謎解きゲームの主人公と入れ替わっても恋はめばえますか

@kurami939

硝子の靴を追いかけて①

期末テストの最終日。

駅前のドーナツショップで、私は夢を見ていた。

慣れない徹夜で限界に来ていた睡魔に対してカフェインは無力だ。

目の前に広げた勉強道具やカラフルなラインマーカーは、勉強をしようとしていたというポーズだ。

「それでさぁ、2組の陽介がさぁ。ねぇ、聞いてる?」

「聞いてる聞いてる」

「実際どうなの?付き合ってるとか」

「うんうん」

「バスケ部の後輩だっけ」

「そうそう、それでさぁ」

他人の恋愛なんて一ミリも興味ない。早く帰って録画してるアニメの続きがみたいです。

「ねぇ、聞いてる?」


あぁ、うるさいなぁ。

「すみません」

やば、声に出てたかな。

「お嬢様、大丈夫ですか?」

私はいつの間にか、石畳の町並みの中に立ち尽くしていた。

目の前には、劇の衣装のようなヒラヒラとした薄いシルクの服を着た男がいた。

「え、誰ですか?」

「何を寝ぼけてるんですか、早く行かないと間に合いませんよ?」

「間に合わない?」

「はぁ、だからあれほど夜更かしはよしなさいと」

「だって、テストが……じゃなくて」

「ん?何かおかしいですね」

「そうそう、いろいろ変!」

アニメの見すぎで、いや見れなかった禁断症状なのか。

「まさか、お嬢様」

「ん?」

「また神殿に行かれたのですか?」

「いやいや、神殿って何ですか」

「誤魔化してもだめですよ」

「訳わかんない。てか、ここはどこ?貴方は誰?」

「私は召使いのカーター。ここは南の都ツァイラ。あなた様は……」

とカーターという男が言葉を発っしようとした瞬間に、急に目の前に突風が吹いた。

砂ぼこりが入らないように目をつぶる。

どうやら、馬車が私達のすぐ横を勢いよく通りすぎた為らしい。

かなり、あわてていたようで通行人達が騒いでいる。

「危ないですね。ここは、わりと人通りも多いのに」

「馬車?初めてみた」

「たしかに、この辺りでは珍しいですね」

「カーター、さん?」

「なんですか、急にさん付けなんて、気味が悪い」

普段、どんな接し方をしているのだろうか。

「急ぐんですよね?」

「ええ、王子様がお呼びですので」

「王子……様?」

「はい、舞踏会で約束されたと聞いています。本当に覚えてないんですか?」

「覚えてない。それに、なんというか」

「え?」

「こんなみすぼらしい格好で、王子様に会いに行くんですか?」

私はいつもの学生服とボロボロのスニーカーをはいている。

「みすぼらしい!?なんてことを。いくらなんでも、言っていいことと悪いことが」

「あぁ、もう。中途半端な夢ね。せめてドレスとか、硝子の靴とかはかせなさいよ」

「たしかに、貴族の中でも我々は中の下ぐらいでしょうが、少なくとも……」

「カーター、今日はやめましょう」

「王子様との約束を断るのですか?」

「そう。さっき馬車が通った時に靴が泥だらけになってしまいましたわ」

なんとなく貴族っぽい言葉遣いを心がけてみる。

「そうですか。分かりました。王子様には断りの手紙を書きましょう」

「ええ、もしこれで王子様の機嫌を損ねたとしても」

「しても?」

「いえ、なんでもないです」

なんとなく、最近見たアニメのような展開を想像してしまった。

あえて、約束を破った方が相手に興味をもたせる結果になるような気がしたのだ。

まぁ、恋愛ビギナーの私が考えるような程度の妄想に過ぎない。

「帰ってお風呂に入りたい」

「分かりました。」

それから、私は学生服のままカーターに案内された屋敷を目指した。








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