硝子の靴を追いかけて⑥
目を覚ましたが、やはり現実の世界に戻れてはいなかった。
時間の経過はどうなっているのだろうか。
ドーナツショップにいたなら、とっくに閉店時間である。
「アニメの録画が……」
私は実はとある擬人化アニメが好きで毎週リアタイしていた。
今回は大事なテストだったため、泣く泣く録画する事になってしまったのだ。
両親には、絶対消さないように言ってあるがこのまま数日戻れないようならそれも怪しい。
暗殺事件を解決したら、戻れるといお保証はないが、今出来る事はそれしかない。
「カーター、お茶会に参加する予定のメンバーを教えてちょうだい」
「分かりました」
朝食を終えてすぐに、私はテーブルに紙と硝子ペン、そしてインクを用意した。
紙も貴重な資源のようなので、無駄には出来ない。
「まずはお茶会を主催される王女マリー様。マリー様の母親は第二王子のヘンリー様と同じお方です。」
「ふむふむ」
「あとは舞踏会に参加されていたマルス様のパートナー、ヨナス様。すでに婚約されています。」
「第2王子のパートナー、ヘナ様。第3王子のパートナーとされるメイ様。彼女の情報は少ないですがドナード家の令嬢とのこと」
「横文字が多くてややこしいわね」
「第4王子のパートナーはルドルフ家の令嬢ファラ様、第5王子のが初めてお連れになったのはリュカ様という女性だそうです。」
「ありがとう。これだけの情報を短時間で集めるのは大変だったでしょうね」
【メモの内容】
主催マリー
マルス ヨナス
ヘンリー ヘナ
シルヴァ メイ・ドナード
マシュー ファラ・ルドルフ
ダン リュカ
ジュリア 私
この12人の中に、国王を暗殺した人間がいる。
写真もないので、王子の顔すら一致しない。
事前に聞いた印象でしか判断できない。
「なにか、目印はあるかしら」
「席順が決まっております。マリー様がホストですので右どなりにヨナス様、左どなりにヘナ様。マリー様の対面が下座でお嬢様になり、右どなりにファラ様。左どなりにリュカ様です」
「頭痛くなってきた」
「お嬢様は入り口に一番近い席なので分かりやすいと思いますが」
「分かったわ。とりあえず自分の席は間違えないようにしよっと」
お茶の作法などは特に気にしなくていいらしく、お茶会というのは普段の社交場とは違いゆるく話をする場所らしい。
とはいえ、貴族としての最低限のマナーはあるので注意が必要。
気がつくと、メモにしていた紙には文字がびっしりと埋まっていた。
「不安になってきたわ」
なんとか気持ちを落ち着かせる。
「とにかく出席しないと、欠席裁判になりかねないし、ちゃんと情報を手に入れないと」
テストの点数はどうだったろうか。
やるだけの事はやったはずだ。
たかが、お茶会くらいで怖じけづいてどうする。
私はカンニングペーパーを握りしめて決意を固めた。
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