五話 拒絶と日常
side 茅菜紗良
部活があった次の日、その放課後。私たちの間の空気は張り詰めていた。
「いい加減さ、話さん?皆、特にお前。変だよ」
「やだなぁそんな、変だなんて。あーしたちは、いつも通りだよ?」
そんなわけがない。
「気付かない訳ないじゃん?他の奴らはともかく、ウチらって親友だよ?」
そう、分からない訳がないのだ。
「そっかー。あーしらおかしいかー。・・・・だからなに?」
「え?」
「別にあーしらはね、おかしくないんだ。外れてるのはね、あんただけだよ」
私が覚えている限りだが、背筋が凍るなんて体験をしたのは、これが初めてだ。
「あはは、何その顔、うける。でもそっか。何も気づかなかったんだ。仕方がないね。やっぱ今のなしでってのも無理だよね?じゃあ、いいや。ああそうだ。これ、もう無くさないでよね?」
そう言って渡してきたのは、
「私の、ペンケース」
「あはは、私だって。じゃ、バイバイ」
「待って」
呼び止めなきゃいけない。こんな事は
「まだ、何かある?もうないでしょ。知ってるよ。あーしら、親友だったもん」
だった?そんなことは、
「じゃ、今度こそバイバイ。もう呼び止めないでよ」
そう言うと、小鳥は走り去っていった。私は、図星を突かれて呆けてしまっていた。もう悩みたくはなかった。あ、部活行かなきゃ。そんな現実逃避じみた思考と共に、私は部室に急いだ。
side 波屋流留
部室には、シャーペンが紙を滑る音だけが響き、とても静かです。勉強会と言えば、質問の一つや二つ飛び交いそうなものですが、そんな事もないのです。その理由は、ここにいる人が勉強の分かる面々だと言うのもありますが、最たる原因はこういう状況を最も必要とする人が欠けている事にあります。茅菜紗良ちゃん。先日私の友達になった人であり、最近は友達関係に苦労している人。沈黙に耐えられなくなったのか、いかにも苦し紛れの質問が飛びます。
「なあ、波屋ちゃん。茅菜ちゃんの人間関係の問題ってどんなんだ?いやまあ、無理に聞くわけじゃないから話さなくてもいいんだがな?」
「え、えっとあの、私が、友達になった事で、これまでとの、兼ね合いが難しくなったようで」
そこまで言ったところで先輩は不意に立ち上がり、扉を開けました。
「紗良ちゃん?」
side 茅菜紗良
階段を降り、渡り廊下を通り、また上がる。いつもならへばってしまうのに、今日は疲れ切っているのか、なにも感じなかった。今の私は部室の前で立ち止まっている。感情の切り替えが出来ない。こんなんじゃ、先輩達や流留ちゃんに当たっちゃう。あんな事があったからか、まさか流留ちゃんも・・・なんてことも考えちゃう。そんなこんなで背を向けようとしていたところに、扉が開いてしまった。そこには、したり顔の広香ちゃんが立っていた。やっぱり。なんて声の聞こえそうだ。
「紗良ちゃん?」
いつも通りの光景だ。心が緩んだ気がした
side 高崎日向
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