三話 第一ミッションと不穏の影

 次の日の放課後。俺は、駅前の喫茶店にいた。勿論、俺一人じゃない。

「おい、日向、金井。何をテレパシーしてるんだ?」

「いや、少し考え事をしていただけだ」

「僕は、空を見ていた」

「全く通じてないじゃねーか」

彼らは、俺のクラスメイトの金井拓海と石垣陽太だ。2人とも一年前からの付き合いだが、気の合う良い友達だ。

「にしても、文学研究部にも活動なんてものがあったとはなー。存在すら学校の怪談レベルだろ。あれは」

「誰が肝試しに行った奴だって?」

「自覚あるじゃん」

確かに、俺も存在を疑ってたけど。いまだに部活として認められているのが、不思議なくらいだけど。だが、しかし!

「お前らの部活だって活動してるか怪しいだろ」

「それは・・・・言わない約束だぜ」

「あってたまるか、そんな約束」

「俺んとこはちゃんと動いてるぞ」

そうだった。こいつ文芸部だった。

「活動に中身がない」

「なんだと、この野郎。少なくとも俺らが存在してることは周知されているから」

「鉄道研究会も存在は確定してると思うよ」

ぐぬぬ。かくなる上は。

「それは・・・・言わない約束だろ?」

「「そんな約束はないぞ」」

・・・・・なんだと?




side  茅菜紗良

 前回の部活が先週となった今日この頃。私、茅菜紗良は割と悩んでいた。

「流留ちゃーん。いつなら空いてるのー」

「は、はい。ご、ごめんなさい。忙しくて・・・」

そう。流留ちゃんとの予定がなかなか合わないのだ。どれだけかと言うと、この数日間、休日はおろか放課後ですら一度も予定が合わないぐらいだ。それで、今はちゃんと予定を立てている所だ。本当なら予定を立てるようなミッションでもないんだけど、仕方ないよね。

「水曜は?」

「あ、だ、大丈夫です」

「よしっじゃあ、決まりだねっ。あー、つーかーれーたー。みんなー、ラーメン食べて帰ろー?およ?」

あれ、皆帰っちゃったのかな?まあいいか。

 そんな事を思ってるうちに、チャイムが鳴った。下校の時間だ。帰り支度をして校舎を出る。今まで喋っていた反動か、流留ちゃんの口は重い。ちょっと寂しいな。

「じゃ、ウチはこっちだから。バイバーイ」

「は、はい。さようなら」




side  ??????

 あーあ、紗良ちゃん。あーし達を苦手な友達だからって、あそこまで気を遣って分けることないのに。あーしたちにはもっと、雑じゃん。特にあーしは、親友じゃ無かったのかな。なんだろうな、この気持ちは。分かんないや。

でも。いや、だから、だからね。

「ねぇ。先、帰っちゃわない?」

つい魔が刺しちゃった。

「そうだね。・・・帰りますか!」

「しんせ〜。あ〜、めっちゃお腹せいた〜」

「ラーメン食って帰ろ」

「いいねー」

こんな会話を聞いて、薄情だと感じつつも、言い出しちゃったのはあーしなんだと考えると、心に何か引っ掛かったような気がした。それが単純な痛みなのかな?親友を裏切ったことに思う事があったのかな?まだ、あーしは分からなかった。でも、確実に聞いた。あーしたちがおかしくなる音を。

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