【れんかの】～週末『ボク』は『白雪姫』に変わる。憧れのあの子と始めるナイショの関係～

12. モヤモヤを確かめたい

12.　モヤモヤを確かめたい

　家に帰ってからもモヤモヤは晴れない。こんな気持ち初めてだし、なんで葵ちゃんのこと考えるとモヤモヤするのかが分からない。

「はぁ……葵ちゃん……か」

「誰？葵ちゃんって？」

「うわぁ！え？真凛……だから部屋に入るときは……」

「は？ここリビングだけど。大丈夫おにぃ？」

「え？」

　どうやら考え事をしているうちにリビングに来てしまっていたらしい。全然気づかなかった……

　そして真凛はボクの目の前に座るとジト目でボクを見る。

「で？珍しく何悩んでるの？」

「……え？何が？」

「おにぃが『葵ちゃん』って呼んでる人。友達？それとも好きな人？」

「なっなんでそんなこと聞くんだよ！真凛には関係ないだろ……」

　なぜかボクは誤魔化そうとする。そしてそんなボクの様子を見て真凛はさらにジト目になる。

「おにぃが週末デートした人か」

「なっ！なんで！？」

「分かりやす。おにぃの顔見れば分かるよ」

「そっそんなにボクって分かりやすい？」

「うん。すごく。そっかそっか……おにぃも好きな人とか出来るんだ？」

　好きな人……？そう真凛に言われて慌てて否定する。

「いやいや！葵ちゃんは確かに美少女で可愛いし、ボクの女の子の理想像だけど、それはそうなりたいって言う憧れで……」

「うん。だから好きなんじゃん」

「だから……」

「きっとおにぃのことだから、女装してる時と今の本当の姿の時のギャップがあり過ぎて、モヤモヤしてるんだよ。それ……恋してるよ？」

　ボクは葵ちゃんを好きなのか……いや……もちろん好きだけど！それは推し的な？理想の女の子だからであって……そもそも葵ちゃんはボクのことを男としては見てないし、恋愛対象じゃないし……

　でも確かに真凛に言われるとそうなのか……分からない……今までこんな気持ちになったことなんてなかったし……

　この苦しい気持ちを少しでも和らげたいと思ったのか、恥ずかしさも忘れてボクは真凛に今までのことを話していた。ただ誰かに聞いて欲しかった……そんな気持ちだったのかもしれない。

「だから……ボクは……」

「とりあえずさ、おにぃはその『葵ちゃん』と毎日会ってるんだから、色々調べてみたら？どうせ話すこと出来ないだろうし」

「そんなこと……」

　ボクは反論しようとするが言葉が出てこない。そう……真凛の言っていることは正しい。葵ちゃんのことを知りたいなら、直接ボクが聞くしかないんだ。でもそんな勇気はないし、そもそもなんて聞けばいいんだろう？ それに本当に恋をしてしまったのか？それすらも分からないし……

「はぁ……なら確認してみたら？」

「どっどうやって？」

「そんなの簡単じゃん。おにぃからデートに誘って、デート中は友達じゃなくて彼女だと思って接したら？そうすればハッキリ分かるでしょ？その『好き』が、憧れなのか恋してるのか？それに葵ちゃんはそもそも、おにぃ……いや『白井雪姫』のことは恋愛対象として接してるんだから問題ないでしょ」

　そんな簡単に言うなよ！と思いながらも、真凛に言われるとそれが最善な気はするけど……

「えっと……ほらこれ！この恋愛映画、女の子に人気あるから、これ誘いなよ。映画観たいって言ってたんでしょ？」

「えっ？それズルじゃ……」

「何が？普通だからこんなの。相手が何がしたいのか、何が欲しいのか、何を求めてるのか、リサーチするなんて当たり前だから。だからおにぃはダメなんだよ。別に恋人じゃなくて友達にもするからねこんなの」

「でもボク、その映画よく知らないし……」

「アタシが教えてあげるから！ほらほら向こうから提案される前に誘いなよ！」

　なんか……楽しんでない真凛？でもボクも自分の気持ちを知りたいし……真凛の言っていることも分かるし……とりあえず……映画に誘ってみようかな……