幼い恋心は火花を散らす

犀川こおり

第1話

「 お前さ ~ 、もう大学生だろ? 」

「 僕には ちょっと早いよ 、多分 。 」


 相川あいかわとおる 。一人暮らしをしている、ただの大学生。人と少し違うところといえば、髪を白色に染めているところくらいだろう。

 そんな僕は今、「 恋愛をすれば 人生が楽しくなる 」と言い張る友人、早瀬はやせの誘いを断っている。サークルの女子たちと飲みに行くそうだが、人数が足りないらしい。少し前の僕ならば同調して行ってあげるだろう。 しかし今の僕には断る理由がある。

「 ごめん 、お酒は一人で飲みたいんだ 。 」

 早瀬は眉間に皺を寄せたまま、鼻先が触れそうになるくらい顔を近づけてきた。無駄に顔が良いため

正直反応に困る。

「 透 、お前 彼女でもできた ? 」

「 いや 、死ぬまで作る気ないよ 。ごめん 。 」

 目の前にいる 勧誘系男子 は一歩後ろに下がって 口を開いたり閉じたりしてから、そっか と呟いた。

「 なんか 透には 純粋な恋愛をしてほしくなったわ。さっきの話は全部ナシにしてほしい 。 」

 早瀬とは 大学に入ってからの付き合いであるが、基本的に僕が世話を焼いている。しかし 彼には どこか憎めないところがある。今回もその 憎めないところ に心を許してしまった。僕は ふっ と表情筋を緩めて目を細める。

「 いいよ 。また今度 、昼間に ご飯 行こっか 。 」

 早瀬は 無言で頷くと、手を振りながら 講義室から出ていった。僕は無事に解放されたが ひと息つく暇もなかった。ポケットからスマホを出して、時間を確認する。16時、『 あの子 』が帰ってくる時間だ。 リュックを背負っては すぐに大学を出て、走って帰宅することにした。

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幼い恋心は火花を散らす 犀川こおり @ko_ri03050

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