幼い恋心は火花を散らす
犀川こおり
第1話
「 お前さ ~ 、もう大学生だろ? 」
「 僕には ちょっと早いよ 、多分 。 」
そんな僕は今、「 恋愛をすれば 人生が楽しくなる 」と言い張る友人、
「 ごめん 、お酒は一人で飲みたいんだ 。 」
早瀬は眉間に皺を寄せたまま、鼻先が触れそうになるくらい顔を近づけてきた。無駄に顔が良いため
正直反応に困る。
「 透 、お前 彼女でもできた ? 」
「 いや 、死ぬまで作る気ないよ 。ごめん 。 」
目の前にいる 勧誘系男子 は一歩後ろに下がって 口を開いたり閉じたりしてから、そっか と呟いた。
「 なんか 透には 純粋な恋愛をしてほしくなったわ。さっきの話は全部ナシにしてほしい 。 」
早瀬とは 大学に入ってからの付き合いであるが、基本的に僕が世話を焼いている。しかし 彼には どこか憎めないところがある。今回もその 憎めないところ に心を許してしまった。僕は ふっ と表情筋を緩めて目を細める。
「 いいよ 。また今度 、昼間に ご飯 行こっか 。 」
早瀬は 無言で頷くと、手を振りながら 講義室から出ていった。僕は無事に解放されたが ひと息つく暇もなかった。ポケットからスマホを出して、時間を確認する。16時、『 あの子 』が帰ってくる時間だ。 リュックを背負っては すぐに大学を出て、走って帰宅することにした。
幼い恋心は火花を散らす 犀川こおり @ko_ri03050
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