様は、明日にでも使用人達に掃除のやり方を教わろうと心に決めました。


 その後、王子様が、お掃除が一番の趣味になるのは、もう少し先の話です。


 めでたしめでたし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

掃除代行人、シンデレラ 星野 ラベンダー @starlitlavender

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ