第19話 大会1日目:団体戦準決勝①

「1年生団体戦準決勝は1時間昼休憩を取った後に開始します!」


予選が無事終わり、代表用の席で固まって食事をとる。


「次の対B組戦、どうしようか。」


「やっぱりどうにかしなきゃいけないのは王子の従者さんだよね!」


「ああ、さっきみたいに俺が突進しても倒せそうにねえぞ…」


「いや、いいんじゃないかな、予選と同じ感じで」


「え?いやいや無理だろ」


「あれやろうよ、アラン。そしたら一撃で倒すとはいかなくても、それなりに善戦はできるんじゃない?」


「あれ?あれか…いやどうだろうな…」


「うんうんいいね!アランならできるよ!」


「ジークまで……うし、そこまで言うならやってやる!」


「その意気だ」


「良かった!僕達はどうする?」


「私たちは様子見ながらうまく対応しよう。もしやって欲しいことがあれば指示するよ。サインは覚えてるよね?」


「うん大丈夫、了解!」


――――――


「少しいいですか」


作戦会議から少し時間が経ったあと、突然声をかけられる。声の方を見るとちょうど話題にしていた第2王子の従者、ランドルトだった。


「はい、なんでしょうか?」


「いえ、大した話はないのですが、試合前に少し挨拶をと」


「なるほどそういう事でしたか。こちらまで出向いてくださりありがとうございます」


「私に敬語を使う必要はありませんよ。私はラクア殿下の従者に過ぎませんから」


「それを言うなら私は平民ですし、双方敬語を使わないならともかく、私だけという訳には参りません」――――


という具合で貴族社会特有の(私は平民だが)結論を言わないのらりくらりとした会話が続く。


「なあ、これ俺らも何か言った方がいいのか?」ボソッ


「いやでも何話せばいいかわかんないし、カナに任せておけばいいんじゃないかな…」ボソッ


「……おっと、長く話しすぎてしまいましたね。それでは失礼します。後ほどの試合でまたお会いしましょう。」


「はい、こちらこそ」


ランドルトは自分の席に戻っていった。


「……結局あいつ何が言いたかったんだ?カナさん」


「わからん。」


「分からないのに話してたの!?」


「うん。いや言ってることは分かったけど、結局大した内容じゃなかったし、このタイミングで話しかける意図はよく分からなかったな。多分相手を品定めしたいか、何か情報を引き出そうとしたか、単なる気まぐれか……ってところだろうけど」


「へえ……貴族って難しいね……」


「うん……ジークも貴族だけどね……」


――――――――――


「それでは昼休憩も終わり、準決勝を開始致します!準決勝第1試合はE組対H組!予選で圧倒的な活躍を見せたベークマン選手に注目です!」


次はあの筋肉隆々ベークマンの登場だ。


「まあ何となく結果は見えてるけどな…」


「そんなこと言ったらE組が可哀想じゃない?さっきのC組よりは粘って、ベークマンの力量をもう少し見させてくれるかもしれない。」


「それも十分可哀想だよ、カナ…」


「それでは、始め!」


予選同様ベークマンがE組に走り出す。


「アースウォール!!」


「E組が不思議な陣形を取っている!なにかの作戦か??」


予選のC組と違い、E組は3人で固まって1人が土魔法で防御している。


「隠れちまったな。ならこれならどうだ!」


ベークマンが放った土の槍、というより尖った山のような攻撃が土の壁を見事に破壊する。


「フレイムスフィア!」

「ウインドストーム!」


だが、その間魔法を準備していたらしいE組の2人が、予選と比べかなり強い攻撃を間髪入れずにお見舞いする。さらに風と火の魔法がうまく融合し、巨大な一撃となってベークマンを襲う。


「チッ!!」


「ベークマン選手に魔法が直撃!万事休すか!?」


ベークマンは避けきれずにもろにその一撃を食らってしまった。


「よし、ベークマンを倒したぞ!」


「アースランス!」

「ファイアボール!」


「うわっ!」


「これは!ベークマン選手ダウンか!?E組3人とH組2人で魔法の打ち合いだ!」


しかし本当にベークマンがあれだけで……


「あーびっくりした」


「なっベークマン!?」


倒れてくれれば良かったんだが。ダウンどころか大して怪我した様子もない。


「ベークマン選手、ダウンしていなかった!」


「へっ、あれくらいで倒れてたまるかっての!……しかしあれだな、お前らにはお礼しねえとな!!」


ベークマンが怒ってるのか興奮しているのか分からないが、剣をその場で思いっきり振り下ろす。するとそれに併せて巨大な土の波が起こる。


「うわっ!」

「なっ!!」

「ぎゃあああ!!」


「E組1人戦闘不能、2人場外で全員失格!勝者H組!」


結局あっという間に決着が着いてしまった。


「うわあ……」


あまりの結果に、あのジークが若干引いている始末だ。


「なんつーか……あっけないな……」


「だね、結局実力も分かったようなわかんないようなだし……」


「と、とりあえず次勝たねえとな!」


「うん」

「そうだね!」


――――――――――――


「次は準決勝第2試合!A組対B組です!」

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