15 「ザ・ワールド」


二人は連絡先を交換した。



「それにしても、聖(ひじり)って名字珍しいですよね」



帝翔が言う。


雷門の方が珍しいけどな。


珍しい名字ランキングでは聖にも明堂にも負けないけどな!



「ですね。でも、下の名前がマリアだし、結構いじられるから、自分の名字嫌いなんです」



確かに、聖マリアは嫌かもしれない。


阿部マリアとかよりは、名字が珍しいだけマシかもしれないが。



「俺と結婚したら明堂マリアになるから大丈夫ですよ」



時が止まる。


スタンド使いか? と後からツッコミたくなるくらいには、時が止まった。


誰も何も言わない。


表情も固まる。


こいつ...恋すると気持ち悪いな!



「とりあえず落ち着け」



時を動かす為に、俺が口を開いた。


帝翔は真っ赤になっている。



「帝翔、そろそろ帰りな。あんた酒弱いんだし。明日も仕事でしょ」



美智子さんが笑顔で言うが、目は笑ってない。


これ以上息子の失態を見たくなくて、強制的に帰そうとしている。



「帝翔さん、どこに住んでるんですか?」



マリアが帝翔の恥を和らげようと、気をつかう。


当たり前だが、結婚の話はスルーだ。



「武蔵小杉です」


「え! 私も一緒! どの辺ですか?」


「えっと...ここです」



帝翔はスマホの地図で、住んでいる場所を教える。


マリアは興奮して叫んだ。



「うそ! 私の家、向かいです! このマンション!」



えっ、そうなのか?


そんなに近いのか?


どちらの家にも俺は行ったことがない。


マリアは去年父親が亡くなるまでは、親と二人暮らしだったし、彼氏でもないのに家には行きづらい。


帝翔ともだいたいは都内で遊ぶ。


わざわざ俺が神奈川の方には行かない。


そんなに二人の家が近いとは。


気持ち悪い帝翔を見た後だ...マリアの家まで突撃するんじゃないかと心配になる。

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