7 「既読無視」

一度家に帰って着替えてから渋谷に向かった。


タクシーの中でスマホを見る。


帝翔が帰ってすぐに、俺はラインを送っていた。



『体調大丈夫か? なんの病気か言いたくないなら無理に聞かないけど、もし俺に出来ることがあるなら言ってくれよ』



その返事はなし。


既読は4時間前からついている。


帝翔は元々、既読スルーするタイプだが、このメッセージに対しても無視とは。


あんなにいつもスマホをいじってるくせに、ラインの返事は無視か、返しても一言。


スマホで一体何をしてるんだか。


後で電話しよう。


さすがの帝翔も、電話は無視しない。


待ち合わせ場所に着くと、マリアは既に待っていた。



「ごめん、待った?」


「ううん、私も今きたとこ」



マリアは笑顔を見せる。


今日は機嫌が良さそうだ。



「聞いて! 今日職場にイケメンが来たの」


「イケメン? 男なんて来るのか?」



マリアは女モノしか売ってない服屋の販売員だ。


彼女連れの客か、配達の人くらいしか男は寄らないだろう。



「駐車券の処理お願いしてきただけなんだけどね。すっごいイケメンだった。あの人に似てる、えーっと...やだ、名前ど忘れしちゃった。さっきまで覚えてたのに」


「芸能人?」


「ううん、同じ高校にいたの」


「それは知らん」



マリアとは同じ高校だったらしいが、その頃はまだ知り合っていない。


それに、俺が高3の頃にマリアは高1だ。


どのくらいイケメンかは知らないが、他学年の男子生徒なんて知るわけがない。

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