第25話 5日目ー10
「まず、王府はリカルド様とフローラベス様の所在を掴んでいる事は確実です。さすがに気付いたのでしょう。監視の目を光らせていると思われます」
「確かに気付いているのは事実だろう。俺の方でも監視状況は掴んでいる」
「さすがですね。とは言っても、今日呼ばれた最大の理由はジョージ様の情報を探る為ですね」
「怪し過ぎるもんな。それで何と答えたのだ?」
「かなり腕が立つ魔法尉で、スラム街の孤児がが人攫いに連れ去らわれる寸前で阻止してくれた恩人だと言っております」
経歴を洗おうにも、足取りも無くいきなり現れた人物だからな、俺は。
どの組織にも、形跡も情報も無い人物なんて不審人物以外の何物でもない。
それに、確実に只の魔法尉と思われていないだろうな。
俺が関わったと思われる案件全てが異常な出来事だ。
第一、詠唱なんて1度もした事が無い。この事実だけで、魔法尉の枠に収まる訳が無い。
石造りの小屋を生やしたり(そう見えるわな)、土砂魔法に金属魔法、火炎魔法に熱量魔法、更には液体魔法を扱える魔法使いなんて、「伝説」か「御伽噺(おとぎばなし)」の中でしかお目に掛かれない。
実際は人間では扱えない神力を使う時空魔法と変質魔法も有るけど、そもそも非常識過ぎて認識も出来ないだろう。
まあ、常識的な判断力を持っているならば、『係わるとヤバい奴』と分かるだろう。
でも、
人間は社会的動物だから、確かに相手が人間なら、ある程度は正しい。
俺も地球では社会の一員だったから分かる。階級社会では無かった日本でさえパワハラが有ったんだ。
厳しい階級社会のこっちなら、尚更だ。
ところで、今日の酒は昨日とは違った風味だな。
ブランデーっぽいので昨日の果実酒を蒸留して風味を付けた酒だと思うんだが、風味の付け方が地球で飲んだものとは違っている。
まあ、チョコレート系のおつまみなら合うだろう。
お、エド爺、早速食い付いたな。
鉄板の組み合わせだぞ。
「やはり、対策はされないお積りですか?」
じっくりとブランデーっぽい酒とチョコのコラボを楽しんでからエド爺が訊いて来た。
「ああ、特に対策をする必要は無いし、むしろどう出て来るのかを楽しむ気だよ」
「そうですか・・・ 私がこう言うのもおかしいのですが、お手柔らかにお願い致します」
エド爺の顔が、苦過ぎるチョコを口に含んだようなビターな表情になっている。
ほら、ブランデーを飲めば、まろやかになるよ。
「そう言われてもなぁ。前にも言ったけど、神の邪魔をしたいなら相応の覚悟を見せて貰うだけさ」
ブランデーっぽい酒を飲んでも、まろやかにならなかった様だ。
むしろ、初めて梅干しを口にした欧米人みたいな顔をした。
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