第23話 大会1日目:団体戦決勝③

「ベルナール選手、ベークマン選手に思いっきり殴られ吹っ飛ばされた!大丈夫か!?」


吐血し意識が朦朧とする。剣が半分ほど折れてしまい剣を使うことを諦めたのか、拳を土で覆って強化した上で、私の構えが緩んでいるうちにみぞおちに1発くらわせてきた。咄嗟に刀身の水を操作・固体化してガードしたから致命傷は逃れたが、相変わらずデタラメなパワーだ。フラつきながら何とか立ち上がる。


「おらあ!!」


ベークマンが今度は私を地面に叩きつけようと拳を振り下ろす。ただえさえ運動は苦手だというのに、この怪我で余計動きは鈍っていて避けられそうにない。


「カナ!」

バサッ!!

ドゴォォォン!!


「ロバン選手、風魔法で加速してギリギリのところでベルナール選手を助けた!!」


私はジークに抱えられている。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。だが生憎今の私にキャッキャしてる余裕はない。


ふとベークマンの方を見ると、地面が拳を中心に直径1mの円くらいえぐれていた。殺意がすごい。あいつだけ試合じゃなくて殺し合いをしているんじゃないか?


「助かったよ、ジーク」


いや本当に。


「間に合って良かった!それより怪我大丈夫!?早く治すね!」

「まあなんとかね、ありがとう」


私がジークに怪我を治してもらっている間、再びアランがベークマンを相手取る。今度はベークマンもかなり疲弊しているので、アランが大分押している。


「ジーク、アランの加勢してあげて」

「え、でもカナの怪我が…」

「大して出血も無いし、後で治して貰えれば大丈夫。ある程度回復したし。」


内出血くらいはしていそうだが。


「そうかもしれないけど…」

「それに、今のうちにベークマンを倒しておかないと厄介かも。頼める?」

「……うんわかった!」


そう言うとジークが勢いよく飛び出す。


満身創痍のベークマン1人に対して、剣術の達人と入試首席が相手だ。下手に手を出すより見守っていた方がいいだろう。


――――――――――――



バシッッ!!

「カッッ!!チク…ショウ…」

バタッ…


「ベークマン選手ダウン!これでH組は全員失格!よって勝者、そして1年生団体戦優勝はA組だ!!!」


ワァァァァァーーーーー!!!!!!!!!


会場はいつにない盛り上がりだ。


「A組バンザイ!!」

「やったなジーク!」

「アラン凄かったぞ!!」

「あのベークマンが負けるなんて…」

「ベルナールさん、かっこいい…」

「カナ!ジークさん!アランさん!本当におめでとう!!」


また方々から声が聞こえてくる。


「カナ!」


ジークとアランが駆け寄ってくる。


「2人とも、ナイスファイト。」


「それはこっちのセリフだぜ!全く無茶しやがる」


「ほんとだよ!早く怪我治さないと!」


ジークがまた治癒の風で治してくれる。


「ハハ、でもお互い様でしょそれは。ありがとうジーク」


「何はともあれ俺たちの勝利だ!」


「「うん!」」



「…………おい、カナ・ベルナール」

「……!どうしたの?」


ベークマンが地面に倒れたまま突然話しかけてきた。もう意識が戻ったらしい。


「お前、あの剣どうやって折った」


「……ああ、あれは元々アランとの戦いで劣化してた箇所を狙って、エネルギーを増幅させた上で、さらに一点集中させてぶつけたんだよ」


≪干渉・増≫ は ≪干渉・消≫の逆で、刀身の表面に伝わったエネルギーに順位相のエネルギーを上乗せして返す≪技≫だ。


そして≪鋭刃≫は文字通り水惑刀の刃を極限まで薄くし鋭くする≪技≫だ。こうすることで≪干渉・増≫で返したエネルギーを一点集中させてぶつけることができる。


「……はっ、何言ってんのか分かんねえわ」


そっちが聞いたんだろう。


「……てめえは最初っから勝ちを確信してたのか。」


「まさか。もし君がもっと冷静で、私と対峙してるときにジークやアランにも魔法で攻撃し続けてたら、勝ち目は無かったよ。」


ベークマンは能力は化け物級だが、いかんせん頭に血がのぼりやすい。私に挑発されたことでカッとなり、周りに気を配れていなかった。それがこいつの敗因だ。


「……嘘だな。てめえは俺にぶん殴られた後ですらどこか余裕があった……まだまだ手はあったんだろ?」


「………」


「はっ!だんまりときたか、まあいいさ!とにかく、次戦うときはこれじゃ済まねえぞ……!」


そう言うとベークマンは保健委員の人達に担架で運ばれていった。


「……私達も戻ろうか」


「そうだね!」

「だな」


「というかカナも保健室行かないとね!」


「え」


「え、じゃないよ!治癒はしたけどちゃんと怪我の様子診てもらわないと!」


「はい……」

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