赤暗闇のクローゼット

不労つぴ

第1話

 最近、私は新しい家に引っ越した。


 新居から職場までは徒歩30分くらいで、風呂トイレ別、洗面所もある上にキッチンにはコンロが2つもある。


 以前住んでいたところに比べると家賃は1.5倍ほど高くなってしまったが、それでも私は満足していた。しかし、私は新居に2つの不満があった。


 1つ目は玄関――ドアの染みだ。


 その赤黒い染みは、私が新居の内見をしたときから黒色のドアの表面に存在しており、まるでその部分だけ潮風にさらされ錆びたような感じだった。


 何より不気味なのが、その染みは人の形をしているところだ。

 まるで、何かに押し付けられたような――漢字の「大」のようなポーズだった。


 不動産屋に確認したところ、マンションが出来た当初からこの染みはあるらしい。

 だからこの部屋だけ他の部屋よりも安かったのだろう。


 内見の際はあまり気にならなかったのだが、いざ住んでみると気味が悪くなってきた。残業で夜遅くに帰ってきたときに、真っ先にお出迎えしてくるのがこの染みなのだ。


 流石に気味が悪い。


 それに、きっと見間違いなのだろうが、日に日に染みが濃くなっているような気がするのだ。


 そもそも、内見の際はもっと大きさも小さかったし、色もここまで赤黒く無かったような気がする。


 2つ目はクローゼットだ。


 正直こちらのほうが、ドアの染みなんかよりもよっぽど気味が悪い。


 入居し始めてから1週間経った頃だろうか。

 帰宅してから、ふとクローゼットの方を見るとクローゼットが半開きになっていた。


 そのときは、閉め忘れたのだろうと考え、普通に閉めたのでなんとも思わなかった。


 しかし、その翌日仕事から帰宅すると、またもクローゼットが半開きになっていた。


 その日を境にして、私が帰宅すると必ずクローゼットが半開きになるようになった。


 酷いときは、帰宅後私が閉めたのにも関わらず、気づくとまた半開きになっているのだ。


 流石にここまで来ると私は気味が悪くなり、そのクローゼットは使わないことを決めた。


 がしかし、その後も怪現象は起き続けた。


 対策をしても一向に効果がないので、引っ越しも考えたのだが、クローゼットが半開きになっているだけで実害もない。


 それに引っ越しをするお金も無かったので、私は気にしないように努めることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る