11. 何か嫌だ!

11. 何か嫌だ!




 ボクは昼休みの間、悪いとは思いながらも葵ちゃんたちの話に耳を傾けていた。


「え?マジなの葵!?」


「大切な人ってどんな人なの?カッコいい?」


「どんな人……う~ん……」


 葵ちゃんは少し考えるような仕草をする。そしてボクは息を飲んで聞き耳を立てている。


 ……葵ちゃんはなんて答えるんだろう。正直ボクは全然葵ちゃんのことをリード出来なかったし……


 ……正直ドキドキする。なんでだろう……他の人のことなんてどうでもいいはずなのに、葵ちゃんのことを考えると凄く気になるし、不安にもなる……なんでこんな気持ちになるんだろう? そんなことを考えていると葵ちゃんの声は聞こえる。


 やっぱり聞きたくないかも……聞いたら何かが終わるような気がする……だけど聞かずにはいられない!ボクって嫌な性格だ……そんなことを思いながらボクは耳をすませる。


「うん!ズバリ!可愛い人だよ」


「可愛い系?マジ?」


「葵ちゃん。そういう人が好きなんだぁ。なんかイメージ違うかも。もっと大人の男性とかがタイプかと思ってた」


「写真ないの?見せてみ?」


「私も見たい!」


「写真?あー……そう言えば撮ってないなぁ……でも本当に可愛い女の子だよ」


 それを聞いた2人はキョトンとしている。さすがに今の流れなら男だと思うもんね。


「は?女の子?」


「うん」


「葵ちゃんの大切な人って女の子なの?」


「うん。1つ年上でファッションの専門学校に通ってる人なんだけど、ちょっと前に知り合ったんだ。それで凄く可愛いの!服もオシャレだし、それに話してて楽しいし、優しいし……」


「ふーん……てかさっき恋してるって言ってなかった?」


「え?あー……あれは冗談w」


「おいwまぁ葵が言うなら相当気に入ってるんだね。ねぇ?今度会わせてよ?めっちゃ気になるし」


「そんなに魅力的な子なら私も会ってみたいかも」


 なんか……2人とも興味津々なんだけど……もしかしてこのままボクはこの2人と会うことになる!?いやいやそれは絶対に避けなければ!


「え?まだ私も1回しか遊んだことないもん。まだダメだよ。変なお願いして嫌われたくないし」


「なんだ。ウチはてっきり葵に先週告白してきたバスケ部の先輩と上手くやってんのかと思った」


「私も。あの先輩カッコいいって人気あるもんね?」


「カッコいいかもしれないけど、その先輩しょっちゅう彼女いるじゃん。絶対誰でもいいんだよあの人。私がお断りしたら、『じゃあ遊ぶだけは?』って言ってたし、少しカッコいいからって女の子が誰でも落とせると思ってそうだし、男として終わってるよあの人」


「言い過ぎじゃねそれw」


「本当に葵ちゃんの心を掴むのはどこの誰なんだろうね?」


「あはは。私も知りたいけどねw」


 葵ちゃんはモテるから仕方ない……今までもこんなこといくらでもあったはず。


 でも……凄くモヤモヤする。葵ちゃんを取られるような、そんな不安感というか嫉妬心?上手く説明できないけど何か嫌だ!


「案外……白瀬みたいなやつだったりして?」


「やめなよ。白瀬君は私みたいな子好きじゃないよw」


「まぁ葵が好きな人出来たらウチらには紹介しなよ?」


「そうだよ?私たちには隠し事なしだからね?」


「もちろん。分かってるよ」


 すると教室に昼休みが終わるチャイムが鳴り響く。


 反応はしなかったけど、もちろん聞こえている。最後の……『私みたいな子好きじゃないよ』か……


 ボクはモヤモヤした気持ちのまま1日を過ごすのだった。

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