第2話

 引っ越してきてから半月ほど経った頃だろうか、中学時代からの友人が私の家へ遊びに来た。積もる話もあり、私達は中学校の思い出や同級生の現在、仕事の愚痴などで大いに盛り上がり、その日は夜遅くまで酒を片手に語らい合った。


 翌日、飲み過ぎによる頭痛を感じながら起きると、友人が変なことを言い出した。



「ねぇ、昨日のあれなんなの? ドッキリ?」

「ドッキリ? 何のこと?」



 私が不思議そうに聞き返すと、友人は首を傾げながら話しだした。


 昨晩、友人は喉の乾きで目を覚ましたそうだ。隣を見ると私も起きていたらしいのだ。

 だが、友人は私の様子を奇妙に思ったと言う。


 その時の私は白目を剥きながら正座をしていたらしい。


 しかし、私達が深酒をしていたこともあり、友人は私が完全に酔っ払っていると思ったらしい。ちなみに私は酒にあまり強くないが、友人はめっぽう強かった。友人は私を放置してキッチンに向かった。


 友人は私の冷蔵庫から勝手に500mlのペットボトルに入った飲料水を取り出し、残っていた酒を流しにこぼし、それを水道水ですすいでからグラスに注いだ。


 その時視線を感じ、玄関の方を見るとドアの染みが赤黒く蠢いていた。その時の様子はまるで生き物のようだったと語る。友人は流石に私も飲みすぎたかなと思い、水を一気に飲み干した。


 友人が戻っても、私は白目を剥きながら正座していた。しかも、その時の私は友人の方をゆっくりと向いたらしい。

 その時の様子は、まるで錆びたマシンのようなぎこちない動作だったのことだ。


 友人が私に「何してるの?」と聞くと、私は無言でクローゼットを指さした。友人がクローゼットの方を見ると、やはり半開きになっていた。


 半開きになったクローゼットのどこまでも続いているような暗闇を友人にはとても気味悪く感じたとのことだ。


 友人が私の方を向くと、私はなおもクローゼットを指差し、にんまりとした笑みを浮かべていた。



「あれ悪ふざけ? いくらなんでも酔い過ぎだよ」



 勿論のことながら、私は全く覚えていない。その後は微妙な空気になり、午前中のうちに友人と別れた。


 別れ際友人は私に、

「この家、ちょっと気味が悪いから気をつけたほうがいいよ? 特にクローゼットとドア。でも、幽霊とかそんなのじゃなさそうなんだよね……なんなんだろ」

 と不思議そうに言った。


 ちなみに友人は霊感持ちである。

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