第2章 アチアチマウンテン編

第13話 第2章 旅の始まり

「あ〜つ〜い〜…」


 竜車生活をして1ヶ月がたち、私はとうとう南の大陸にあるアチアチマウンテンのふもとまでたどり着いた。


 今、目の前にはものすごい大きな山がそびえたっており、その頂上にある火口からは溶岩が花火のように頻繁に打ち上がっていた。


 これが普通なのだろうか…そう疑問に思ったが、竜車の主人からしたらこれは日常茶飯事のようだ。そしてついでに竜車が進んでいけるのは溶岩が流れ星のように降ってくるためここまでらしい。


 なんということだ。私はこれからその溶岩の流星群を抜けながら登るしかないのか…


 そんな風に思ったが、とりあえず私は竜車の主人に挨拶をして、荷物を背中に背負った。


 とはいえ。


 …どうしたものか


 道はあるが、普通に進めば溶岩の餌食。山の中腹には建物が見える。きっとそこを目指さなければいけないのだろう…ただ、ここの人たちはどうやって登っているのだろうか。


 そう考えた時だった…


「とうっ!!」


 空からだった。若い男性と思われる爽やかな声が聞こえてきた。空を見あげると、何か赤い鳥のようなものがすごいスピードで飛んでいるのが見える。いや鳥にしては大きいか…それに遠目ではあるが人のような手足が見える。


 …一体、何者!?


 私は背中にある弓を構え、警戒心マックス状態で空を飛ぶ何者かを見つめた。


「警戒なされるな!」


 飛んでる何かは私の真上までくると、すごいスピードで急降下してきて私の前へと「ズドーン」と轟音をたて豪快に着陸した。


「けほっ、けほっ、も〜、なに〜?」


 着陸した時の砂埃が口に入ってきてむせてしまう。砂埃が晴れるのを待っていると、晴れてきた先…私は着陸した何かを確認した。するとそこには、赤い鳥の頭をした鳥人ちょうじんがまだ晴れ切らない砂埃のなか私の前に片膝をついた状態で座っていた。


「しつれい!あなた様が里から見えたため、急ぎ駆けつけさせていただきました!あなた様がアルテミス様の言う神子様で間違いありませんね!?」


 なんで知ってるかはさておき、赤い鳥人はグイグイと迫ってくるため、私は気迫に押されて「…そうです〜…」と一歩引きながら答えた。まぁまだ神子ではないのだけれど…


 そんなことより。


 …暑いし、熱い。もう熱苦しい


 これが今の心境だ。


「私、このスザク族の長を務めさせてもらっている名を『ヴェルガ』と申します。アルテミス様の予言を聞きあなた様がここに訪れてくることは知っておりました。長旅でしたろう…ささ、お話は里のほうで!私の背中にお乗り下され」


 ヴェルガさんは言うと私に乗れとばかりに背中を見せた。キラリと輝くクチバシが見え何かかっこよくアピールしているように見えたが、ツッコんだら負けな気がした。ここは無視してやりすごそう…私は何気ないふりをしてヴェルガの背中に乗った。ヴェルガさんは何も気にすることもないまま、そのまま「そりゃ」と声を上げ、空へ舞い上がると、山の中腹にある里まで連れて行ってくれた。


※ ※ ※


 里へ着くと、そこにはさまざまな姿、形の鳥人が生活を送っていた。獣人種は村でたくさん見てきたが、鳥人というのは見るのは初めてだ。私も「ほえ〜」と目を丸くして辺りを見回してしまう。


「神子様…鳥人を見るのは初めてですかな?」


 ヴェルガさんが聞いてきた。


 …神子様…


 そういえば私はヴェルガさんに「神子です」と答えてしまった。さすがにまだ神子になったわけではない。今、神子と名乗るには力不足にもほどがあるだろう…それに神子と呼ばれるのは何か恥ずかしいものを感じる。ヴェルガさんには申し訳ないがお断りすることにしよう。


「あの…ヴェルガさん。神子様って言うのやめられませんか?どうも恥ずかしくて…」


 照れ隠ししながら言ってみる。だがそんな私の意見はお構いなし。ヴェルガさんの答えはノーだった。


「なりませぬぞ、神子様。神子様はアルテミス様がお認めになられたお方。そんなお方を名指しで呼ぶなど私にはできませぬ!それと私めのこともヴェルガとお呼びくだされ。それが上に立つものの使命でもございます!」


 …特に上に立ったつもりもないのだが


 だが、きっと私が何を言っても何かしらの言葉を返してくるだろうそんな性格をしている気がする。ここは黙ってヴェルガの話を呑んでおこう。いや呑むしかない…


「コホン、、、それでは改めて、ヴェルガ…話の前にですが、今この里はすごく盛り上がってるように見えます。何かお祭りでもなさってるのですか?」


 私は言うと、ヴェルガは「待ってました!」とばかりに私の前に立ち説明を始めた。


「よくぞ聞いてくださいました!、、、私はアルテミス様の予言を聞き近いうちに神子様がここを訪れると聞き、いてもたってもおられず、里の者たちを集め『神子様歓迎祭』をとり行うことにしたのです!!、、、そして今はその準備のまっ、さい、ちゅう!!」


 …うわぁ、、熱ぐるしぃ


 目の前で大の字に手を開げて説明するヴェルガに引いてしまう。確かにヴェルガに言われて周囲を見回すと、『神子様歓迎!』などいろんな垂れ幕が書いてあったりするのを見かける。里の方も歓迎してくれてるようでこちらに手を振ってくれる人もいて、私も作ったような笑顔で手を振り返した。


 そんな時だった…


「お願いよ〜!直してくれないと帰れないのよ〜」


 とあるお店のような場所の前で1人の少女がバイクのようなものを置いて何か言い合いをしているように見える。


「はぁ…まだやっておったのか。せっかく神子様が来てくださったというのに…」


 ヴェルガは頭を抑えていた。


 …ん?

 

「すみません、神子様。すぐに片付けてきますゆえしばしお待ちを」


 そう言うとヴェルガはその少女の方へと向かっていってしまった…

 


 

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